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『HALO ~氷解無垢~』
【桜色のにゃあ】『HALO ~氷解無垢~』
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【てんしのわっか】
閉じたカーテンの隙間からぽかぽかとした陽光が差しこむ、穏やかな放課後の図書室。
利用客はおらず、図書準備室に綾花は、彼とふたりきり。
といって綾花の胸を高鳴らせるのは、今日ばかりは
早川 珪
へのどきどきではありません。
ひそやかでぴりりとした静寂が満ちる中、ぱらり。ぱらり。ページを繰る音と、彼の息づかい。それに綾花のうるさいばかりの鼓動だけが響きます。
珪が一心に読みふけっているのは、もちろんあの本です。
その美しい装丁を、綾花も開きました。彼に手渡すまで一度と言わず二度、三度と読みました。繊細な文字の連なりを通じて、もっと深く理解したいと願いました。
綴られているのは単なるセンテンスではなく、ある人の人生です。登場人物はまったく架空の存在ではないでしょう。筆致は拙くも生々しく伝わるリアリティは、ほかでもない、彼の人生ともまたリンクしているから。
押し寄せる感情の奔流にさらされて、綾花の瞳からは幾度となく涙がこぼれました。
その本のページを今、珪はぱらり、また一枚ぱらり、と読み進めていきます。足を組んでリラックスした姿勢で、けれどどこか張りつめて見えながら、没入しています。
それほど長い物語ではありません。市販の文庫本のように厚くもなく、綾花が数十分程度で読み終えたものを、彼はすでに一時間半ほどの時間をかけて読み進めています。綾花はその間、たまっている仕事をこなすでもなく、彼を眺めるでもなく、弾けてしまいそうな空気にさらされながら過ごしました。
ぱらり。ぱらり。深く息をついて、またぱらり。
それからまたたっぷりと時間をかけた後、やがて表紙を閉じた彼は、さらに十数分の間余韻をかみしめるようにまぶたを伏せました。
「……綾辻さんは、どう思った?」
ややあって口を開き、彼は尋ねます。読んでほしい。感想を聞かせてほしい。確かに彼はそう望んでいました。
「私は……」
重なり合います。物語の中の『彼』と、目の前の『彼』が。
敏感で多感な少年時代、許されない恋に焦がれ、そして拒絶された『彼』の衝撃と傷跡の深さは、いかばかりだったでしょう。
「私は、ただ……かなしくて……」
『彼』を想い、綾花の瞳からは再びとめどなく、涙がこぼれます。
珪は困ったように眉を下げ、口元に微笑みながら、綾花の頬を伝う雫を指で拭ってくれました。
「そう。綾辻さんはそう感じたんだね」
「……珪先生は? ちがったんですか?」
すん、と鼻を鳴らした綾花へ、あるいは遠くの誰かへ、珪は独白めいて告げました。
「この物語は、日向の目線で描かれているよね。そこが重要なんだ。誠は幼気で純朴な少年として描かれているけれど、それは単に『彼』が成長の途上にあったからだ。日向は物語半ばで誠と疎遠になってゆく。だから『彼女』は知らなかったんだ」
「なにを……ですか?」
「『彼』が幼いままではないことを。ずっと凍り付いたままではないだろうことを。僕はこう思う。『彼女』が苦難を経験し、それを乗り越え、過去を過去として受け入れたように、『彼』にとってもきっと、過去は過去なんだ。深く傷ついた心の悲しみを癒すことは難しいけれど、味方をしてくれるものもある。仲間ができて、時間が忘れさせてくれて……大切なものができていく。『彼』もきっとそうだったはずだよ」
珪は愛おしく、表紙をなぞります。少年時代に戻ったかのような、まるで無垢な瞳のままで。
「そうやってきっと、『彼』は乗りこえた。……僕は、そう思うよ」
ささやくような、さああ、さああと響く音。外はいつの間にか雨。日の光は雲に遮られ、静かに、清廉に。
「『彼』はきっと、ほんの少しばかり、気になっていただけだったんだ。『彼女』がなぜ『彼』のもとを離れたのか、知らなかったから。その理由を。嫌われたと思ったろう。軽蔑されたと感じただろう。『彼』は、打ち明けるつもりはなかったんだ。ずうっと心にしまっておくつもりだった。けれど雨に流されるように、つい、うっかりさ。こぼしてしまった。どうしようもなくしょぼくれた『彼女』を救いたかった。自分がそばにいるからと伝えたかった。そうして……間違えてしまった。拒絶された」
