【１０周年】吾輩は見た～週刊かぎしっぽのねこねこ記者｜リアクション

【１０周年】吾輩は見た～週刊かぎしっぽのねこねこ記者

　暑い盛り、散歩をしていた鴻上彰尋は偶然猫集会に出くわした。
　どうやら猫たちは、雑誌のようなものを見てああだこうだと盛り上がっているようである。

●週刊かぎしっぽvol.XX059『ねこのパレード』

　人間が猫になる『猫まつりat寝子島』が開かれたにゃ。
　寝子島の人たちはどんだけ仮装が好きなのかにゃー。ともかく吾輩取材して来たにゃ。
　昼間は屋台が出て猫のお土産がいっぱい売ってたにゃ。あと魔女もいっぱいいたにゃ。
　夜はでっかくて光る猫を引っ張ってパレードしていたにゃ。
　パレードでは人がいっぱいで吾輩も足の間をすり抜けるのが大変だったにゃ。
　ようやく人ごみを抜け出したと思ったら、ちょうど目の前に鴻上彰尋くんと七夜あおいちゃんがいたにゃ。
　音楽が足元を揺らすみたいに流れてて、ぴかぴかの猫のパレードも流れてて、人の波に押されてふたりは手を繋いだにゃ。そのとき、どーんと花火があがったにゃ。猫の花火もあがったにゃ。

「綺麗だね、彰尋くん」

　にゃあ。
　いい雰囲気にゃ。
「……今日は一段と、世界が眩しいよ」
　たしかに世界はピカピカ眩しいにゃ。
　それ以上に手を繋いだふたりの後ろ姿が、吾輩にはまぶしいにゃ。

「人間は手を繋ぐと、どきどきらぶらぶになるらしいにゃ」
「発情期かにゃー？」

（ちょ、発情期って）
　彰尋は思わず手で顔を覆う。
　にゃあにゃあ言ってる猫の声がどうして意味あるように聞こえたのかは謎だが、そんなことに気が回らないくらい動転する自分がいた。そのときであった。
「あれ、彰尋くん。こんなところでどうしたの？」
「あ、あおい、さん……！？」
「わわ、どうしたの、顔赤いよ！　熱中症？」
「いや、そういうわけでは……」
　パレードを見ながら手を繋いだときの気持ちが蘇る。言うまでもなく、大切な記憶だ。けれどそれはとても個人的なことで、まさか猫に見られていて雑誌にまで掲載されていようとは。
（これはちょっとどころじゃなくて恥ずかしいんだけど……！）
　今は彼女の顔をまともに見られそうにない。