DOG110、寝子島に！｜リアクション

DOG110、寝子島に！

　――これってデートだよね？
　トクントクンと高鳴る胸を、最上るるかはそっと押さえた。
　隣りに立つ、同じ同好会の篠崎響也をちらりと横目で見て、頬を桜色に染める。
　気になっている響也を思い切って遊びに誘ってみたら、なんと、いいよ、と色よい返事を貰えたのだ。
　アラウンドエイティを連れだって歩く姿は微笑ましい高校生カップルのようである。
　――るるかの恋、進展のヨ・カ・ン。よし決めた、今日は女の子ぶりっこでべたべた甘えちゃお。
　ドッキドキの片思い炸裂中の彼女……だけど響也のほうはというと、
　――まぁ今日は暇だし、たまにゲーセンもいいかな。久々に音ゲーやりたいし。
　見て、この温度差！　極圏と赤道ぐらい離れてるよ！
　そんな温度差をものともせず、るるかは彼の腕に手を回し、ゲーセンの中を引っぱり回す。
「あ、響也。音ゲーの新しいの出てるよ」
　これは音ゲーの中でも人気のあるKONYAMIの音ゲーシリーズだ。
　流れてくる音楽に合わせ、９つのボタンをテンポよく叩いて得点を競うものである。
「ねぇねぇ対戦しようよっ」
「へぇ。これ、前にやってた機種の新作だな……いいぞ、対戦してみるか」
「リズム感には自信あるからね、負けないよー」
　ゲームをスタートさせて、曲選択画面に。
「しばらく離れてる間に新しい曲が増えたな……」
「あ、この曲がいい。フリスビーローテーション！」
「ああ、DOGの曲だっけ？　好きなのか？」
「うん、あんあんちゃんのファンなんだよね、可愛いいんだよぉ」
　そして曲が始まった。
　画面手前にあるラインに向かって、上からマークが降りてくる。それに合わせ、タイミングよくボタンを叩くのだ。タイミングが合ってればどんどん点数が増えていく。
　るるかは頑張ってぺしぺしボタンを叩いた。
「よーし、高得点目指すぞ！」
　と意気込む横で、
「……難度低めの曲だな」
　とポツリと呟き、響也は素早く腕を閃かせ、的確にボタンを叩いていった。
　画面に「GREAT！」の文字がたくさん出ている。つまりすごいってことだ。
　ノーミスのまま曲が終わり、高得点を記録。店内ランキング、第４位にランクイン。
「……１位はKURってやつか。久しぶりだったから、まぁこんなもんかな」
「うそぉ！　めちゃくちゃすごいよ、響也！」
「そうか？　中学の時にやり込んだから、ま、これぐらいはな」
「ふぅん、そうなんだぁ……♪」
　意外な一面を知ることが出来て、るるかは嬉しそうだ。
「ねぇねぇ次はあれやろうよ」
　続いて、るるかがぐいぐい引っぱっていったのはクレーンゲームのコーナー。
「見て、あのぬいぐるみかわいいー」
　ガラスケースの中に、愛くるしい猫のぬいぐるみが山盛りに入っている。
「ね～とって～！　一生のお願いっ！」
「構わないが……けど、こういうのは自分でとるから面白いんじゃないか？　俺がとっても……」
「ううん、響也にとってもらうのがいいの！」
　ぐっと力を込めて言うと、響也は目をしばたかせた。
「わ、わかった……」
　とは言え、クレーンゲームは得意というわけでもない。まぁ下手でもないんだけど。
　響也は慎重にぬいぐるみの重心を見定め、クレーンのアームを操作する。どこを掴むか、どこに引っ掻けるかがクレーンゲームのコツだ。これを上手く見定めないと、お目当てのものは手に入らない。
「頑張って、響也！　ファイト！」
　るるかの応援を受けて、慎重に慎重にアームを動かす。
　アームが猫の喉元にかかり、持ち上がる……かと思ったら、するりと抜けてしまった。
「も、もう一回だ」
　再びチャレンジするも、狙いが甘いのかなかなか上手くかからず、なかなかとれない。
　何度も失敗して、1000円ほど投入したところで、るるかは目を閉じ祈った。
　――今度こそ取れますように！
　彼女の想いが天に届いたのかどうかわからないけど、今度は上手くキャッチ出来た。
　そのまま縦穴に落とすと、ころんころんとぬいぐるみが出てきた。
「やったぁ！　とれたとれた！　ありがとう、響也！　この子、大切にするね！」
「……ん。どういたしまして」
　ただ、とれたにはとれたけど微妙だった。大分、手間取りすぎたので彼的には残念だ。
「……また今度、クレーンゲームの練習に来ようかな」
　ポツリと漏らしたその一言に、るるかはこう言った。
「その時は……あたしも誘ってくれると嬉しいな」
「え？　ああ、その時は最上にも声かけるよ」
「ありがと、響也」
　笑顔のるるかは、こっそり後ろ手でガッツポーズを決めた。
　次回のデートの約束、ゲットである。

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DOG110、寝子島に！

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