【２年遠足】河口湖に行って、なにしよう？｜リアクション

【２年遠足】河口湖に行って、なにしよう？

【遠足に行こう！】

　寝子島高校の校門前に生徒がぞくぞくと集まりだした、遠足の日の朝のこと。
「頼む！　このとーり！」
　少し離れた場所で、桜井ラッセルが志波武道を拝み倒していた。
「どうしても行きたいんだ、遠足！　連れてってくれ、ね！」
　二年生の行事だということは承知していても、以前修学旅行に忍び込んだときの記憶もあり、参加したいという衝動がおさえられずにいる。
「うーん、ラッセルくんの頼みか－。しょーがないなー、もー」
「やった！　ありがとな、志波兄！」
　笑顔でラッセルはスマートフォンをポケットにしまった。
「そんでな、バスの中でも一緒にいたいんだ。志波兄の荷物の上のほうにいれてくんないかな」
「おっけー、おっけー！」
　ラッセルは、ろっこん『黄色いピヨコ』を発動させて、黄色いカナリアの姿となった。
　ピピー！　と、カナリアが喜びの声をあげて、武道の鞄に潜り込む。
（修学旅行のときは、車外で淋しかったもんな。今日は安心だぜ、マジ感謝！）

「そろそろ出発するわよ、乗ったら点呼とるから、席についてね」
　校門前に並ぶバスに、若林沙穂が生徒たちを誘導していた。
「さあほら、飛鳥乗って。武道も」
「はいよー、沙穂センセー」
　晴海飛鳥の後ろに並んで鞄を抱え、武道はバスに乗り込んだ。
　席に着くと、鞄をそっと開ける。黄色いカナリアが、期待に満ちた眼差しでそわそわしていた。
「よーっし、煎餅をあげちゃおっかなー」
　武道は小声でおやつの煎餅を割り、鞄の中に入れてやった。
「ピッ！？」
「ほら、おいしー？　唐辛子煎餅ダゾー！　山椒味もあるんだゾー？」
　鳴き声をこらえるラッセルが、もだえ苦しみながら羽を暴れさせる。

「よーし、全員そろっているわね。……あら、武道、どうかした？　忘れ物？」
　点呼をとっていた沙穂先生が、鞄をのぞきこむ武道に気づいて声をかける。
「イ、イエー、ナンデモナイデスヨ、センセー！」
「そう？」
　元気よく返事をしてから、武道は普通の煎餅を入れてやった。
「ゴメンネ☆　これなら食べられるカナー？」
　途端に機嫌を直して煎餅をつつくカナリアの姿は、無邪気でかわいらしく、現地まで退屈しなさそうだと武道はこっそり考えた。

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