【ハロウィン】可笑しなお菓子な甘い島｜リアクション

【ハロウィン】可笑しなお菓子な甘い島

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弘明寺能美子は中学時代、その抜群のスタイルでモデルとして活動してきた。
今でこそ寝子島で生活しているが、以前はかなり派手な生活も送っていたようだ。
そんな能美子の懐かしい思い出。
中学生のモデルを起用した雑誌の特集で、ブランドショップやセレクトショップの紹介をしていたコーナーがあった。
能美子を含む複数のモデルが撮影現場にいたのだが、その冷ややかな目つきからなのか、そこから醸し出される大人っぽい雰囲気からなのか。
能美子が担当するのはいつも少し大人びたギャル系ショップや、強めのショップばかり。
他の子たちは可愛らしいパステルカラーの並ぶショップで撮影されているというのに。

そんな記憶を辿りながら、能美子は目の前に広がるファンシーな寝子島を一瞥した。

「なにがどうしてこうなったのよ」

不機嫌そうな目をさらに細めて、長い黒髪をかきあげる。
テオの言葉を信じるならば、自分もそのうちお菓子になっていくのだろうか。

「私がお菓子になるとしたら、何になるのかしら。あんまり甘いものって食べる習慣がないからわからないわ」

自身の体型を維持するため、お菓子などは基本的に口にしない生活をしていた能美子。
目の前に広がるお菓子たちの誘惑にも一切靡く気配はない。

爽やかな風が吹くたび運ばれてくる甘い香り。
ビターチョコレートの壁を眺めながら、「テオもやっぱりチョコレートは苦手なのね」と笑みをこぼす。

やがてキャットストリートまでやってきた能美子の前には、住宅街とは比べ物にならない色の洪水に巻き込まれた。
華やかなアパレルショップだったであろう場所からは、真っ赤な蜜がハイヒールを模したように流れ出ている。
その隣の店では素朴な焼き菓子のボタンが籠に入れられて並べられていた。
更にその奥は透き通った透明の砂糖菓子がショーケースの中で綺麗に飾られていた。

「なんでもありじゃないの……」

少し呆れた様子できょろきょろとあたりを見渡す。
色とりどりのお菓子に彩られた中で、能美子が目を止めたのは、可愛らしいアイシングクッキーの扉。
細かなフリルやリボンを可愛らしいアイシングで模ったクッキーの扉を開くと、中は外観以上に可愛らしくディスプレイされていた。
天上から吊り下げられたシャンデリアにはシャーベットの入ったガラスの器が。
壁一面のレースは綿菓子のように細い糸状の砂糖を編んで作られている。

可愛らしく仕上げられた店内に、能美子は表情こそは動かさなかったが、その胸はどきどきと音を立てていた。

「わ、私あんまりこういうショップのお仕事なかったのよね……。誰も見ていないうちなら、ちょっとくらいいいわよね」

そう呟いて能美子は可愛らしいお菓子たちの前でポーズをとると、カメラのレンズを自分へ向けた。

カシャッ

というシャッター音と同時に、閉ざしたあった扉から光が差し込む。
思わず目を向けた先にはちかが驚いたような表情で固まっていた。

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