Ｊｕｎｏの花嫁｜リアクション

Ｊｕｎｏの花嫁

【撮影を終えて】

「いやぁ、これは間違いなくいい記事になりますね！」
　撮影が終わると、Nyago Walkerの編集スタッフはゼシカ・ホーエンハイムに礼を述べた。
「蔦薔薇の館まで提供してくださって、ありがとうございます。モデルさんたちも、皆さん本当に輝いていて、有意義な撮影でしたよ」
「記事を楽しみにしておりますわ」
「先ほど、教会でスコーンをいただいたんですが、あれもシスターのお手製だとか。もしかして、それもでしょうか？」
　スタッフが指さしたのは、ゼシカが持っているお菓子の包みだ。
「ええ。こちらは今日の来賓の方々に配ろうと思いまして」
「シスターの気遣いが胸に染みますねえ」

　スタッフが撤収作業に入ると、ゼシカは教会を去る人たちに、手作りのお菓子と摘みたての薔薇のブーケをそれぞれ配った。
「えっ、いただいてしまっていいんですか！？」
「ええ。今後もどうかお気軽にお越しくださいませね」
　お待ちしてますというゼシカに、花嫁役をつとめた女性たちは笑顔でプレゼントを受け取った。
　思わぬ贈り物のおかげもあって、最後まで人々の顔から笑顔の消えることはなかった。

　ゼシカがお菓子やブーケを配る中、庭園のほうからはヴァイオリンの音色が響いている。
　皆を見送るように奏でられているのは、結城日和の手によるものだ。
　澄んだ音色が、薔薇をいっそう神秘的なものであるかのように引き立てていた。
　日和がヴァイオリンを奏でる、庭園の内部では、八十八旗信彦は目を閉じて清らかな音色に聴き入っていた。
　音楽のおかげで、スタッフも疲労をさほど感じることなく、機材の片づけや清掃を進めることができているようだ。

　立ち去る人々を見送りながら、八神修は一日を振り返っていた。
　大勢の人たちの、願いや夢が、手元のメモに残されている。
　なにより、皆の喜びに満ちた表情は印象的で、結婚という言葉の持つ意味について思いをはせてしまうのだった。
（結ばれて、共に歩むというのは、やはり幸せなことだよな）
　幸せを維持することには困難がともなうのは間違いないが、――幸せは尊いものだ。
「よし。俺も部室に戻って記事をまとめるか」
　今から修は、『寝子高新聞ＪＢ特集号』を作るのだ。
　ＪＢは、もちろんジューンブライド。モデルや教会には配布して、学校の掲示板にも掲示する。
　おそらくいい記事になることだろう。修には自信があった。

　本日、忙しくメイクルームにつめていた旅鴉月詠も、荷物をまとめてアトリエに戻るところだ。
　自分で撮った写真も現像したいし、スタッフから提供してもらった写真をサンプルに、絵を描くつもりでいる。
　既に構図は決まっていた。

　――後日、発売された『Nyago Walker』には、『寝子島の未来の花嫁、花婿たち。ジューンブライド特集』の文字が躍り、紙面をめくると、そこには輝かしい笑顔の数々が美しい背景や衣装とともに紹介されていた。
　未来の花嫁と花婿たちは、雑誌を手にした人々に、夢と幸せを届けたのである。

　教会やシスターの元にも感謝の手紙が届き、それとは別に、月詠からは絵が贈られた。
　寄贈された絵には、教会をバックに、花嫁達がブーケを投げる様子がいきいきと描かれていた。

END

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あとがき

担当マスター：瀬野とうこ／深城和哉
ファンレターはマスターページから！

皆様こんにちは。
今回、リアクションの代筆をさせていただきました、瀬野と申します。
深城マスターの執筆を心待ちにしていた皆様がた、私ですみません。

ジューンブライド。憧れますよね。
今回、皆様のおかげで、私はドレスの形や名称にやたらと詳しくなりました。
いろんなカットがあるんですね。ベールの形も様々で、大変勉強になりました。

皆様、結婚式へのひたむきな思いをぶつけてくださって、ありがとうございます。
人の数だけ、夢も希望も憧れもあって、それがどれもキラキラしていて、
熱気にくらくらしてしまいそうでした。
いやあ、青春っていいですね！

それではこのたびのご参加、まことにありがとうございました。
これにて失礼いたします。

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