Ｊｕｎｏの花嫁｜リアクション

Ｊｕｎｏの花嫁

Happy wedding…？

【次はチェンジしてみよう】

　次に薔薇を背に撮影に挑もうとしていたのは、神野マキナと鴇波羽衣だ。
　今度は衣装を取り替えての、二度目の撮影である。
「せっかくだし、マキナさんもドレスを着ようよ！」
　そう羽衣が提案して、今度はマキナが花嫁衣装に身を包んでいる。
　精一杯エスコートする羽衣に手を引かれ、マキナが微笑む。
「こういう格好をすることがあんまりないから、新鮮だね」
「マキナさん、すっごく綺麗！」
　白いエンパイアラインのドレスが、マキナによく似合っていた。
　レースをふんだんに使ったマリアベールが、明るい色の髪によく映える。
「マリアベールって顔を隠さないから、マキナさんの表情がはっきり見えていいなぁ」
「視界がクリアで歩きやすいよ。鴇波さんの花婿も、凛々しい感じがしていいね」
「そうだといいんだけど……」
　マキナのようにスマートなエスコートができないと恐縮する羽衣の言葉を、マキナはそっと否定した。
「優しい気遣いに満ちていて、素敵だよ」

　二人は蔦薔薇の館の庭にある、大理石の像と薔薇を背景に、寄り添って立った。
「マキナさん、薔薇が似合う！　とってもロマンチック！」
「そうかな？」
「うん！」
　可愛らしい花婿さんと一緒の撮影は、楽しい体験だった。
（実際にぼくが結婚式でウェディングドレスを着る機会があるのかどうかなんてわからないけどね。うん、まあ、悪くないかな）
　将来がどうであろうと、今隣にいるのは、親しい友人だ。
　マキナは、羽衣のつるつるのほっぺに、ちゅっとキスをした。
「マ、マキナさん……！？」
　飛び上がる羽衣に、マキナは笑顔でささやいた。
「ごめんね、びっくりするかなと思って。花嫁からの親愛のキスだよ」

　衣装をかえて撮影するマキナと羽衣を見て、ゼシカが若菜に、自分たちも立場を交換してみようと誘った。
「えっ、本当に！？」
　慌ててドレスを選ぶ若菜は、嬉しそうだ。
　やはり、ウェディングドレスに憧れを抱いてしまうのが乙女心というものだろう。

　支度を終えて、今度は男装のゼシカに手を引かれて庭園に現れた若菜は、フレアラインのウェディングドレスをまとっていた。
　レースと薔薇をあしらった、ややピンクがかったオフホワイトのドレスだ。
「若菜さん、とてもお似合いですよ。優しい色合いで、若菜さんにぴったりですわ」
「そ、そうでしょうか……」
　そわそわと落ち着かない足取りの若菜を、ゼシカがエスコートして歩く。
　二度目の撮影はスムーズに進んだ。
　揺れるドレスの裾や、視界をかすめる繊細なレースに、若菜の胸がときめいた。
「やっぱり素敵だなぁ、ウェディングドレス」
　いつか自分も、こんなふうに結婚式があげられたら素敵だと、若菜は思った。
「私、将来は大好きなステンドグラスがある星ヶ丘教会で結婚式をあげたいなぁ……なんて、ね！」

　撮影を終えると、くったくのない笑顔で、若菜はゼシカにお礼を言った。
「今日は誘ってくれてありがとう、シスターゼシカ！」
　ゼシカも、静かに首を振る。
「私のほうこそ、信仰に生涯を捧げた身で花嫁衣裳を着る日が来るとは思いませんでしたが、良い記念になりましたわ。ありがとうございます」
「とっても綺麗で、楽しかった！」
「そうですね、私もときめいてしまいました」