【ハロウィン】可笑しなお菓子な甘い島｜リアクション

【ハロウィン】可笑しなお菓子な甘い島

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「これは一大事なのです！」

稲井いおねはひとり目を輝かせていた。
窓の外に広がる綿菓子雲がいおねの期待を大きく膨らませる。
なんと素敵なお菓子の世界なんでしょうか！

「さっそくお店に向かうのですよー」

いそいそと準備をした鞄には可愛らしい骨のモチーフを下げて。
寝子島一の骨好き少女、いおねが歩きはじめると、そよ風が焼き菓子の香ばしい香りを運んできた。
誘惑されまいとしつつもついついその香りの方向へ足を向けてしまう。

「す、少しくらいの寄り道は許してもらえますよね？」

紅葉したもみじの生菓子を押しのけ、少し開けた場所に出る。
そこには半分地面に埋まるような形で、たくさんの骨の形をしたフィナンシェが落ちていた。

「ほ、骨！？」

骨の形に反応して、いおねはすぐさまそのフィナンシェに駆け寄る。
そのうちのひとつに手を伸ばすいおね。骨フィナンシェに触れるか触れないかのところで、ふわふわした毛の塊が割り込んできた。
びっくりしたいおねが手を引くと、その毛の塊は満足そうにフィナンシェを独り占めし始める。

「あ……ちょっと！ひとつくらいくれてもいいじゃないですかー！」

悲壮な声をあげたいおねを不機嫌そうに一瞥したそれは、のそりと立ち上がると草むらの方へと歩いて行く。
姿が見えなくなって数秒。

「がおー、こんなところにいたのだ！？」

と、先ほどの毛の塊、もとい、がおーを胸に抱いた後木真央が草むらから飛び出してきた。
いおねは思わず数歩後ずさる。
眼鏡がずれていることも気付かないまま、お互いにその場を動けないでいた。

「いやあ、お見苦しいところをみせてしまったのだ！」

あっけからんと笑う真央の腕の中には、すっかり大人しくなったがおーが抱かれていた。

「少しびっくりしただけなのです。かわいいねこちゃんですねー」
「がおーなのだ！真央ちゃんの相棒なのだ！」

真央ががおーの手をもってふりふりと揺らすと、がおーは居心地が悪そうに体を動かした。

「いおねちゃんに会えてよかったのだ！真央ちゃん、流行のお店はわからないのだ」
「食べたことないんですか？よかったらひとつ食べてみます？」

いおねは鞄から綺麗な小瓶を取り出し、真央の手のひらにひとつ、ころんと飴玉を落とした。

「綺麗なのだー！」

目をキラキラさせ、口に放り込む。
あふれ出す甘さに真央はより一層目を輝かせた。

「すごく美味しいのだ！これなら真央ちゃんも常連さんになりたいのだ！」
「この世界が元に戻ったら、一緒にいきますです？」
「ぜひなのだー！」

ふたりがキャットロードに入ったあたりで、いおねのツインテールに異変が訪れた。
綺麗な金髪が少しずつくすんでいって、茶色っぽく変色していく。
さらさらと靡いていた質感も、固まって少しごわごわとしている。

「いおねちゃんの髪が、なんだか変なのだ」
「えっ！？なになにどうなってるですか！？」

真央の言葉にいおねは自分で確認しようと首を振る。が、首を傾けた方向にツインテールも動くのであまり意味はなしていない。

「いおねちゃん、落ち着くのだ」

真央にたしなめられて、改めてツインテールに手をやる。
どこかで触れたことのある感触。それは……。

「麩菓子になってる！」

いおねは思い切って麩菓子になったツインテールを引きちぎると、よく見えるように目の前へ持って来た。

「うわあ、徐々にお菓子になるって本当だったんですね！」
「感心している場合じゃないのだ！真央ちゃんもここのお菓子のお家ちょっと食べちゃったのだ！」

目の前で始まったお菓子化に真央もわたわた。抱かれたままのがおーも真央の動きに合わせて後ろ脚をばたばたと動かしていた。

「とにかく先を急がないとです……！」