改造版・ねこっこ☆モンスター｜リアクション

改造版・ねこっこ☆モンスター

　広場の噴水でピチピチと鮪が跳ねている。
「二人とも仲良くしてねー」
　その鮪に向かって、琴村嬢は手を振った。
　琴村はサカナユウと自身のろっこんで召喚した大間さん（鮪）を遊ばせているのだ。
「こうしてみると兄弟みたいだねー」
　マグロフォルムのアキカタナとマグロの大間さんを眺めては、楽しげに笑い声を上げる琴村。
「お、い、くる、じ、」
　しかしサカナユウは苦しそうだ。
　というのは、彼は未だロープで拘束されたまま。
　その上、着ぐるみが水を吸っているので、溺れる一歩手前というわけだ。
　だがしかし、噴水はさほど深くないため命に別状はないようだ。
「そろそろ、お散歩しよっか」
　琴村はロープを引っ張った。
　サカナユウがなにか言っているようだが、その言葉を無視して、お天気の下、のんびり歩きはじめた。
　大間さんとは別れて、二人は公園を散策する。
「サカナユウ、気持ちいいね」
　琴村は自身が濡れるのも厭わず、サカナユウに抱きついた。
　たゆんたゆんと揺れる爆乳を押し付けながら。
　普段であればサカナユウは鼻の下を伸ばして、「お、おいやめろよ」と言うところだったが、今の彼にそんな気力はない。
　無言を照れだと好意的解釈した琴村は、彼の腕に自身の腕を絡めた。
「へへ、デートみたいだね」
　琴村が頬を染める。
　たしかにロープで拘束中でなければ、そう見えるかもしれない。
（こういうのって、リアルでできないから、ここで思いっきりするんだ！）
　サカナユウが前方不注意気味のためつまずこうが、ロープで引っ張られて苦しもうが、隣で変な乙女がポーズをとっていようが、琴村はそんな細かいことは気にしない。
　彼女はただただ全力で、この時間を堪能した。

「先生、勝手に僕の命令を無視して花壇でポーズ取るの止めて下さい！」
　琴村たちが通り過ぎるのを見送ってから、逆巻天野は声を抑えてフジコヤマに命令を下す。
「うふ」
　フジコヤマは笑って誤魔化すだけ。
「くっ……」
　逆巻の拳が震えた。
　逆巻も相手が富士山権蔵であればここまで大変な目にあうことはなかっただろう。
　しかし彼女は改造者の意図をふんだんに盛り込まれたフジコヤマである。
「……マッスルポーズは許せても、寝そべってカモーン状態の貴方はなんだか許せないッ」
　多少気持ちが大きくなって破廉恥な行動をしてしまうようだ。
　逆巻は怒りゆえなのか、目眩がするのか、頭を抱え込んだ。
「……イライラしますね」
　どうやらどちらもらしい。
「ムラムラするの？」
「ムラムラはしてないってば！」
　逆巻はどっと疲れたというようにベンチに腰掛けた。
　すかさずフジコヤマは隣に座りに来る。
「くっそ……本物の先生ならこんなキャラとは違うはず……！」
「そうよ、アタシはアナタ専用のフジコヤマだから、フジコちゃんとは違うわ」
　嬉しそうに肯定するフジコヤマを見て、逆巻はますます頭を抱え込むのだった。
（本物とはちょっと、違うはず……だ。多分）
　こみ上げてきた不安感。
（相性悪いのかなぁ）
　逆巻は無意識に隣の人物から目をそらした。
　と、その先にはフジコヤマを使って戦っている人々――握利平と響タルトが。
「フジコ！　マウスロォオック！」
「な、なんなのそれ!?」
　そこで繰り広げられるは、恐ろしい光景。
　逆巻はあまりの恐怖に目をそらせなくなってしまう。
「ああ、なるほど。僕もああなるのか……」
　彼を襲い来るのは絶望感。
　戦う相手をうまく見つけられない場合、『ああ』なるのは自分に違いない。
　逆巻は空に向かって叫んだ。
「すいません！　チェンジで！」