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お墓参りに行きましょう
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◆
青山 絢
と
水谷 真優理
の場合。
道と霊園を隔てる柵に沿って植えられた木々から蝉時雨が聞こえてくる夏の午後。
「はぁ。今日も暑いわねぇ」
水をためていた桶から目を離し、空を見上げて、真優理は呟いた。青空に浮かぶ、くっきりとした白雲の輝かしさに手庇しの下で目を眇める。
視線を前に戻すと、こちらへ歩いてくる絢の姿が入った。両手には霊園の入り口付近に構えられた花屋で買ったばかりの花束が大切そうに抱かれている。清楚で可憐なネモフィラを思わせる、涼しげな薄青色のワンピースを着て花束を持つその姿は、デート帰りのようにも見えた。だが人見知りで内向的、対人関係に消極的な絢に、そういった事はなかなか起こり得ないだろう。
こんなにかわいいのだから、絶対男たちの目にはとまっている。彼女さえその気になれば引く手あまただろうに。もったいない、と真優理は思う。
「真優理さん……?」
絢が首を傾げた。こちらを見るばかりで動こうとしない真優理を不思議に思っているのだろう。
真優理は何でもないと首を振って、柄杓と水の入った桶を持ち上げると絢と合流した。
墓と墓の間に設けられた小径を歩き、青山家の墓へと向かう。
「いいお花があったのね。とってもきれい」
「生前、母が好きだった花なんです」
花を見つめて絢が答える。
「そうなんだ」
「はい。家に帰ると、よく玄関に飾って――……」
言葉が不自然に途切れた。
足が止まり、何かに気を奪われた様子で立ち尽くす絢に、真優理は視線をたどる。すると、合間にある墓を越えて、ちょうど青山家の墓がある辺りにしゃがみ込んだ人の背中が見えた。手を合わせているようで、肩が丸まっている。
あれは、と真優理が察したとき。
「父さん……」
半ば呆然と、感情の消えた声で絢が呟いた。
うだるような夏の暑さも一瞬で退いてしまったように、絢は青ざめていた。
青山 諒一
。絢の実父だ。
母を失ったばかりで悲しみに暮れる絢に妊娠した再婚相手を紹介するという事をしでかした、デリカシーのかけらもない男。
もちろんそこには、妻を亡くした夫にしかわからない事情があったのかもしれない。生前から浮気をしていた結果かもしれないし、娘には見えないところで夫婦仲は冷え切っていたのかもしれない。あるいは悲しみから酒に溺れたところに相手の女がつけ込んで罠にはめたとか、妊娠を武器にされてその責任を取らざるを得なかったとかいうことも考えられる。彼は世界的な名声を確立した写真家だから。
いずれにしても12歳の娘には話せないようなことだというのは、さすがにこの歳になれば真優理もわかる。わかるがしかし!
(多感な少女期にいる娘のことを第一に考えなくてはいけない親のすることじゃないわよ!)
もしかしなくても絶対に絢が引込思案で対人関係に後ろ向きになってしまったのは、この男のせいだ。そう思うとぶん殴ってやりたい衝動が沸き上がる。
よく顔を出せたものだと怒鳴りつけてやりたかった。自分がしたことを本当に理解していれば、二度と娘の前に姿を現さないぐらいの良識があってしかるべきだろうに。
しかもなんでよりによって今日、こんな所で、と真優理は心の中で舌打ちする。
いや、考えてみれば今日は月命日なのだし、盆の時期と思えば遭遇しておかしくないのかもしれない。だが1日は24時間、昼間は12時間もあるのに、はち合わせする!?
