たとえばこんな出会い方｜リアクション

たとえばこんな出会い方

●先輩と後輩だったら

「教師と生徒という立場が、もし違う立場だったら何か違ってたのでしょうか……」
　御巫時子は、五十嵐尚輝先生と寝子高の先輩後輩だったらどうなるのか気になった。
　そんな彼女が想像したのは、化学部部長の五十嵐先生と新入生の自分。

「次はここですね」
　寝子高の生活に慣れたのでそろそろ部活を……ということで、部活を選ぶために色々と見に行ってみた。
　そうこうしているうちに、辿り着いたのが化学部の活動拠点たる科学室。
　他に誰も来ていないこともあり、ここには実験準備中の五十嵐先輩しかいない。
　黙々と実験をしている五十嵐先輩のお邪魔をしては悪いかと思いつつ声をかけ、時子は部活の様子を見学させてほしいとお願いを。
　見学の了承を得たのでホッとしていると、ちょっと待ってくださいねと言われた。
　その場を離れ、何かの準備をしているのかと思って待つ。
　しばらく待つと、五十嵐先輩はコーヒーを淹れたビーカーを２つ持って化学室に戻って来た。
「熱いので気を付けてください」
「あ、ありがとうございます……」
　これには少し驚いた。

　その後はコーヒーを飲みながら五十嵐先輩の実験の様子を見たり、部活動の話を聞いたり。
　話をしている最中、五十嵐先輩のボサボサ頭の中から小鳥が出てきて囀ったりということも。
　フツウな事が起こっても、ろっこんが発動し、小鳥が怪現象を察知したことを知らせても気づいていないのは教師の時と同じのようだ。
「あの……私にも何か実験を教えてもらえますか？」
　見学だけでなく、何か実験してみたいですと五十嵐先輩に申し出る。
「そうですね。せっかく見学に来たのですから何かやってみましょうか」
　授業でもやっているようなことですが……と言いながら、五十嵐先輩は実験器具を準備する。

　実験中は２人の距離が近かったり、器具を手にしようとした瞬間、互いの手が触れ合ったり。
　そのたびに時子はドキドキした。
（先輩、好きな人がいらっしゃるのでしょうか……）
　そのことが気になり、五十嵐先輩の目をじっと見つめてしまう。
「あの……僕の顔に何かついているのでしょうか……？」
　見つめられていたので、五十嵐先輩は自分に何かあったのか気になったようだ。
「真剣に実験をしているので、実験がお好きなんですね……と思いまして……」
　好きな人がいるんですか？　と直接聞けないので、好きな人を実験に置き換えた。
　それに対し、五十嵐先輩は「実験は好きですよ。飽きないほどに」と答えてくれた。
　実験が終わったら、時子はお礼を言ってから五十嵐先輩と後片付けを。
　その時に、五十嵐先輩の夢を聞いてみた。
「夢ですか？　実験に携わる仕事に就きたいですね」
　そうすれば好きな実験がいつでもできますし、と照れながら言う五十嵐先輩。
　数日後。時子は科学部の入部を決めた。
　それからは部活で様々な実験をしたり、先輩のお手伝いをしたり、食堂で昼食を食べたり、中庭でお昼寝したりとまったり、ほのぼのと過ごしたり。

「出会いが生徒同士だったとしても、ほのぼのまったり過ごすのは変わらなそうですね」
　お互いがマイペースなので、今の関係と何ら変わらなさそうだ。それが２人らしい、といえばらしいのだが。

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