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◆
森篠 奏子
と
森篠 琳子
の場合。
雨水避けの蓋を開け、中に火のついた線香を立てる。
「さあ2人とも、手を合わせて」
母の言葉に、奏子と琳子は同時に手を合わせて目を閉じた。
その日は奏子と琳子、2人の父の命日だった。
8月中旬。お盆の時期だ。命日と盆と、わざわざ2度来る手間をはぶかせてあげたいと気を遣ったような死に日。
そんなわけはないと思いながらも、それもあり得るのではと思ってしまうのは、父親の人となりにあった。
父親は琳子が高校1年のときに亡くなった。誰もが想像もしていなかった若さでの急逝だった。そして彼の死後、家には多額の借金があることを琳子は知った。
ああ、だからうちは共働きだったのに貧しかったのかと、妙に納得して、驚きはあまりなかった。
琳子も、家が貧しい、ということを具体的に知っていたわけではない。両親は娘たちに不自由な思いをさせたくないとの思いからそういうところを見せまいと隠していたし、できる限りのことをしてきてくれていた。実際琳子も中学まではそういったことに気付いていなかった。
琳子が初めて気付いたのは、高校受験のときだ。暗に、私立は受験しないでほしい、といったことを母親に言われた。滑り止めの受験費も、入学金も、負担だったのだろう。
「気にしないで。私、最初から寝子高に入るつもりだったから」
だがそれを聞いても、母親は暗い表情のままだった。娘から選択肢を奪ってしまったと考えたに違いない。
家に余裕がなかったのは、ひとえに父のせいだ。頼まれると断れない、お人よしの性格が災いして、友人の借金の保証人――しかも連帯――になっていた。
ただの保証人ならば、「借りた友人に請求してくれ」とつっぱねることもできた。だが父親が判を押したのは連帯保証人。「まず友人に」は通用しない。自分は見たことも手を触れたこともないお金の全額に責任が発生するのだ。たとえ、その友人が返済できるお金を持っていても。
父親が亡くなったとき。死亡保険が下りることになり、母親と話した。遺産を相続するか、相続権を放棄するか。
遺産には借金も含まれる。相続権を放棄すれば、借金はなくなる。ちなみに死亡保険金は遺産には含まれず、相続権を放棄しても手元に残る。
だけど、保険金と遺産を使えば借金は完済できる。
「でも、そうすると琳子には大学進学を諦めてもらわなくちゃいけないけど……」
母親は申し訳なさそうに口にした。
「そうね。でもしかたないわ。お父さんが悪く言われるのは嫌だもの。それに、私たちが踏み倒して知らん顔したら、貸した人が損をするわけでしょう? そういうのって、ちょっとね」
「あなたもお人よしね。お父さんに似ちゃったのかしら」
「お母さんだって」
あそこの家は借金を踏み倒したとか、父親は借金を苦にして死んだとか。うわさを立てられるのも嫌だった。まだ小さい奏子のためにも……。
手を合わせている間、母親も同じことを思い出していたのかもしれない。
「ほんと、真面目でお人よしで。何でも背負い込む人だったわねえ……」
しみじみと口にした母親の言葉に琳子は目を開けて、しゃがんで丸まった背を見る。
恨みつらみといったものはなく、懐かしささえ感じているような呟きだった。来る途中、和菓子屋で買ってきた、父親の好物のイチゴ大福のお供え物を見つめて……。
それは、彼女が妻だったからだろう。しかし琳子は少し違う。
(父さんは、困ってる人を見捨てるような人じゃなかった。それは美徳だと思う。
でも……もう少し家族のことも考えてほしかったな)
大学は今じゃなくても、行こうと思えばいつでも行ける。そう思いきるしかなく。彼女は進学を諦めて就職した。
寝子島信用金庫
(ねこしん)
の窓口係。それが今の琳子だ。
そんなことを思うのは、まだ割り切れていないからだろうか……。
墓石を見つめて考え込んでいると、母親は奏子へ話しかけた。
「奏子は、お父さんこと何か覚えてる?」
「あたし?」
覗いていたスマホからひょこっと顔を上げて、奏子はちょっと考えてみる。
「あなた小さかったし。無理かしら」
「そんなことないよ! いっぱい覚えてる! だってもう7歳だったもん!」
「あら。そうだった?」
「うん。だってあたしの誕生日、7月じゃん。
あの日、父さんの会社から電話掛かってきて、それで3人で病院に向かったんだよね。でも父さんは目を覚まさなくて、そのままだった」
「そう。よかったわ、苦しまずに、眠るように逝けて」
通夜や葬式で、そう言って慰めてくる者たちが何人もいた。当時は悲しみが深くて、そんなこと何の慰めにもならないと思ったものだけれど。あれから3年がたって、自分でもそう思えるようになった。
