ハッピーバースデー！　１２月☆｜リアクション

ハッピーバースデー！　１２月☆

「先生、お誕生日おめでとうございますっ」

　１２月になり最初の日曜日。
　水上桜は、寝子島スポーツセンターの温水プールで泳いでいた。
　泳法はクロール。大きく腕を掻き、息継ぎをすると、相原まゆ先生の声が飛び込んで来た。
「桜ちゃん、いいペースよ！」
　ストップウォッチを持った相原まゆ先生が、桜の泳ぎについてプールサイドを歩いている。
　まゆ先生の特別レッスンだ。
　桜は、もともと所属していた水泳部だけでなく、家庭科同好会に加えて、生徒会副会長も掛け持ちするようになり、このところ時間のやりくりが大変になってきていた。水泳部の活動になかなか顔を出せない日も続き、そのことを先生に相談したところ、日曜日に特別にまゆ先生にご指導いただけることになったのである。
　先生も多忙だろうから毎度とはいかないが、貴重な機会だ。
　タイムを計ってもらったり泳ぐ時の姿勢を見てもらったりと、充実した時間を過ごすとすっかりお腹も減って来たので、ふたりは近所のファミレスに寄ることにした。

「えっ、先生のおごり？　ラッキー！」
　桜は目を輝かせ、ハンバーグステーキを注文した。
「桜ちゃん……遠慮なくいくわねー」
「練習で疲れたあとはやっぱりお肉が食べたくて……って、誕生日の先生におごってもらうなんて」
「いいのいいの。食べて食べて。あたしも同じのにしようっと！」
　まゆ先生もハンバーグステーキを注文し、待つ間、ふたりは先ほどの練習のことなど雑談に話を咲かせる。
　なんとなく気持ちがあったまってきたところで、桜は可愛らしくラッピングしたプレゼントを取り出した。
「先生、お誕生日おめでとうございますっ」
「え、なになに？　いいの？」
「もちろんです！　良かったら開けてみてください。先生の気に入るか、心配で」
　もじもじと上目遣いになる桜を見て、これは感想を言ってあげねばなるまいと、先生は包みを開けてみた。
「えーーーっ、すごい！　可愛い！！」
　桜からのプレゼントは、手作りのネックレスだった。桜瑪瑙のペンダントトップに、シルバーのチェーンを合わせてシンプルに仕上げたもので、売っているものと比べても遜色ない出来である。
「可愛らしいものはＮＧかと思って、大人っぽく見えるデザインのものに仕立ててみたんです。もしこれもＮＧならごめんなさいだけど……」
「ＮＧなんてそんなことない！　すごく嬉しいわ」
　まゆ先生は、さっそくネックレスを首にかけてみた。
「どう？」
「よかった！　とっても似合います！」

　それからふたりは、またおしゃべり。
「マタ工水泳部の彼氏とはどこまで進展した？」
「それなんですけど、正直に話すと……」
　などと、話の尽きないまゆと桜であった。

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