(なんで時間ずらしてこないのよ、気の利かない男ね! ……なんて、そんなこと今考えてもしかたないわね)
絢を動揺させたくない、との思いで真優理は喉元まで出掛かった言葉をぐっと飲み込み、再び歩き出す。その足音に気付いてか、墓石に手を合わせていた諒一が目を開けてこちらを向き、立ち上がった。
無言で会釈する彼に、絢も小さく会釈を返す。だが真優理は微動だにしない。
諒一は絢の盾となるように立つ真優理を見た。
「久しぶりだね、真優理ちゃん」
「……お久しぶりです。ここで会うなんて、思いもしませんでした」
「そうか」
「ええ。驚きました」
真優理の嫌味たっぷりの冷たい態度には、背中越しの絢にも気付けた。
絢は花束を持つ手にぐっと力を込め、思い切って真優理の横を抜けて前に出る。
「父さん。父さんも、母さんのお墓参り?」
絢の言葉に、諒一は視線を墓石へと流し。
「ああ……これでもスケジュールが空いたときは、な」
「そう」
会話は一度そこで途切れた。
絢は諒一の横を抜けて墓に近づくと、拝石の上に持ってきた花束や線香などを広げた。絢がお参りの準備を始めたのを見て、真優理も手伝う。とは言っても、すでに諒一が先んじて線香立ての中を掃除したり水鉢をきれいにしていたりしたので、あまりやることもなかった。
後ろに立つ諒一の視線を意識して、真優理はやりにくいなと思いつつ、水くみ場から持ってきたたわしを使って軽く墓石を磨く。
「絢、おまえはここへ、命日と祥月命日には来ているんだってな。管理人さんから聞いたよ」
「うん」
絢は買ってきた花を花立てに差そうとして、先に差されている花が同じものであることに、少し手を止めた。
「この花」
「母さんの好きだった花だ」
「覚えていたのね……」
犯したあやまちのつぐないか、それとも早い死を惜しむ心のあらわれか。
わからないけれど、絢はほんの少し、心が慰められた思いでぐっと奥歯を噛み締めて空いた所に自分の買ってきた花を差し、全体を整えた。
火をつけた線香を立て、香煙が立ち上る中、手を合わせて瞼の裏の母へと話しかける。
全てを終えて振り返ると、まだ諒一は手を合わせていた。彼も、亡き妻へと話しかけているのだろうか。
「これからしばらく日本を離れることになった」
一緒に墓を出て、誘われて入った喫茶店で、「元気にしているか」といった、おきまりの常套句が尽きた後。ぽつり、諒一は絢に告げた。その報告を兼ねて墓参りに来たのだと。
なぜそんなことを、と絢は言わなかった。死んだ者に告げても意味はないじゃない、とは。
墓前で手を合わせていた彼を見なかったら。あの花を見ず、ただ報告のためだけに会っていたなら、衝動的に口にしていたかもしれない。どうせ形ばかり、世間体を気にしているだけでしょう、と。だけど、彼は本当に母の死を悼んでいるのだと、彼なりの愛がまだ残っているのだと、知ってしまったから……。
だから、絢も話す気になったのかもしれない。
「父さん。私、映画に出たの」
諒一はコーヒーを置き。
「知っている」
と短く答えた。
「見てくれたの?」
「評判が良かったからな。雑誌もかなりページを割いていた」
諒一が言っているのは、絢が『注目の新人女優』として写真入りで大きく扱われていた雑誌だと、すぐにぴんときた。
「そう。……ありがとう」
「前に、女優になると言っていたが、今も考えは変わらないか」
「うん。演劇の強い大学に入りたいと思ってるし、それまでも有名劇団の養成所を受験する予定」
「もしおまえが望むなら、俺の知り合いに映画を何本か撮っているやつがいるが――」
「あ、ううん。そういうのはいいの。そういうのはなしで、自分の力でどこまでやれるか、知りたいから」
「そうか。そうだな。失言だった」
諒一も駆け出しのころの自分を思い出したのかもしれない。声が少し柔らかく、コーヒーカップに隠れて見えづらい口元が、笑んでいるように見えた。
絢はきれいだが、外見の整った者なら掃いて捨てるほどいる世界が芸能界だ。ジャンルは違えど諒一も写真家として長くその世界に関わってきて、多少その類いのことは知っている。何の後ろ盾もなく、ぽっと出の若い子が大成できるほど甘い世界ではないと諒一が思うのも無理はない。
かといって、そんなふうにすぐ親が自分のコネを出そうとするのは褒められた話ではないかもしれないが、娘のためにできることがあるならしてやりたいと思うのが親心だ。真優理の目には、諒一の失言はとても親らしく映った。
「真優理さん、怒りだすかと思った」
諒一と別れた後の帰り道で、絢はこのときのことを振り返って言った。
「怒んないわよ、あれくらい」
「そう? お墓でも、腹を立ててるみたいだったから」
そしてそれを隠そうともしていなかった。それは真優理もわかっているし、絢にさとれたということは諒一にも伝わっていただろう。
「そりゃ腹は立つわよ。顔も見たくないやつだもの。絢ちゃんがいたから我慢できたのよ。もしそうじゃなかったら今ごろ修羅場よ、修羅場」
言葉としては物騒だが、仕草や声はどこか滑稽みがあって、真優理らしさに絢はくすくす笑う。
そして言っていることは真実だろう。あのとき。真優理は本気で腹を立てていたが、それは絢のためだ。そして絢を護ろうとしてくれていた。それは後ろにいても、はっきりと伝わってきて。
だからあのとき、前へ出る勇気が出せたのだ。
諒一を見て以来、遠のいていた蝉の声が戻ってくる。
「真優理さんがいてくれてよかった」
感謝を込めて、絢は告げた。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
寺岡志乃
シナリオタイプ(らっポ)
ブロンズシナリオ(100)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
20人
参加キャラクター数
11人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2022年04月25日
参加申し込みの期限
2022年05月02日 11時00分
アクション投稿の期限
2022年05月02日 11時00分
参加キャラクター一覧
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