桜花寮でパジャマパーティーをしよう｜リアクション

桜花寮でパジャマパーティーをしよう

【準備をしよう】

「私たち、パジャマパーティーをしたいと考えているんです」
　桜花寮の管理棟で、桃川圭花がスタッフのマサエに許可をもとめていた。
「わかったわ。食堂とキッチンを開放するわね。私もサポートするけれど、いくつかルールを決めましょう」
「ありがとうございます！」
　日時や着替えの場所、火の取り扱いや片づけについて、圭花とマサエは話し合った。
　桜花寮の玄関や食堂に、『パジャマパーティー開催！』の告知が貼られ、生徒たちの間に広まるのに、さほどの時間はかからなかった。

　パーティーの当日、準備が進んで、食堂は活気に包まれていた。
「このテーブル、真ん中に寄せちゃおうか～」
「そうね、何カ所かにまとめて、皆が食べ物とか手に取りやすいようにしましょう」
「じゃあ運ぶよ～。せーので一緒に持とう？」
「せーの！」
　パーティーを主催することになった圭花と夢宮瑠奈が、テーブルをセッティングしていた。
　キッチンには既に、星ヶ丘寮より届いた食材が山となっている。
　檜扇舞華があらかじめ手配しておいた品々だ。

「テーブルクロス、持ってきたよ……」
　手伝いを名乗り出た恵御納夏朝が、テーブルクロスを敷いて、取り皿を並べだした。
「ありがとう。皆が持って来たおやつなんかは、こっちに置いてもらうようにしましょう」
「うん……。僕も、クッキーやチョコレート菓子を持って来てるの。パーティーに使ってくれると嬉しいな」
「そうだ、クッキー！　あたし、お部屋の冷蔵庫にクッキー種が入ってるの。全部持って来て、焼いておこうかな」
「いいわね。きっと皆、遠慮なく食べるわよ」
「飲み物足りそう？　僕、準備が終わったらペットボトルの飲み物買い足しておくよ」
「たすかるわ」
　テーブルを移動し終えると、三人は食堂の床にラグを敷き、さらに端のほうには布団も用意した。
「これでいくらでもごろごろできるね」
　夏朝は満足げだ。
「くつろぎの空間だねぇ……。寝ちゃう人とかいるかも？」
　準備は着々と進んでいった。

　一方、星ヶ丘寮では、直風満帆が荷物をまとめていた。
　手作りのマフィンが甘く香る。
「差し入れもちゃんと持ったし、忘れもんは無いやんね」
　これから舞華と一緒に、桜花寮へ行くのだ。
「舞華ちゃん、ごめ～ん！　お待たせ！」
「直風さん、いい香りですね。中身は何ですか？」
「これね、マフィンなんや。プレーンとチョコとメープル！　舞華ちゃんはもう荷物送ってもうたんやろ？」
「ええ、多少は手で持っていきますが。あと、こっちはパジャマですね」
「パジャマ？　なんで？」
「なんでって、パジャマパーティーでしょう」
「えっ！？」
　パジャマの着用が定められていると聞いて、満帆はしおれた。
「パジャマ……、あかん……」
　うなだれながらも、ルールだというならば仕方がない。
　満帆はパジャマを慌てて用意して、荷物に加えた。

　桜花寮に着くと、舞華はすぐにマサエの元へ挨拶に向かった。
「本日は、星ヶ丘寮の主方々がお世話になります」
「あら、ご丁寧にどうもありがとう。食品やお菓子もたくさん送ってくれたでしょう」
「こちらの寮にお世話になるのですから、当然です。お騒がせします」
「ゆっくり楽しんでいってね」
　マサエは宿直室に二人を招き入れた。
「着替えはここでお願いすることになっているの。内鍵がかかるから、着替えが終わったらドアを開けておいてちょうだい」
「わかりました」

「うう……、パジャマ……。着替えなあかんよね……」
「直風さん、そんなにお嫌なんですか？」
「うん……、うちのパジャマ、ちょっとアレなんや」
　おずおずと満帆が取り出したのは、ロマンティックなロリロリネグリジェだった。
　オーガニックコットン１００％の、ソフトな肌触り。
　ナイトキャップとロングドロワース付きで、統一感もばっちりだ。
「まあ、かわいらしい」
「ちっ、ちゃうねん、これはおかあちゃんの趣味やねん……」
　真っ赤になって、満帆は泣き言をもらした。
「寮に入るとき、普通のやつ買ったんやけど、洗濯に出したらなぜかコレになって帰ってきてん……。おかあちゃんが手を回したんや、ぜったいそうや……」
「寝心地がよさそうですね。大丈夫ですよ、お似合いです」
　そう言いながら舞華が身につけたのは、もこもこウサギのパジャマだ。
「うわぁ、舞華ちゃんかわええ」
「ふふふ、ロップイヤーフードもついてるウサ！」
　ウサギの垂れ耳が揺れていた。

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