たとえばこんな出会い方｜リアクション

たとえばこんな出会い方

●彼女がカレシで、カレシが彼女で
　
　万条幸は、学校からの帰り道で困ってしまった。
　一緒にいた青い瞳を持つ白い猫の花見が、急に木に登って座り込んでしまった。
　待っていればそのうち降りてくれるだろうと思っていたが、どれだけ待っても降りようとしない。
「花見ー、降りてきてよー」
　花見を放置して帰るわけにもいかないので、どうしようかと困った。
「あの人困ってるみたいです、同じ寝子高生みたいですが……」
　下校中の愛猫萌々太郎は、木の下で困っている幸を見かけた。
　風紀委員として、困っている人を放っておけない。
「すみませーん、どうされました？」
　幸に駆け寄り、何があったのか聞く。
「ん？　君は風紀委員の愛猫萌々太郎くん！」
「私のことをご存知でしたか」
　基本的に風紀委員長と一緒にいるので、思っている以上に知られた存在なのかもしれない。
「や、やめてください……」
　今となっては両親に名前の由来を聞くことも叶わないが、高校生にもなって『ももたろう』は恥ずかしい。
「そんな名前だと忘れようもないよ、愛猫って名字の方ね」
「えっ、名字の方？　そうですか……今のは忘れてください」
　名前の印象が強くなくて良かったと安心した萌々太郎は、改めて何かあったのか聞く。
「今、うちの猫が……花見って言うんだけど、そこの木の上に登ってさ。呼んでも降りてこなくなっちゃって」
　幸が指を指したほうを見ると、木から降りようとしない猫が。
　降りてこないとなると捕まえるしかない。
　萌々太郎なら届くかもしれないが、無理やり捕まえるのはやめたほうがいいという考えも。

　どうしようかと考えていると、花見が降りてきた。
「あ、降りてきた。心配したんだよ」
「花見という名前なんですね。撫でてあげてもいいでしょうか？」
「いいよ」
「では失礼……」
　そっと花見の頭と背中を撫で、萌々太郎はふわふわです……とウットリ。
「普段からしっかりお手入れされていますね」
「毛並みを良くして挙げたいからね。愛猫くん、猫は好き？」
「猫は好きですよ。色々あって家で動物を飼う余裕はありませんが……」
　あまり考えたこともなかったが、寝子島に来てからは、猫を見かけるとちょっと嬉しい気分になる萌々太郎だった。
「私が寝子高に決めたのも、この島があの子の出身だからって理由があるんだ。単に志望校を全く決まってなかったのもあるけど」
　誰のことだろうと思ったが、花見のことかもしれない。
「猫がのびのび出来て私も全然退屈することがない、いい所だと思うよ。今、こうして愛猫くんと会ってるのも花見の縁かもね」
　助けようとしてくれてありがとう、とお礼を言う幸を見て、声をかけて良かったと思う萌々太郎だった。
「私、家が旧市街だからこっちね」
「私は桜花寮なので逆方向です。それでは、お気をつけて」
「今度また話そうね。バイバーイ」
　花見を抱っこして、幸は旧市街の方向に歩き出した。

　帰りながら、幸はろっこんで花見と喋ってみる。
　初めて話をした萌々太郎は優しそうな人だった。風紀委員は皆、厳しいのか思っていたので意外だった。
「え、彼氏？　あはは、初対面でそこまで考えないよー。花見はすぐそうやってくっつけようとして」
　世話焼きのおばちゃんみたいだね、と花見の頭を撫でながら自宅へ歩く幸だった。

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あとがき

担当マスター：カターレ
ファンレターはマスターページから！

カターレです。

もしも、こんな人物になっていて、こんな出会いがあったなら。

皆様の「もしも」な出会い、恋愛、学校生活、楽しませていただきました。
普段の生活や日常とは違う生活や出来事が、参加してくださった皆様に伝わったのであれば幸いです。
いつもと違う自分。現実と違うお友達。
皆様の想像に数だけ「もしも」な世界が存在します。
機会があれば、また「もしも」な世界が舞台のシナリオガイドを書きたいと思います。

ありがとうございました。

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