狂気の笑顔が悪意をばらまく｜リアクション

狂気の笑顔が悪意をばらまく

　二本足の白猫となった夢宮瑠奈は、えー、とのんびりした声で驚いた。
　――ここって猫はいるけど、寝子島ではないよねぇ。
　服を着た猫がいた。猫語を使って周囲に捲くし立てる。
「ぶっとばすにゃ！　オレは弱くないにゃ！　勇敢な猫なのにゃ！」
　その近くには青黒い蝶が飛んでいた。
　別のところを見ると二本足で走る猫がいた。
「こんな危ないところにはいられないにゃ！　急いで逃げるにゃ！」
　――あんな猫もいるんだねぇ。そういう自分も二本足なんだけどねぇ。
　瑠奈が歩いていくと赤茶猫のフォルカ・ヴィクスンが襲い掛かってきた。
「あたしの自慢の尻尾をよくも！」
「あのぉ、それってあたしに関係ないのでは？」
「八つ当たりなんだから、いいんだよ！」
「えー」
　のんびり口調ではあるが、存外に動きは悪くない。アイドルグループ『CitrusCat's』の一員として鍛えられていた。
　躱したついでに軽く手を振る。ガリッという感触が伝わった。フォルカは苦痛の顔で倒れ込んだ。
「何してくれてんのよ！」
　ゴロゴロと転がるようにして逃げていった。
「こんなあたしでも爪が出るんだねぇ」
　引き続き、辺りを見て回る。
「あれって地面から槍が出ているよねぇ」
　地面を黒く染める影は瑠奈のところまで伸びてきた。
「そこから離れて！」
　ティオレ・ユリウェイスの声に身体が反応した。横に一歩、動いた直後に槍が突き出した。
「危なかったかも」
「怪我はなかったですにゃ？」
　近くにいたミーツェ・Ｍ・フェリスが駆け寄る。瑠奈は笑うような表情で、平気だよ、と明るい声で返した。
「あんなのもいるんだねぇ。あたしは戦力になれないと思うけど、どうかなぁ」
　瑠奈はいきなり歌い出す。猫の状態でウインクしてろっこんを発動させた。
　途端に槍の精度が落ちた。『風のいたずら』で吹く風には多分に砂が混じり、目くらましの役目を果たした。
　瑠奈の参戦で戦局は大きく動こうとしていた。