【１０周年】吾輩は見た～週刊かぎしっぽのねこねこ記者｜リアクション

【１０周年】吾輩は見た～週刊かぎしっぽのねこねこ記者

　三毛谷道哉は猫又であった。明治時代に生きた雄の三毛猫が年経てあやかしになったものだ。
　いまだに猫に混じって暮らしている道哉は、週刊かぎしっぽのこともよく知っている。
　今日も今日とて猫集会に混じり、週刊かぎしっぽのバックナンバーに目を通したりしている。
「好きなんだよねかぎしっぽ。今日はどんな記事があるかな」

●週刊かぎしっぽvol.XX120『百鬼夜行』

　
　幽霊にゃ。妖怪にゃ。
　深夜の寝子島をあやかしたちが練り歩いているにゃ。

　先頭をゆくのは……真っ赤な悪鬼に悠々と腰かけた猫又の道哉さんにゃ。
　ちょっとインタビューしてみるにゃ！

　ねこねこ記者：道哉さーん！　お話聞かせていただけますかにゃ？

　道哉さん　　：おや、かぎしっぽの記者さんかい。インタビューかな、光栄だね。

　ねこねこ記者：今日のこの行列は何ですかにゃ？

　道哉さん　　：百鬼夜行というのだよ。平安時代から続く鬼や妖怪などが群れをなして歩く行事で、
　子子午午巳巳戌戌未未辰辰と言ってね、五月と六月は巳（み）の日が百鬼夜行日なのさ。

　ねこねこ記者：そちらの可愛い方は？

　道哉さん　　：ああ、彼女は幽霊の餅々きなこ。あやかしたちの顔役でね。

　きなこさん　：こんにちは。
　わたしのめのくろいうちは、あやかしたちにわるさはさせないよー。
　ってもうずっとまえにしんでたんだった！　てへっ。

　ねこねこ記者：にゃにゃー。お茶目にゃ。きなこさんはこわくない幽霊にゃー。
　でも、道哉さんが乗ってる悪鬼は、おめめぎょろぎょろで今にも食われちゃいそうで怖いにゃ。
　道哉さんは怖くないのかにゃ？

　道哉さん　　：見た目は怖いけれどね、気は優しいやつなんだ。仲良くしてやってよ。
　どうしても百鬼夜行が怖ければ、こんな呪文がある。唱えてみたら？
　「かたしはやえかせせくりにくめるさけてえひあしえひわれえひにけり」

　ねこねこ記者：どういう意味にゃ？

　道哉さん　　：よく知らない。大昔の人間たちはいろんな迷信を信じていたのさ。

「百鬼夜行のときのだね。夜行は月に一度と言いつつ、文献にあるほどやれていないけれど」
　そう笑む道哉にいっしょに記事を覗き込んでいた猫たちはちょっと不安そうに話しかける。
「前はたまにしか見なかった幽霊や妖怪を、ちかごろよく見かけるようになったにゃ」
「なにかよくないことの前兆かにゃあ……？」
「私には分からないな。けれどきっと、」
　道哉は空を仰ぐ。
「――私たちや島の皆がなんとかするよ。これまでもそうして来たんだから」