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『HALO ~氷解無垢~』
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【『わたし』】
口下手で頑固一徹、若い頃の苦労は買ってでもしろ! と口癖のように言う厳しい父と、ほわほわして地に足がついていない、おっとりにも程がある母がかもし出す奇妙な凹凸。そこへ、少し引っ込み思案なところがあるけれど父親譲りの頑固さも持つ兄がもたらす絶妙なスパイスで、あの頃のわたしは構成されていた。
十も上の兄は小さなわたしにとって、見上げんばかりの巨人だった。いろいろなことを教わったしとても可愛がってくれた。何でも知っている賢人で、少しだけ近寄りがたく、天に住まうような高みの存在だった。尊敬していた。
けれど彼の人生の規範を受け継ぐにはわたしはあまりにも未熟だったし、タイプの違いすぎる両親の振れ幅や語る言葉のズレが、あの頃のわたしを不安定にさせていた。
誰よりも大きな兄が身近にいたからか、クラスメートや友人たちは赤子のようにしか見えなかった。高潔な兄を神聖視すらしていたのかもしれない、と今にして思うこともある。親切顔の教師たちは生徒たちを見下すか下心でも含んでいるように見えた。
信頼できて、それでいてわたしを解放してくれる甘やかな存在を、わたしは必要としていたのだと思う。
「日向さん、新作できた!? 新作!」
「まぁ~だ。日向センセイはじっくりまったり執筆するタイプなの。おわかり? 誠ちゃん」
「そう言っていつもお蔵入りになっちゃったりするじゃない……早く日向さんの小説、読みたいのに」
「ま、ナマイキ!」
彼はわたしを喜ばせるツボを押さえているのだ。ぎゅうと抱き寄せて、髪をぐりぐりしてやる。
昔はきゃっきゃと喜んでいた甥っ子だというのに、ひーちゃんせいちゃんと呼び合う間柄だったというのに、近頃はなんだか顔を赤くして、
「や、やめてよ! 僕だって、もう子どもじゃないんだよ」
いまやりっぱなマセガキだ。
「ふ~ん。どこに凛々しくってでっかくて、カッコよくって頼りがいのあるオトナがいるのかな~? 誠ちゃんったら、こーんなに可愛いのに!」
「そりゃあ……頼りがいは、無いかもしれないけど。まだ……」
ああ、わたしの天使! なんて愛らしいのだろう。
確かに最近は少し、かっこよくなってきたかもしれない。年々兄の面影が強くなってくるのだから、当然といえば当然だ。
それが嬉しくもあり、寂しくもある。ずっとこのまま、新雪みたいに無垢なままでいてほしい。きっと彼にもいつか好きな子ができて、わたしのもとを離れて。兄さんや義姉さんをやきもきさせるようなイケメンになって、あっという間に結婚して、幸せになって……そんな時が来るまでは、せめて。
けれどそう思うのは、きっとわたしのエゴだ。わたしは誠ちゃんほどに純粋でもなければ無垢でもない。そうあれたらと願ってはいるけれど、人間ってままならないものだから。
だからわたしは、誠ちゃんを抱き寄せる。
「大丈夫。誠ちゃんはかっこよくなるよ。わたしの自慢のお兄ちゃんにそっくりだものね。頼りがいのあるオトナに、いつかなれるわよ。可愛い彼女だってできるって、絶対!」
「……そう、だね。そうなれたら……僕は」
うつむいた彼の心を少しでも読み取ることができていたならと、願わずにいられない。
話のはぐらかし方は芸術的といっていいくらいだ。話術の巧みを陵介さんが何に駆使しているかといえば、要するにそんなところばかりだった。
出会った頃は確かに、大げさな身振り手振りをまじえた彼のトークやちょっと悪ぶって不敵な笑みに魅了されたものだが、近頃はそんな胸の高鳴りを覚える機会もめっきり失せてしまった。
「見なよ、日向ちゃん。こいつら馬鹿だよなあ。銀行強盗するならするで、もっと計画練って緻密にやりゃいいんだ」
「ふうん」
以前は起き抜けにテレビなどつけなかった。コーヒーを飲みながらなにげない会話を交わして、彼の顔を眺めているだけでも幸せだった。陵介さんの隣にわたしがいる、ただそれだけで胸が熱くなった。
朝からニュース番組なんて見たくない。否応なく世俗に立ち返らされ、たまらなくみじめになる。
「俺ならもっと上手くやるね。まず仲間を集めて、下見をして、役割分担を決めてさ」
「陵介さん、公務員でしょ? まっとうな社会人が銀行強盗の算段しててどうするの」
「んー? まあな。そりゃそうだ。おっ、この歌手、また不倫かよ。よくやるよな……」
