【１０周年】吾輩は見た～週刊かぎしっぽのねこねこ記者｜リアクション

【１０周年】吾輩は見た～週刊かぎしっぽのねこねこ記者

●週刊かぎしっぽvol.XX111『自転車の乗り心地は？』

　吾輩、ちかごろ憧れているものがあるにゃ。
　それは――自転車にゃ！
　自転車のかごに乗って颯爽と風を切って走ったらどんなにおひげが気持ちいいか。
　そのことを考えると夜も眠れ――て、めちゃくちゃ快眠にゃが、気になるにゃ。

「今日も一日頑張ったよね、花遊。帰ろうかー」

　にゃにゃ！
　真っ白い自転車でやってきたのは万条幸次くんと、いっしょに暮らしている花遊氏にゃ。
　花遊氏はもとは野良だったけど、幸次くんのお母さんに拾われて万条家の飼い猫になったにゃ。
　吾輩、吾輩の夢を当たり前に叶えている花遊氏にインタビューすべく後をついていったにゃ。
　幸次くんはスーパーの前で自転車を止めたにゃ。
「よいしょっと。自転車はここに止めて……ちょっと夕飯の買い物頼まれているからここで待ってて」
　今にゃ！
　吾輩、しゅたっとかごに飛び乗ったにゃ。
　自転車がぐらぐらっと揺れたので、もとから乗っていた花遊氏がシャーッと牙を剥いたにゃ。
「うわ、何するんだ。バランス崩れるだろうが」
「申し訳ないのにゃ。どうしても花遊氏にインタビューさせていただきたくて」
「変な奴。あ、わかった。オマエ、週刊かぎしっぽのねこねこ記者だな？　何の用だよ」
「自転車のかごの乗り心地を聞きたいにゃ」
「そんなこと知りたいのか？　まあ、悪くないぜ。目線高くなって世界が広く見えるし」
「おひげも気持ちいいかにゃ？」
「幸次は俺を気遣って押して歩いたり、漕いでもそんなにスピード出さないようにしてくれてるけど……まあ、ひゅうって風が吹くといいかんじだな」
「いい飼い主さんなのにゃー」
「飼い主っていうか、弟分だよ」
　お待たせー、と、野菜が入った白い袋を持った幸次くんが戻ってきてかごにのってる吾輩を見つけたにゃ。
「あれ、花遊のお友だち？　どこの子かなー？　ちょっと乗ってく？」
　にゃにゃん！
　何と嬉しい申し出！
　こうして吾輩、ちょっぴりだけだけど自転車を体験したにゃ。
　楽しかったにゃ。また乗りたいにゃー。

「よい飼い主さん、羨ましいにゃ～」
「寝子島の人はみんな優しいにゃけど、万条家みたいなところで飼ってもらえたらきっと幸せにゃ」