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『HALO ~氷解無垢~』
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【ものがたりへ】
おばあさんの語ってくれるお話は、綾花にとって新鮮で楽しく、同時に彼の秘密の薄皮を一枚また一枚とはいでいくような、どこか後ろ暗い悦びも少なからずありました。聞いてしまっていいのかな。そんなふうにも思います。けれど、好奇心には勝てません。
それに、つるぎがことのほか熱心にあれこれ尋ねてくれるもので、彼を知ることは前向きで正しい試みなのだと、そんなふうにも思えてきます。
新見 冬。旧姓早川 冬は、この街で生まれたのだそう。
そして、その甥っ子もまた。
ふたりは姉弟さながらに仲睦まじく、好きな本について、それに冬が書いているという彼女自身の小説について、飽きずに語り合っていたのだと。おばあさんは穏やかであたたかな思い出をたどり、うっとりと瞳を閉じるのです。
素敵な、素敵な思い出。彼の思い出。
けれど。けれど、です。綾花には分からないことが、胸につかえた疑問が残されています。
雨の日に見た、彼の痛ましい表情に、なんら答えを見い出せてはいません。
確かに、そう……分かることもありました。きっとある雨の日、冬と甥っ子の間に、なにかがあったのでしょう。彼にあんな顔をさせてしまうような、ひどく切ないできごとが。
では、一体なにが? 綾花の知りたいことは、そこにこそありました。
「私に分かるのは、今話したことくらいだけれど。なにか、知りたいことがあるのね?」
綾花とつるぎ、珪の間柄をあえて語ったわけではありませんけれど。人生の熟達者であるおばあさんにはどこか、察するところがあったのかもしれません。穏やかな顔で綾花を見つめ、その胸に抱かれた本に、とん、と指先で触れ、
「もしかしたら、その本の中に、答えがあるかもしれないわね」
そうして優しく、微笑んでくれました。
「そこには、ふゆちゃんの想いが込められているから。あの子の優しさと……後悔と……つらい決断も」
だから、知ってあげて。おばあさんは言いました。
綾花はこくり、ゆっくりとうなずきます。いまや、確信がありましたから。
この本の作者を知ることが、綾花の想い人を知ることに繋がっている。きっと、そのはずだから。
無事購入することができた一冊を、つるぎは綾花に持たせてくれました。
「わたしがいつものチョーシで、へいへーい! 見つけてやったぜーい! って渡すより、綾辻ちゃんが渡してあげたほうが珪さん、喜ぶんじゃない?」
なんて言うもので。
そんなわけで一泊二日の小旅行を終え、猫鳴館へ戻ってきた綾花の手の中に、あの本はありました。
困ってしまうのは、つまり、欲求に抗いがたいことです。
珪先生はなぜこの本を探していたんだろう。なにが書かれているんだろう。読みたい。読んでみたい。
でも、先生より先に読んでしまうのはどうだろう? まずは彼に渡すのが筋というものじゃなかろうか?
でも気になっちゃう。珪先生の秘密。
──学生時代はモテたのに、誰とも付き合わなかったんだって。
バイトでためたお金をいくらか放出してまで見つけたのだから、少しくらいは、
「…………っ」
ぶるぶると頭を振り、葛藤と不埒なココロを追い払ってから、綾花はきりっと唇を結び、スマホの通話ボタンをぺもっとタップ。
しばしの呼び出し音を経て、
『綾辻さん? やあ、こんばんは』
「こんばんは、珪先生。こんな時間にすみません。あの……」
一日二日聞いていなかっただけで、妙に懐かしく思える、彼の声。
抑えがたい好奇心を、珪先生に対しては真摯にありたい、ウソはつきたくないという思いが結局、上回りました。
『なにか用だったかな? 図書委員の仕事のこと? 受験の悩みなら、いつでも相談に』
「見つけたんです……」
彼の言葉が途切れたのは、彼もすぐに思い至ったからでしょう。
『……あの……本を?』
「はい」
『僕の探してた……』
「はい」
『本当に?』
「はい……」
まるで永遠にも思える、長い沈黙がありました。長い、長い、響き渡るような静寂でした。
一分くらいでしょうか。数分にもおよんだのかもしれないし、数十分だったのかもしれません。綾花にも、よくわかりませんでしたけれど。
せきばらいと鼻をすする音、もうひとつせきばらいの後に、ぽつりと、
『ありがとう』
ひと言。
『ありがとう。綾辻さん……』
「いえ……ずっと探してたのは、つるぎさんですから。私は最後の最後に、たまたま見つけただけで」
『そう。つるぎちゃんにもお礼を言わなきゃね』
「はい。そうしてあげてください」
それからまたしばし、耳に痛いくらいの静寂が続いて。
つつ、と本の表紙に指をなぞらせて、迷いをまぎらわせてから。
「あの……」
『うん』
「明日……届けますね。図書室に持っていって」
『読んで欲しい。綾辻さんに』
いつもの穏やかな、それでいて少し張りつめた珪先生の声が、綾花の耳朶を打ちました。
「私が、先に……? いいん、ですか?」
『うん。ぜひ綾辻さんにも読んでほしいって、感想を聞かせてほしいって、言ったよね』
「はい、でも……」
『そうしてほしいんだ。大丈夫、もうずいぶんと待ったからね。あと少し待つくらい、なんてことないさ』
今、彼はどんな顔をして、綾花にお願いしているのでしょう。泣きそう? 嬉しくて喜んで、笑顔でしょうか。それとも……複雑に歪んでいるでしょうか。想像をめぐらせても、今は不思議と、想い人の表情を思い浮かべることができません。
だから綾花は、応えることにしました。
「……わかりました。読んでみます、私」
『ああ……』
最後の声は、同意とため息が入りまじったように、かすれていました。
ベッドへ腰かけ、手にとります。
陰る灰色雲。その切れ間から降りるまばゆい光芒。鮮やかな青い空。
みゃあ、と鳴き声。膝にずっしりとした重みを感じて、見下ろせば黒猫がそこには丸まっています。
「クロワ。ありがとうね」
くりくりと撫でてやると、のんきなあくびをひとつ。ふみゃあ、あふん。
綾花は微笑み、差しこむ薄明光線を指でひとなぞり。
深呼吸。
意を決して、ぱらり。表紙をめくり、本の中へと飛びこみます。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
プライベートシナリオSS(500)
グループ参加
なし
シナリオジャンル
日常
恋愛
NPC交流
定員
1人
参加キャラクター数
1人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2022年12月20日
参加申し込みの期限
2022年12月27日 11時00分
アクション投稿の期限
2022年12月27日 11時00分
参加キャラクター一覧
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