「ねえ。陵介さん」
「んー?」
今じゃ、目覚めのコーヒーもなし。腕枕もなし。語る言葉は芸能人のこきおろし。
目を合わせることもなくなった。
「陵介さん、言ったよね。本当に、奥さんと別れてくれるんだよね」
「んー? そう言ったろ。心配するなって、日向ちゃん」
時には強引な話題の転換で、時にはくだらないイタズラで、時にはキスで、陵介さんはわたしを煙に巻く。このやりとりも何度目だったか覚えていない。
彼がウソツキだってことはずっと前から分かっていたはずなのに、どうしてまだわたしは彼を信じているのだろう。
きっと、変わるのが怖かっただけ。
誠ちゃんは賢くて鋭いから、たぶん気づいてたと思う。
かといって、直接それをわたしに伝えたりはしない。そういうところは兄とよく似ていたから。波風立てるよりは自分が飲みこんでしまったほうがいい、ってタイプ。
でもそのとき、私は言ってほしかった。伝えてほしかった。あんな男はやめとけって。ロクなやつじゃない、日向さんならもっといい男が見つかるよ、だからあんなやつはやめてよって。わたしの目を見て真っすぐに。
「……な、なに? 日向さん。僕の顔、なにかついてる?」
「かわいいほっぺたがついてる。ぷにぷにのやつがふたっつも」
「もう、また子ども扱いして……!」
そうしたらわたしは、最低なやつにならずに済んだかも。
なんて、もう手遅れかもね。
わたしはとっくに、最低だ。人の幸せをふみにじって、ちっぽけな満足にすがりつく。みじめで、最低で、ロクな女じゃない。
落ち込んだあの子はたびたび、雨の中を歩き回ることがあった。山裾へ繋がる坂道をのぼり、温泉から立ち上る湯気をぼんやり眺めていた。商店街をぶらついて、シャッターの閉まる軒先に垂れ落ちる雨粒を数えていた。お気に入りの書店に入るでもなく、水たまりに映った自分の顔をうつろに見下ろしていた。ぐっしょりと濡れそぼって。
雨に打たれながら幾度彼を見つけて、繊細な涙を幾度拭ってやっただろう。
けれどその日は、誠ちゃんがわたしを見つける番だった。
陵介さんが業務上横領で逮捕された翌日、奥さんに叩きつけられた平手の痛みも引かず、張れた頬をさすりながら雨を歩いた。実家にまで乗り込んで来て、初対面だというのにあの奥さんの剣幕もまた尋常ではなかったけれど、陵介さんが事ここに至るやわたしのことをためらいもせず明かしていたことの衝撃は、わたしが思うよりも深かった。
加えてそれ以上に、自分の行いの罪深さを今さらながらに実感し、押し寄せる恐怖にわたしは震えていた。
「帰ろうよ……日向さん。みんな心配してる」
誠ちゃんはわたしに触れなかった。読書家らしく思慮深い彼なりの距離感だと分かっていながら、そんなわけもないのに、あの子が汚物に触れるのを忌避しているように思われて、わたしは心臓を締め付けられるようだった。
「日向さん」
「……軽蔑するでしょ? 誠ちゃん。いいよ。なじるなり、ひっぱたくなり、好きにしてよ。だらしない叔母さんでごめんね? キライになった?」
「っ、そんなこと!」
ああ。わたしはなんて無知で鈍感で愚かだったのだろう。最低だ。誰のことも幸せにできない、ロクでもない女。
誠ちゃんは唇を噛んでうつむいて、はっとして顔を上げて、わたしを見て言った。
ぽつりと。はちきれそうだったものが染み出るように。
「僕なら……日向さんをずっと、大切にするのに」
息が詰まった。
まったく予感がなかったといえば嘘になる。誠ちゃんがわたしへ向ける目に、少なからず想いはにじんでいたから。
けれどわたしもあの子もおたがいの関係を理解していたし、あの子はきっと、決して口にはすまいと心に決めていたように思う。兄の規範をもっとも受け継いだのは彼だったし、踏み止まるべきと考えたはずだ。叔母と甥っ子、はっきりと引かれた線を踏み越えるつもりはなかったはずだ。まだ幼い彼が、そう例えば男の子が初めて出会う女性として母を思慕するように、誰しも一度は抱くだろうマザー・コンプレックスが少しだけ、歪な形で現れたのだと。時が経つにつれて薄れ、そのまま何事も無かったように霧消してゆくだけなのだと。
そのはずだったのに。彼は、口にしてしまった。
「誠……?」
「違う、僕は……違う、そんなつもりは。違うよ、日向さん。僕はそんな……」
「でも」
「っ……、だって! 仕方ないじゃないか!」
泣いていたのはわたしだったのに、いつの間にか涙に濡れていたのはあの子のほうだった。
なんて綺麗だろう。
「好きなっちゃったんだから……! 仕方ないじゃないか……!」
