【２年遠足】河口湖に行って、なにしよう？｜リアクション

【２年遠足】河口湖に行って、なにしよう？

【湖畔でごはん】

　綾乃と寿美礼がボートを下りると、すぐにウォルター先生がやって来て、二人にタオルを差し出した。
「風邪をひいたらいけないねぇ。これでよく拭くんだよ」
「ありがとうございまーす」
　タオルで髪や服を拭った二人は、湖畔のベンチでお昼ごはんを食べることにした。
「お弁当まで濡れなくてよかったね」

「君たち、今からごはん？　一緒に食べよーよ！」
　マコトとこまちが、隣のベンチに座って話しかけた。
　寮生のマコトがぶらさげているのは、コンビニ弁当だ。
「もちろんいいよ！」
　少し遅れて、青い顔をした洋二も座る。
「僕は、今は食欲がわかないから、休ませてもらうよ……」
「船で酔ったんだってー」
「そうなの？　洋二君、大丈夫？」
「まあね、少し休めば元気になるとも」
　こまちが綾乃と寿美礼の生乾きの髪を見て訊ねた。
「ふたりとも、もしかしてフッジーに会ったのかしら？」
「そうなんです。水をかけられてしまって」
「楽しかったよね！」
「遊覧船にもフッジーが出たのよ。同じように濡れてしまった人が、向こうで服をしぼっているの」
「フッジーはフットワークが軽いんだね」
「そのようね。もうすぐ来ると思うから、皆で一緒に食べましょう」

【農園でさくらんぼ狩り】

　午後は農園に移動して、さくらんぼ狩りを満喫した。
　牡丹も腕まくりをして、はりきってカゴにさくらんぼをとっている。
「つるんと丸くて、おいしそうですぅ」
「添木くん、ご機嫌だね」
　なぎさも甘い物は好きなほうだ。よく熟していそうなさくらんぼを選んで、とっていく。
「はい～、実はさくらんぼでタルトを作ろうと思ってるんですぅ。彼へのお土産にしようと思って」
　はにかむ牡丹に、なぎさは手伝いを申し出た。
「それなら僕もとるのを手伝うよ。タルトを作るなら、たくさん必要だろうからね」
「ありがとうございますぅ！　あっ、完成したら、音海さんにもおすそわけしますよ～」
「それは楽しみだね」
　カゴの中のさくらんぼはおいしそうで、たくさん食べてしまいそうだとなぎさは思った。
（あまり食べてばかりいると太るけれどね。でも今日は特別だし、タルトも特別だし……）
　おいしそうなものは全て特別になってしまう。
（……帰ったら、また走りこまないと、かなぁ？）

「添木さん、タルトを作るの？　私も何か作りたいと思っているのよ」
　こまちもひかえめな態度ながら、楽しげにさくらんぼをとっていた。
「お菓子、いいですよねぇ」
「さっきいくつか食べてみたけれど、甘酸っぱくて美味しいわよね、ここのさくらんぼ」
「季節のフルーツはいいですよね～！」
「私、さくらんぼ狩りは、子供の頃以来なの。久しぶりだから嬉しいわ」

「おいしいよねぇ！　とってもみずみずしいよ」
　澄佳も笑顔で、さくらんぼを頬ばった。
「船でけっこう涼めたし。いくらでも食べちゃえそう」
　どんどん食べる澄佳の頬はゆるみきっていて、しあわせそうだ。
「甘いものはしあわせだよう！　あたしもお菓子作りしたいなぁ」
　たくさん食べて、たくさん持って帰ろうと決めていた。
「澪乃はお菓子、何作るのー？」
　高いところにあるさくらんぼを代わりにとってやりながら、マコトが訊ねた。
「あたしはねー、ジャムにしたり、パイに使ったりしたいなーって」
　ふふふふ、と澄佳が笑った。
「俺も、女子にお土産、いっぱいとって帰ろーっと」

　さくらんぼをむしゃむしゃと食べているのは、澄佳だけではなかった。
　弁当を忘れた猯利が、山盛りのさくらんぼをもくもくと食べている。
「わあ、猯利君、たくさん食べるんですね」
　同じクラスの綾乃が、寿美礼と一緒に話しかけた。
　猯利が愛想なく答える。
「昼食だ」
「お昼ごはん、食べてないの？」
「ああ」
「そっかぁ。じゃあたくさん食べてね。あたしもいっぱい持って帰るつもりだよ！」

　赤く色づくさくらんぼは、さわやかな甘さでとてもおいしかった。
（……ちょっと食べ過ぎたかなぁ？）
　カゴいっぱいのさくらんぼを抱えて、澄佳はこっそりお腹をさすった。