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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
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No Rain, No Rainbow
展望フロアまでのぼって、ゆっくり歩きながら窓の外を見る。雨粒の付いた窓ガラス越しに見る景色は視界不良のようにも見えるけれど、綾花は窓との距離を測りながら懸命に覗き込んでいる。
「景色が雨粒に映り込んだら……万華鏡のように見えないかな？」
よく思いつくなと思うくらい、綾花は雨の日を楽しんでいる。雨が気持ちを塞ぐ物だと意識して見えなかったものを、たくさん見せてくれる。
それは、曇天の中を差す一筋の光――。
「……あっ！」
晴れることを忘れた空でも、雲は途切れる。そこに青空はあるのだと知らせるように、切れ間から陽光が細くでもしっかりと海を照らす。
「薄明光線……」
数本の細い光の線が重なり、まるで天使が通る神々しい道のように煌めいている。海と息を呑むほどに青い空を繋ぐ、美しい様相は探している本――『HALO ～氷解無垢～』の表紙を見ているかのようだ。
見ることができれば幸先が良いとも呼ばれる薄明光線だけれど、綾花は捜し物とよく似た景色へ手を伸ばす。両手でカギ括弧を作るようにして景色を切り抜けば、まるで捜し物を手にしたかのようにも見えた。
（本が見つかる前触れなのかな）
珪の探し求める本が見つかったなら、雨の日でも顔を曇らさせずにすむだろうか。
謎の多い彼を、もっと知ることができるだろうか。
……今の、曖昧な関係を進めることもできるだろうか。
とにもかくにも、この本が見つかれば、の話だけれど。
（……見つけてみせます）
両手を下ろし、軽く握りしめる。それでも胸を迫り上がってくる熱い思いは収まらなくて、綾花は珪の手にそっと自分の手を絡めた。
空はだんだん晴れていき、光の筋は朧気になる。薄雲の向こうに太陽が透け始め、晴れるのかなと二人が思ったときだ。
「あれって……」
太陽を囲む白い光の輪は、じわじわと虹色を滲ませて薄く色づく。天気の下り坂のサインとも言われるが、それは雨具を持っている二人にとって、些細なことだった。
本の表紙になっているのは薄明光線だったけれど、タイトルとなっているのは『HALO』つまり天使の輪とも呼ばれるこの現象のことだ。
２つを見ることができるなんて、綾花は胸がいっぱいで涙を堪えることができなかった。
少し強く手が握り替えされ、隣を見上げる。珪は懐かしい物を見るように目を細めているけれど、憂いてはいなかった。
「……ありがとう」
この景色を見せてくれて、代わりに素直な涙まで流してくれて。
多分の意味を含めた感謝の言葉は、僅かに震えていた。涙こそみせないものの、珪の内でも何かが変わったのかもしれない。
「雨にも出かけてみるものだね、こんなに綺麗な景色を見られるだなんて」
一言に集約した想いは、特別語られることはなかった。だけど少しばかりスッキリした顔をしていたから、綾花も笑顔で見つめ返す。
「雨の日も、雨上がりも……楽しいことはまだいっぱいありますから。また出かけましょうね！」
今日を少しでも楽しんでもらえたなら。
彼の笑顔が曇らないように、できることをやってみたい――傍で守りたい。そう、強く思う。
「虹を見るならば雨が、雨が降れば虹が……か」
虹なんて見えなくてもいいから雨よ降るなと願い疲れた心は、虹の良さを忘れてしまっていた。
それを思い出させてくれた綾花は、雨を穏やかに過ごす方法を教えてくれる。
雨はいつかやむ。それでも、再び降る。
だけど次の雨に思い出すのは、あの過去とは限らない。珪は少しずつ晴れていく空を眺める間、綾花と繋いだ手を放さなかった。
「景色が雨粒に映り込んだら……万華鏡のように見えないかな？」
よく思いつくなと思うくらい、綾花は雨の日を楽しんでいる。雨が気持ちを塞ぐ物だと意識して見えなかったものを、たくさん見せてくれる。
それは、曇天の中を差す一筋の光――。
「……あっ！」
晴れることを忘れた空でも、雲は途切れる。そこに青空はあるのだと知らせるように、切れ間から陽光が細くでもしっかりと海を照らす。
「薄明光線……」
