たとえばこんな出会い方｜リアクション

たとえばこんな出会い方

●異世界転生な魔導師の出会い

　月原想花はトラックに轢かれて死んだ……はずだった。
　運転手がハンドル操作を誤ったか、居眠り運転していたかで轢いてしまい、救急車で病院に搬送されたまでは覚えている。
　その後は意識が薄れてしまったので、病院で家族に看取られたのかといったことはわからない。

「ここは……」
　気が付いた時には異世界にいただけでなく、天空魔導師になっていた。
（寝子高生からクラスチェンジ？　現実で死んだら異世界へ転生なんて……非常にベタな展開だね）
　そんなことを思いながら、星の力を用いた魔法を使えるらしい天空魔導師について考える。
　このクラスは魔法の関係上、星空が見えないと魔法が使えない。そのため、昼は完全にただの人になる。
　そのせいか活動は必然的に夜が多くなり、夜型人間となってしまった。
「いろんな星座があるように、ぼくの魔法もいろいろなんだね」
　効果やエフェクトを確認したり、この季節にはこの魔法が使えるのだろうかと考えながら魔法を使う。
　
　ある満天の星空の夜。想花はひとりの少女と出逢った。
　右が白、左が黒のツートンカラーの長いウェーブの髪が特徴的なアンニュイな雰囲気。
　暗い感性だが、フツウであろうとしているように見える少女は空中に絵を描くことで魔力を解放する魔導師のようだ。
「私の魔法が珍しいのかな～？」
　話しかけようかと迷っていたら、想花の存在に気付いた少女のほうから話しかけた。
「私は黒白滴。空中に絵を描くことで魔力を解放する絵画魔導師だよ～」
「ぼ、ぼくは月原想花。星の力を用いた魔法を使う天空魔導師だよ」
　自己紹介をしただけだが、どことなく不思議な感じの少女は、なんというか、うまく言葉には出せないが……気が合いそうだと思った。

　何となくという感じで出会った２人は、しばしば依頼などでペアを組むように。
　冒険したり、魔物退治をしたりとさまざまな依頼をこなす。
　想花の魔法の都合上、夜にしか活動ができないが。
「想花ちゃん、大丈夫～？」
「う、うん……助けてくれてありがとう……」
　何度か依頼をこなしていくうちに想花の中で、滴への想いが「頼りになる相棒」から次第に「恋心」に変化するのを感じた。
（ぼくの想いは、空に輝く星や月のように綺麗なままでいいかも……）
　自分の想いを打ち明ける勇気がないので、胸の内にその想いを秘める。

（このままじゃだめだ！　逃げたらだめだ！）
　想いは秘めたままにしようと思っていたが、ある日、ついに意を決して想いを打ち明けた。
「ぼ……ぼくはきみのことが……好きになってしまったようだ！　滴さんは……ぼくのこと、どう思っているのかな……？」
　自分の想いを打ち明けたので、後は滴が自分をどう思っているか知るだけだ。
「想花ちゃんのこと？　うーんとね～」
　どう答えたらいいのかな～？　と滴は首をかしげて答えを考える。

　彼女の答えがどんなものになるのだろう。想花は、いつまでもその返事を待つのだった。

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