またコン、ＤＯ！｜リアクション

またコン、ＤＯ！

◆始まる前の始まり

　時間は午前八時。
　またコン参加者たちが集まり出すにはいささか早すぎるこの時間に、寝子ヶ浜交番のお向かい299COFFEEには、三人の人影があった。
　ひとりは店長の森崎。そして残るふたりはここでバイトをしている東雲人里と御剣刀である。
「え、えっと、壮二さん、テーブルのお花はこんな感じでいいですか？」
　各テーブルの中央に薔薇の花を二・三輪添えて、人里は店長の森崎をそっと見た。
「それは――えっと、もう少し華やかでもいいかな」
「は、はい」
「店長、メニューはこんな感じでいいですか？」
　恋人たちのためのあるいはこれからそうなる人々のために、刀は限定メニューとカップを用意していく。
「ああ、それで構わないよ。ありがとう」
　ふたりの協力の甲斐あって、299COFFEE店内はすこしばかり賑やかな雰囲気を醸し出している。
　森崎は嬉しそうに頷いてから、二人に向き直った。
「ふたりとも早くからすまないね」
「そ……」
「いえ！」
　刀の返事を遮り、思いのほか大きな声で返事をしてしまった。人里は慌てて顔を背ける。
「……あ、の、私、気にしないでください」
　しかしそれからも、人里は落ち着かない様子でチラチラと森崎の姿を視線で追っていた。
「壮二さんは合コンに参加しないんでしょうか？」
　結局、その一言が言えないまま、人里はまたコンを迎えることになる。

　それからあっという間に時間が経って、十時過ぎになったころ。
　キャットロードには威勢のいい、言い方を変えれば、暑苦しい声が響き渡っていた。
「今日は街コンっつう街あげての一大イベントがある！」
　この透き通った声の主は矢萩秋。
　若いながらも和菓子屋萩屋の女主人である。
「新規のお客様がたくさんいらっしゃる事が予想されるからいつも以上に愛想良くしろよ！」
　その主人の言葉に呼応するように「押っ忍っ!!」と、従業員たちが返事をした。
「お前ら、唯でさえ顔怖ェ奴らが多いんだからな！」
　彼女の言葉通り、従業員一同、なかなか個性的な面々だった。
「んじゃあ、『萩屋』開店だァ！」
「押っ忍！　姐さんっ！」
　誠心誠意を込めた雄叫びはキャットロード中に響き渡ったという。

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