数本の細い光の線が重なり、まるで天使が通る神々しい道のように煌めいている。海と息を呑むほどに青い空を繋ぐ、美しい様相は探している本――『HALO ～氷解無垢～』の表紙を見ているかのようだ。
見ることができれば幸先が良いとも呼ばれる薄明光線だけれど、綾花は捜し物とよく似た景色へ手を伸ばす。両手でカギ括弧を作るようにして景色を切り抜けば、まるで捜し物を手にしたかのようにも見えた。
（本が見つかる前触れなのかな）
珪の探し求める本が見つかったなら、雨の日でも顔を曇らさせずにすむだろうか。
謎の多い彼を、もっと知ることができるだろうか。
……今の、曖昧な関係を進めることもできるだろうか。
とにもかくにも、この本が見つかれば、の話だけれど。
（……見つけてみせます）
両手を下ろし、軽く握りしめる。それでも胸を迫り上がってくる熱い思いは収まらなくて、綾花は珪の手にそっと自分の手を絡めた。
空はだんだん晴れていき、光の筋は朧気になる。薄雲の向こうに太陽が透け始め、晴れるのかなと二人が思ったときだ。
「あれって……」
太陽を囲む白い光の輪は、じわじわと虹色を滲ませて薄く色づく。天気の下り坂のサインとも言われるが、それは雨具を持っている二人にとって、些細なことだった。
本の表紙になっているのは薄明光線だったけれど、タイトルとなっているのは『HALO』つまり天使の輪とも呼ばれるこの現象のことだ。
２つを見ることができるなんて、綾花は胸がいっぱいで涙を堪えることができなかった。
少し強く手が握り替えされ、隣を見上げる。珪は懐かしい物を見るように目を細めているけれど、憂いてはいなかった。
「……ありがとう」
この景色を見せてくれて、代わりに素直な涙まで流してくれて。
多分の意味を含めた感謝の言葉は、僅かに震えていた。涙こそみせないものの、珪の内でも何かが変わったのかもしれない。
「雨にも出かけてみるものだね、こんなに綺麗な景色を見られるだなんて」
一言に集約した想いは、特別語られることはなかった。だけど少しばかりスッキリした顔をしていたから、綾花も笑顔で見つめ返す。
「雨の日も、雨上がりも……楽しいことはまだいっぱいありますから。また出かけましょうね！」
今日を少しでも楽しんでもらえたなら。
彼の笑顔が曇らないように、できることをやってみたい――傍で守りたい。そう、強く思う。
「虹を見るならば雨が、雨が降れば虹が……か」
虹なんて見えなくてもいいから雨よ降るなと願い疲れた心は、虹の良さを忘れてしまっていた。
それを思い出させてくれた綾花は、雨を穏やかに過ごす方法を教えてくれる。
雨はいつかやむ。それでも、再び降る。
だけど次の雨に思い出すのは、あの過去とは限らない。珪は少しずつ晴れていく空を眺める間、綾花と繋いだ手を放さなかった。
あとがき
担当マスター：
浅野 悠希
ファンレターはマスターページから！
この度はリクエスト頂きありがとうございました、浅野です。
綾辻さんと早川先生は何度かシナリオを書かせて頂いておりますので、とても今後の進展が気になる１組でもあります。
生徒と先生でもあるし、早川先生にも綾辻さんにしか見せていない過去があるようで、とてもハラハラしながら作成しました。
大事な二人の空気は壊さず、シリアスにはなりすぎず……楽しい雨に少しずつ変わるように。
どうかお二人のペースで、大切に歩み進めて行って頂ければなと思います！
綾辻さんと早川先生は何度かシナリオを書かせて頂いておりますので、とても今後の進展が気になる１組でもあります。
生徒と先生でもあるし、早川先生にも綾辻さんにしか見せていない過去があるようで、とてもハラハラしながら作成しました。
大事な二人の空気は壊さず、シリアスにはなりすぎず……楽しい雨に少しずつ変わるように。
どうかお二人のペースで、大切に歩み進めて行って頂ければなと思います！
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2022年09月09日
- 参加申し込みの期限
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- 2022年09月16日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2022年09月16日 11時00分
