ひねもすのたり、雲の切れ間に｜リアクション

ひねもすのたり、雲の切れ間に

「『ピーチボーイ＝ザ＝ハードコア』
昔々あるところにおじいさんとおばあさんが仲良く暮らしておりました。
いつものようにおじいさんは山へシヴァ狩りに、おばあさんは川へ宣託をしにゆきました。
『それじゃあばあさん、行ってくるぞい』
『御武運を。かならず生きて帰って来てくださいね』
ふたりは世の守護者たる神々に仇為す者たち、アスラの血族の者なのでした。
おばあさんの宣託を聞きに川辺へ集まった聴衆たちは、おばあさんが
姿を現すと、大喚声をあげておばあさんを迎え入れます。
『大婆様ァーッ！！』
『今年の作物の出来はどうなりますかいのう？』
『うちの孫の具合が悪いんです！』
『大婆様、御慈悲を！』
『ワシにお声掛けくだされェ』
『大婆様っ』
『大婆様っ』
そんな具合だったので、おばあさんの宣託どころではありません。
おばあさんは目をかっと見開いて叫びました。
『しずまれいッ』
聴衆たちは水を打ったように静まり返ります。
一同を見回したおばあさんは遂に口を開きました。
『其の者、薄紅色の揺り籠に乗りたる者。川上より出でし清らなる流れによりて人の世に降り来たらん。彼、人の世のよろず障りを滅ぼし去り、大地に繁栄齎さん』
おばあさんはそれきり口を閉ざしてしまいました。
やがてその日の宣託がそれきりだと分かると、聴衆たちは帰っていきます。
その中のひとりがおばあさんのもとへ近付くと、お供え物があると言いました。
それはたいそう大きな桃の実でした。
『うちの前の川でわたしが洗濯をしていると、どんぶらこっこどんぶらこっこと流れてきたんですじゃ。たいへん珍しいので大婆様にと思いましてな』
そう言っておばあさんに桃を渡したのは、きび団子を作らせたら村一番の腕前を持つおばあさんでした――」
　
　物語はピーチボーイがおじいさんとおばあさんから不倶戴天の敵だと教わっていたシヴァから、実はおじいさんとおばあさん達こそが世界を破滅へ導く鬼だったのだと知らされるという場面で終わった。
　舞華の語り口はなかなかに見事なものだった。役ごとに口調や声音を変えるのは勿論、淡々と、しかし熱意のこもったナレーションは、さすが声優科に通っているだけの事はある。
「さて今回の『きまぐれ寝子ラジ』はここでお別れです。『ピーチボーイ＝ザ＝ハードコア』の感想、ご意見などありましたら是非ご連絡ください。それではこの辺で。お相手はこのあたし、micaでしたー！　バイバイ」