【１０周年】吾輩は見た～週刊かぎしっぽのねこねこ記者｜リアクション

【１０周年】吾輩は見た～週刊かぎしっぽのねこねこ記者

●週刊かぎしっぽvol.XX107『吹きすさぶ先輩風』

　ねここーに先輩風っていう凄い風が吹いていると聞いて、吾輩、潜入取材にやってきたにゃ。

「はーっはっはっは！！　後輩たちよ、これが先輩風だ！！」
　こ、これはたしかに凄い風にゃ！！
　３年生になった金髪の先輩が、階段上に設置した巨大扇風機の前に仁王立ちして高笑いしているにゃ。ポニーテールの響タルトちゃんと前髪をちょんまげみたいに結んだ春山小枝ちゃんも「先」「輩」と書かれた巨大うちわで大風を起こしているにゃ！
　旅鴉月詠ちゃんが撒く紙吹雪は暴風に乗って礫みたいに後輩にぶつかっていく中、生徒会の腕章をつけた２年生がスカートを抑えて３年生が吹かせる先輩風の横暴さに耐えているにゃー！
　そのときだったにゃ。
　防護服に身を包みガスマスクをつけた『先輩』が扇風機の前でなんかパンパンに膨らんだ外国語の文字の書かれた缶の蓋に手を掛けたにゃ。
「そ、それは……まさか、しゅーるすとれみんぐ……？」
　先輩風の『輩』を吹かせていた小枝ちゃんすらもざわっとしたその瞬間。
　
　とんでもない悪臭が先輩風に乗ってバラまかれたニャ！！！

「みぎゃあああああああああ！！！！！」
　鼻がもげる！
　そんな言葉では足りないくらいの強烈な匂いが強風に乗って廊下を一気に流れていったにゃ！
　いかん！　ここにいたら死ぬ！
　そう思った吾輩は思わず窓から飛び降り外へ逃れたにゃ。
　……その後、どうなったのか、吾輩は知らないにゃ……。
　ただ、阿鼻叫喚といって差し支えないものすごい悲鳴が、聞こえ続けていたにゃ……。

「しゅーるすとれみんぐとは、スウェーデンという国が生んだ悪臭兵器だという話にゃ」
「後日の取材によると、あのとき生き残ったのは、ガスマスクの子のほかは、巨大扇風機の後ろにいた小枝ちゃんだけだったそうにゃ」
　記事を読んだ猫たちは肉球を合わせて悪臭の犠牲になった生徒たちの冥福を祈った。
「合掌……」