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◆
深倉 理紗子
の場合。
深倉家の墓は東京都内にあった。
「今年も来たわよ、お姉ちゃん」
墓石に向かい、親しげにあいさつをする。
『お姉ちゃん』とは、4歳違いの次姉の紗智子のことだ。彼女は6年前、急逝した。理紗子が医師国家試験を間近に控えた年のことだった。
死ぬ前日まで理紗子の体調を気遣う優しい姉だった。
敷地に敷き詰められた砂利の隙間からぽつぽつ生えてきている雑草を抜き、墓石についた砂埃などの汚れを洗い流しながら、来れなかった間の出来事を報告する。
「……あのとき、お姉ちゃんならどう言ったかしら、って時々考えるの。「もう少し自分のことも大切にしなさい」かしら? それで少し困ったように笑って「でも、それができないからお医者さまになったんだものね」……ううん、「それができる人になりたいから」ね」
ぱんぱん、とスカートについた土埃を払って立ち上がり、持参した花を花立てに生ける。
「お姉ちゃん。私、まだお姉ちゃんを心配させてるかもしれないけど、お姉ちゃんが誇れるようなお医者さまになったつもり。これからもはらはらさせてしまうかもしれないけど、天国で見守ってちょうだい」
墓前にしゃがんで、両手を合わせて目を閉じる。
風に乗って、どこからか子どもの高い声が聞こえた。何を言っているかまではわからないが、楽しそうな声だ。母親に連れられて来たのだろう。墓地ではしゃぐわが子を不謹慎と、母親は諫めようとするが、小さな子にそんなことはわからない。むしろ母親の目を引き、構ってもらえるのがうれしくて、ますますはしゃいで砂利道を走り回っている。
立ち上がり、声のするほうへ目を向けると、後ろから両手で抱き締められてきゃーーっと声を上げて笑った少女が、母親に麦わら帽子をかぶせられているのが見えた。
あれと似た麦わら帽子を、理紗子も昔持っていたことがあった。
こことは違う青色をした空、目が痛いほど輝く白雲。気温は高いけれど乾燥した空気はさらりとして肌に心地よい。
南欧――プロヴァンスの夏。
海から吹く潮風すらもまるで違って感じられて。理紗子はその不思議さに引きつけられるように、気付けば白いヨットがずらりと並ぶ港
(ヨットハーバー)
に出て、そこからよく海を眺めていた。
ここへ来た最初の数日、夕方になってもなかなか戻らないわが子に血相を変えて探し回っていた両親も、彼女の居場所が港とわかってからは、気を急くことがなくなった。ここは治安のいい田舎の避暑地で、小さな港町は顔見知りばかり。日本からやってきたかわいい少女、理紗子のこともすぐ港で働く者たちの間で有名になり、何かと目を配ってくれるようになっていたから、というのもあるだろう。
当時の理紗子はそんなこととは知らずに、ただ、時間の移り変わりで変化する、どこまでも蒼い海の様子を見ていたのだった。
そんなあるとき。予想外の強い風がびゅうと吹いて。驚き、急いで白いワンピースの裾を両手で押さえた理紗子の頭から、かぶっていた麦わら帽子が飛んでいった。
「あっ……!」
舞い上がり、風に運ばれていくその姿に、あわてて追いかける。だけど落下した先は海だった。
ヨットに引っかかるといった幸運には恵まれず、麦わら帽子はヨットの間をすり抜けて海に着水し、そこでゆらゆら揺れていた。係留バースは高く、手を伸ばしたところで水面には絶対に届かない高さだ。
今はぷかぷか浮かんでいる麦わら帽子だが、いずれ水を吸って沈んでしまうだろう。もしくは、そのまま流されていってしまうか。
そう思うと涙があふれた。
思い出のある、特別な麦わら帽子だったというわけではない。外国の避暑地へ行くからと、出発前に母が買ってくれたというだけの物にすぎなかった。
自分でもわけがわからないまま、ただ涙が止まらなくて。水面で揺れる麦わら帽子を見つめて声を殺してすすり泣いていると、後ろからふんわりと優しく抱き締められた。
紗智子お姉ちゃんだった。
「私が取ってあげる」
なんてことは言わなかった。
大人でも無理な距離だし、もしこのことを知らせたとしても「危険だから諦めなさい」と言われることは、姉にもわかっていたのだろう。ただ、
「もうどうにもならないわ。泣きやみなさい」
と、さとすこともしなかった。
ただ黙って泣きたいだけ泣かせてくれて、そして泣きやむまで抱いてくれていた。
そしてようやく涙の止まった理紗子の頬についた涙の跡をハンカチで拭き、にっこり笑うと「おうちに帰ろう?」と言ったのだった。
帰り道。姉が買ってくれたジェラートアイスを食べながら、町へと続く未舗装の坂道を上った。道の両側から香ってくる、太陽であたたまった植物の青くさいにおいと、控えめに鳴く虫たちの鳴き声を今も覚えている。
地に焼き付いたような黒い影。そして手を握って歩いた姉の手のぬくもりも。
理紗子が12、紗智子が16のときのことだった。
墓を見つめ、まばたきを忘れた両目から、こぼれた涙の跡をそっとぬぐう。
(……もう、あれから18年もたつのね……)
あれから18度目の夏。
紗智子が逝って、6度目の夏。
「お姉ちゃん。私、お姉ちゃんの歳を追い越しちゃった。でもやっぱり、何度考えても、お姉ちゃんにはかなわないって思うのよ。
お姉ちゃんは、永遠に私のお姉ちゃんなんだわ」
また来るわね……そう言い置いて、墓地を後にする。
門を出たところで、目の前に広がった雲一つない空の青さが、思い出の空にとてもよく似ている気がして。
帰りにジェラートアイス、食べようか。
そう思った。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
寺岡志乃
シナリオタイプ(らっポ)
ブロンズシナリオ(100)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
20人
参加キャラクター数
11人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2022年04月25日
参加申し込みの期限
2022年05月02日 11時00分
アクション投稿の期限
2022年05月02日 11時00分
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