「お葬式の日のこと、覚えてるよ。すっごく暑い日だった」
黒い服を着て、母親と姉と3人で並んで立って。足元にくっきりと真っ黒い丸い影が3つ、団子のようにくっついてできていたのがすごく印象的だった。きっと、ずっと俯いて、そればかり見ていたからだ。
でも母親も姉も、まっすぐ前を向いていて、お悔やみの言葉を掛けてくる人たちにきちんと対応していた。2人とも泣いていなかった。相手を気遣うように、ほほ笑みさえ浮かべて……。
奏子はまだ7つになったばかりで幼くて、本当のところは何が起きているか理解できてないだろうと思われたのか、奏子に声を掛けてくる者はいなかったけれど、そんな2人の横顔を見上げて、泣いちゃダメなんだと強く思ったから、ぐっと奥歯に力を入れて泣かなかった。そのときは。
だけど「お父さんを連れて帰ろう」って、火葬場で収骨をする2人を待って――刺激が強すぎるとの配慮で奏子は参加させてもらえなかった――家に戻って。精進上げ等もろもろの事を終えて、何もすることがなくなったとたん、張り詰めていたものが一気に緩んだように、位牌と骨箱が置かれた小さなテーブルを前に母親が泣き崩れた。
「お母さん、しっかり」
号泣する母の丸まった背中をさすりながら何もできなくなった母の世話を焼き、着替えさせ、布団で寝かせてから、ようやく姉も涙をこぼした。そうして泣きながら、それでも隣室にいる母を気遣かって聞こえないように声を殺して嗚咽する姉を見て。奏子も姉にしがみついて泣いたのだった。
姉のようにはふるまえなくて。その涙も、本当の意味はわかってなくて。ただ2人が泣いてるから、気丈な姉が肩をふるわせて泣いていたから、衝動的に泣いたのかもしれない。
結局、どれだけ泣いたのか、全然覚えてなかった。目を開けたらパジャマ姿で布団の中だったから、泣き疲れて寝てしまった奏子を、琳子が着替えさせて寝かせてくれたのかもしれない。
あの日以来、泣いたのは去年の1度だけ。
あの日、姉が何も言わず、ただ泣くだけ泣かせてくれたからだと思う。
やっぱり姉は偉大だ。
スマホで姉や母親の様子を録画しながら一連の出来事を振り返ってみて、しみじみとそう思う。
さて。それをどうやって動画に仕上げてリスナーに伝えるか……。
今日の『お姉チャンネル』のサムネで使うコマや乗せるキャプションを考えながら、お墓参りを終えて片付けを始めた2人の様子をいろいろ角度を変えつつ撮っていると。
「奏子、さっきからあなた、何してるの?」
さすがに母親に見とがめられた。
「へあっ? な、何でもないよー」
ささっとスマホをポケットに隠す。裏返った声、動作が不自然過ぎて、いかにも「何か後ろ暗いことをしてました」と言わんばかりだった。
しまったと思ったときには遅く、琳子も不審の目を向けている。
かなりまずい状況だ。2人とも彼女が動画配信をしていることは知っていても、チャンネル名や内容までは知らないはずだから――もし知られたら絶対全部削除させられちゃうよ!――使用目的までは気付けないとは思うけど。
(追及されたらどうしよう? 何て答えたらごまかせる!?)
冷や汗たらたら。うきゃーっと頭の中でパニックを起こしている妹の様子に、訊かれたくないことなのだなと察した琳子はため息をつき。線香立ての蓋を戻して立ち上がった。
「お母さん、こっちは終わったわよ。はい、これ」
「あら、ありがとう」
墓前から下げたイチゴ大福の入った袋を渡すと、母親の意識はあっさり奏子から逸れた。
ほっと胸をなで下ろす妹の背を軽く押して、「さあ帰るわよ」と促す。そうして墓を離れながら、肩越しに振り返った。
(お父さん。でも、悪い事ばかりじゃなかったのよ。私ね、初めて彼氏ができたの。同じ職場の人。
この先、まだどうなるかわからないけど……もしかしたら今度、紹介に連れてくるかもね)
そう告げたなら、きっと父は驚き、あせりながらも平常心を保とうとしただろう。
その姿が想像ができて。
琳子は胸にほっこりとしたぬくもりを感じて、ほほ笑みを浮かべていた。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
寺岡志乃
シナリオタイプ(らっポ)
ブロンズシナリオ(100)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
20人
参加キャラクター数
11人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2022年04月25日
参加申し込みの期限
2022年05月02日 11時00分
アクション投稿の期限
2022年05月02日 11時00分
参加キャラクター一覧
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