【１０周年】吾輩は見た～週刊かぎしっぽのねこねこ記者｜リアクション

【１０周年】吾輩は見た～週刊かぎしっぽのねこねこ記者

●プロローグ

「ぶわふっ！？」
　吾輩は見た。
　風に乗って飛んでいった吾輩の取材ノートの紙片が、寝子島高校っていうところから出てきた金髪三つ編みな学生さんの顔にぴたっと張り付いたところを。
「何だこりゃ？　ちっちぇーメモ……？　子供や豆本のページにしちゃ文字のサイズがやべーな……」
　手に持っている水の入ったビニール袋を気にしながら、紙を顔から引き剥がして首を傾げているのは、そう――桜井ラッセル君にゃ。
　ん？
　どうして名前が分かったのかにゃって？
　吾輩は、寝子島の猫が愛読する週刊誌、週刊かぎしっぽのねこねこ記者。
　何を隠そう、吾輩の灰色の脳みそには寝子島の住人の名前がほぼすべて記憶されているのにゃ！
　えっへん！
　やや、それより。

「にゃにゃにゃーーーっ（吾輩の取材ノートーーー！！）」
（※人間にはにゃーとしか聞こえません）

「もしかしてコレお前の？」
「にゃにゃ！（そうにゃ！）」
「その反応マジか」
　ラッセル君がびっくりしていると、高校からポニーテールのお姉さんが出て来たにゃ。
　響タルトちゃんにゃ！
「ラッセルくんどうしたの？　あれ、週刊かぎしっぽのねこねこ記者さんもいっしょ？」
「響。この子知ってるのか」
「うん。時々猫の集会にも顔を出しているからね」
　タルトちゃんは人間だけど猫になれるお姉さんにゃ。吾輩にぱちっとウィンクを寄越して、ラッセル君に週刊かぎしっぽや吾輩のお仕事のことを説明してくれたにゃ。
　するとラッセル君は興味がわいたようで、しゃがみ込んで吾輩を覗き込んでくる。
「へーっ。書いてるとこ見せてくれねーか？　どうやってんの？　爪？」
「にゃんっ！（失敬な！）」
　吾輩は記者らしくノートと鉛筆を使うにゃ！
　でもそれは人間に見せるものじゃないにゃ！
「ごめん、悪かったって。そう怒るなよー。シロ姉に貢ごうと思ってたチーズだけどいるか？」
　シロ姉はメスの白猫さん。吾輩は鼻をくんくんさせて、ラッセル君の手の匂いを嗅いだにゃ。チーズもいいけど、もっといいものを持っていそうな匂いがしたのにゃ。
　よく見ると持ってるビニールの中にはピカピカ光る小さいお魚が一匹。
　ちっちゃいけどやっぱり生のほうが――。
「このメダカは具合の悪い子だから駄目だ。せっかくここまで立派になったんだ」
　ラッセル君はひょいっと吾輩の手の届かないところに袋を持ち上げる。
「ほら、こっちの猫のおやつやるからさ」
　そ、それは！
　吾輩たち猫大好きなおやつ『にゃ～る』！！
　こんなものを隠し持っていようとは、やるにゃ、ラッセル君！
「にゃあにゃあにゃあにゃあ」
　吾輩は猫である。猫の記者である。
　『にゃ～る』を前にして本能より理性を優先でき……にゃい！
「わかった、わかった。遠慮なく食いな。さてその隙に、っと」
「ねこねこ記者の取材ノートみたいだね。何が書いてあるの、僕にも見せて」
　ラッセル君とタルトちゃんは吾輩のメモを覗き込んでるけど、そんなことより『にゃ～る』にゃ！

「なになに……」

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