まるで、雪の結晶。初冬の凛とした、けれどまだ少しあたたかい空気に誘われて、たまらず天から降りてきた、小さな小さな雪のひとひら。
青ざめてわたしを見上げたあの子は、雨に打たれて、ひとたまりもなく溶けてしまいそうだった。
その無垢を汚した日の後悔が、ずっとわたしを苛んでいるのだ。
妻のある男との祝福されがたい恋にのめり込んだことよりも、その伴侶の幸福を奪い踏みにじったことよりも、両親や兄に決して小さくない心労を負わせたことよりも、わたしの後悔は深かった。
「……だめだよ。誠ちゃん」
「日向さ……」
「叔母さんだよ? 君はその甥だよ? そんなこと、許されると思ってる? 思わないよね」
彼のため、とわたしは思いこんだ。それが正しいと信じて、あえて突き放し、冷たくあの子をあしらった。
わたしの愚かな過ちを、彼に繰り返してほしくなかった。道ならぬ想いなど抱かせてはならなかった。
「ね、誠ちゃん。明日からはまた、元のわたしたちに戻ろう。ね。この話はおしまい! いつもの叔母さんと、かわいいかわいい甥っ子ちゃんに戻ろうよ」
「…………」
「ま、こんなバカで情けない叔母ちゃんのことなんて、忘れちゃってもいいけどね……」
「忘れたりなんてしない」
目を合わせて、はっきりと分かった。わたしの選択は誤りだった。
「ヘンなこと言ってごめん。さっきのは、冗談。冗談だよ……」
わたしがあの子を、凍り付かせてしまった。あの子の心を冷たく閉ざしてしまった。
誰かを好きになること、それそのものを、わたしが否定してしまったから。
わたしはひと言付け加えるだけで良かったのに。ありがとう、気持ちはとっても嬉しいよ。わたしも誠ちゃんが大好き。でもね……とやわらかい拒絶であればよかった、それだけであの子が全て諦めてしまうことはなかったのに。
わたしの天使。ああ、その背に翼さえ抱いていたはずなのに。
わたしが全て、奪ってしまった。
雨の日から数えてどのくらい経ったのか、何年が経ったのか、はっきりと覚えてはいない。
あれ以来誠ちゃんとは疎遠になって、話すこともなくなった。あの子とどんな顔をして会ったらいいか分からなかったし、その資格も失ったと思ったから。ただ、高校でできた仲間と楽しくやっているらしいと、兄からは聞かされた。
それでよかったと思う。わたしはもう、あの子になにも与えてあげられないから。
あらゆる感情を少しずつ忘れかけていた頃、わたしは大学へ進学し、道なりに進むうち、教師になった。小学校で弾けるような子どもたちに接しているのは、どうやらわたしに合っていたらしい。陵介さんの顔を忘れ、あの子との思い出も遠くなったけれど、充実した日々だった。
小学生たちに国語を教えている時にふと思いついて、本を書き始めた。いつかの未完成だった小説のいくつかを完成させて、出版社に投稿した。誠ちゃんには見せることのなかった物語だ。幸運なことに、そのうちいくつかは本として出版することもできた。
形にして、残しておきたかった。わたしの思いを。いつか届くと信じて。
わたしの物語が、凍り付かせてしまったあの子の心を溶かして、再びひょっこりとあのあどけない笑顔や白い歯をちらりと見せてくれたなら、どんなに幸せなことだろう。
後に残すものも無くなった今、わたしは旅に出る。
遠く離れたところから、わたしは見守っていよう。
いつかすっかり氷解し、あの子の前に立つことができたなら、わたしは涙まじりに笑って語ろう。
恋することを恐れないで。
誰かを好きになるのって、きっと素敵なことだから。
大人になったあの子が、傍らの恋人と寄りそうさまを夢に見た。
ふたりは雨の中を歩いてきたらしい。雫のしたたる傘をたたんで、あの子の顔が見えた。
雲の切れ間から降りそそぐまばゆいばかりの光条が、垢ぬけないはにかみを照らしていた。
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グループ参加
なし
シナリオジャンル
日常
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NPC交流
定員
1人
参加キャラクター数
1人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2022年12月20日
参加申し込みの期限
2022年12月27日 11時00分
アクション投稿の期限
2022年12月27日 11時00分
参加キャラクター一覧
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