とりとめなく、珪は語ります。聞く者もあれど一時熱にうかされたように、まとまりなく、つれづれに。
物静かな『彼』の、迸りでした。
「けれど……違ったんだね。『彼女』はただ、『彼』のためを想っていた。だから離れた……『彼』が自分と同じ過ちをおかさぬよう……そのために、『彼女』自身も苦しんでいた。『彼』のためを、ただ想って……」
「……珪っ、先生!」
『彼』の氷を今、最後の一片まで溶かし尽くすように、綾花はあたたかく、やわらかく包み込んで。
いつしか雨音のみが、ふたりを満たしました。
さああ、さああと小粒な秋雨。雲がぼんやりと陰って、けれど白くまぶしく、光をはらみます。
並んで、帰り道。傘は一本。忘れちゃいました、というのが綾花の言い訳。
「前にも、こうして歩いたね。ほら、
あの時
も」
「はい。雨が降ってました」
「雲の切れ間から差しこむ薄明光線。虹も見たね。太陽にかかるハロが、七色に輝いてた」
「天使の輪、ですね」
「昔……ある人がね。言っていたよ。そう……ちょうど、誠にとっての日向みたいな人がいてね……」
ふと足を止め、珪は傘を下ろします。彼も、綾花もしっとりと濡れてしまいましたけれど、その冷たさとあたたかさを今、共感できることが、綾花には幸せでした。
「小さな僕の髪を丹念に、丹念に手入れしてくれるんだ。そうして光を当てると、頭に天使の輪っかが浮かぶんだって。それを眺めるのが、たまらなくしあわせなんだって」
いい思い出さ。そう言って彼は、雨にもからりとして、朗らかに微笑みました。
「さて、遅くなってしまったね。送るよ」
「え、いいんですか? 反対方向ですよ?」
「いいさ。気にしないで。このまま少し、歩きたい気分なんだ」
「……やった」
「これから少しずつ、寒い季節になってゆくね。猫鳴館は寒いだろう、大丈夫かい?」
「住めば都ですよ、珪先生。ああ見えて案外、なんとかなるんです。うちのにゃんこも湯たんぽがわりになってくれますし」
「それはとても、あったかそうだね」
他愛のないおしゃべりが弾んで、足取りも軽く、見慣れた道も明るく輝いて。
ふたり、どこまでも歩いていけたらいいのに。いつかは終わりがくるのでしょうか。
けれど少なくとも、道は伸びています。いいえ、もし途切れてしまっていたとしても、飛んでいけばいい。
「あ……綾辻さん、ほらあれ」
空を指差し笑う彼の隣で、ゆっくりと。少しずつ。
「天使の輪っか」
切れ間からのぞく、まん丸な輝きを背負って立つ彼は、まるで今まさに舞い降りてきたかのようにきらめいて見えました。
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あとがき
担当マスター:
墨谷幽
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墨谷幽です。
『HALO ~氷解無垢~』、リアクションをお届けいたします。
早川先生の過去をのぞき、現在の綾辻さんとつなぐというお話となりました。
大切なエピソードに墨谷をご指名いただけたこと、とても光栄でした。
綾辻さんにとって少しでも心に残るものがありましたら、幸いです。
今回はプライベートシナリオの申請、まことにありがとうございました。
お疲れさまでした!
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
プライベートシナリオSS(500)
グループ参加
なし
シナリオジャンル
日常
恋愛
NPC交流
定員
1人
参加キャラクター数
1人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2022年12月20日
参加申し込みの期限
2022年12月27日 11時00分
アクション投稿の期限
2022年12月27日 11時00分
参加キャラクター一覧
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