たとえばこんな出会い方｜リアクション

たとえばこんな出会い方

●図書館の奇妙な出会い

　森本明乃50歳。職業、寝子島図書館館長。
　彼女の肩書きだが本人曰く、なりたくて館長になったわけじゃないんだけど。
　おかげで、大人になってからハマった演劇鑑賞に行けない。
　2.5次元の若手俳優たちにハマってからは2.5演劇も鑑賞しているが、図書館が休みの月曜に公演があるとは限らない。
　土日もしっかりと図書館が開いているので仕事せざるを得ない。
　週明けの月曜が休みといった不平不満もあるが、明乃は図書館館長としてしっかり働いている。
「役所仕事ってどうして書類ばっかりなんだろうねえ？　公務員の私が言うのもなんだけどさ」
　残業しながら愚痴る。
　いまのところ、図書館に残っているのは彼女ひとり。最後に残っていた司書も先程帰ったばかりだ。

「ようやく仕事も終わったわね」
　思い切り伸びをしてから時計を見ると、時刻はもう22時半を過ぎていた。
　やることはやったからとっとと家に帰ろうかと思ったが、図書館内を少し見て回ったほうがいいのでは？　と思い懐中電灯片手に館内を巡回することに。
　
　懐中電灯の灯りがあるとはいえ、夜の図書館は暗いので不気味な雰囲気が。
「何もなければいいんだけど……」
　不安を紛らわすため、独り言ちながら館内を巡回する。
　そろそろ巡回を終えようかと思った時、誰かに出くわした。
　懐中電灯が照らしだしたのは、やたらガタイのいい男だった。
「何なのよ、あんたは？　まさか泥棒？」
　だとしたらどうしよう？　警察を呼んだほうがいいのかしら？
　……といったことを考えていると、男はいきなり大声で「押忍！」と言い出した。
　25歳くらいの強面の空手家は明乃が本を読み、念じることで発動する彼女のろっこんだった。
（切羽詰まった状況でもないのになぜこいつが？）
　事情がわからないので、とりあえず男から話を聞く。

「あなた、何しにここに来たの？」
　男（以下：鉄拳男）は、図書館内を徘徊する悪いあやかしを鉄拳で撃退するのだという。
「んなアホな」
　一瞬呆れたが、館内にいる幽霊やら何やら得体の知れないモノがどこからともなく現れたので驚いた。
　突如として現れたモノは彼女と男に向かい襲撃してきた。
「押忍！」
　鉄拳男の拳で、得体の知れないモノはあっさりと撃退された。
（得意技、踵落としじゃなかったっけ？）
　ろっこんが具現化した存在のようだが、これだけが唯一の違いのようだ。

　結局、明乃は鉄拳男と不本意ながら行動を共にすることに。
　その間、何度か襲われそうになったが鉄拳男がガードしてくれた。
（何かしら、このドキドキは……）
　厄介な出来事に巻き込まれたにもかかわらず、明乃はなぜか鉄拳男に好意的な感情を抱いてしまった。
　巡回が終わったので鉄拳男に付き合ってもらったのでお礼を……と思ったが、彼の姿はどこにもなかった。
「ま、まさか……」
　自身のろっこんも幽霊だったのでは！？　と思うと背筋が凍るような気分になった。

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