Ｊｕｎｏの花嫁｜リアクション

Ｊｕｎｏの花嫁

【仲良くケーキに入刀を】

「鴇波さんは、花のモチーフがよく似合うね」
　柔らかく微笑みながらそう声をかけてくれた神野マキナは、まるで王子様のようだった。
「マキナさんの正装も、とっても素敵……」
「そう？　ありがと」
　鴇波羽衣は、ドレスやベールにピンクの花をたくさんあしらったプリンセスラインのドレスに身を包んでいた。
　色は白。憧れのウェディングドレスだ。
「可憐な花が、鴇波さんの愛らしさを引き立てるようだよ」
　羽衣のドレスに合うような色のショートフロックコートを、マキナは選んでいた。
（マキナさん、なんだか本当にかっこいいなぁ……！）
　もうすぐ、撮影の順番が回ってくる。
　衣装を借りてメイクをほどこしてもらって、ムード満点の教会に立っていると、自然と胸が高鳴った。
「さあ、次はぼくたちの番だ」
　マキナの差し出す手をとって、羽衣は教会のステンドグラス前へ歩いていった。
（うぅ、緊張するよ～）
　慣れないドレスの裾を踏んでしまったらどうしよう……と気を回す羽衣を、マキナはしっかりとエスコートした。
「ふぅん、けっこうまぶしいんだね」
　指定の場所に立つと、スタッフが持つライトに照らされた。
「……モデルみたい。あたし、ちゃんと笑えるかなぁ」
　カメラを前にしてこわばる羽衣の背中を、マキナがなでた。
「大丈夫、自信を持って。誰よりも素敵な花嫁さんだよ」
　励ましの言葉がくすぐったくて、羽衣は自然と笑顔になった。
「今の笑顔、いいですね。撮りまーす！」
　スタッフの指示に従って、いくつかポーズをとりながら撮影は進んでいった。
（マキナさん、かっこいいなぁ……）
　パートナーが彼女でよかったと、羽衣はしみじみと感じていた。
　カメラを前にしても堂々としていられるのは、マキナが支えていてくれるからだ。
（もしマキナさんが男の人だったら、好きになってもおかしくな……ううん！）
「うん？　どうしたの、鴇波さん」
「なんでもないよ～」
　いくら格好良くても、マキナは女性だ。
　どうやら自分で思っている以上に舞い上がっているようで、羽衣は赤くなった。
（いつか迎える本番では、あたしももっとしっかりしなくちゃね）
　今はまだ、そんな日が来るとは想像できないけれど、いつか本物のウェディングドレスに袖を通すことができたら素敵だと思う。

「せっかくだから、ケーキカットもしてみない？」
　教会の外にウェディングケーキが用意されてると聞き、マキナが興味を示した。
「わぁ、賛成！」
「よし、じゃあ移動だ」
「わっ」
　羽衣の膝をすくい、マキナがよいしょと抱き上げた。
「ほら、つかまって」
（わあぁ、お姫様抱っこだ……！）
　目を丸くする羽衣を抱えたまま、マキナは教会の外に出た。
「かわいいケーキだねぇ！」
　デコレーションされた四角いケーキに入刀をして、そこでも何枚か写真を撮った。
「はい、あーん」
　マキナが差し出すケーキを頬ばって、羽衣もおかえしに「あーん」と、ケーキを食べさせた。
「おいしいねぇ」
「うん、甘酸っぱくてなかなかいいね」
　笑顔でケーキをつつく二人を遠目に見て、望月が小さくガッツポーズをとっていた。