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風鈴の音に耳をくすぐられながら
深倉 理紗子
が手にしたのは、朱の外皮の葉脈だけを残した透かしほおずき。
(とても綺麗)
外皮よりも赤い実を夕陽の空にかざして眺め、白い頬を淡く緩める。
(これでお姉ちゃんに会えるの?)
透明セロファンの袋に入れて貰った透かしほおずきを片手に提げて眺めやるのは、お社よりも奥に位置する耳福池。屋台がひしめく境内からは見えない静かな池のほとりへ、今すぐにでも向かいたい気持ちはあるけれど、
「夜までにはまだ時間があるよね」
傍らに立った
深林 真瞭
の言葉に、理紗子は小さく頷いて返す。
──ほおずき市で買ったほおずきを手に夜の耳福池に立てば、ほおずきがふわりとあかい光を放つ。水に宿った光が消えるまでの束の間だけ、亡くなったひとと相まみえることが叶う。
宿直勤務の合間になんとなし眺めていたSNSで知った噂を、頭から信じ込んだわけではなかった。夏になれば流行り始めるありきたりな怪談話だと、最初はいっそ微笑ましいような気持ちだった。
(でも……)
もしも、と思ってしまった。
もし、亡くなったひととの邂逅が本当に叶うのならば。
(お姉ちゃん)
七年前にこの世を去った大好きな姉──紗智子の笑顔が瞼の裏に浮かんでしまえば、もうどうしようもなく噂を信じたくなってしまった。
(生きていれば三十四歳、……)
いけないことだと理解していながら、死んだ人の齢を数えてしまう。生きていれば、と考えてしまう。
(でも、お姉ちゃんはあの日から……)
七年前のあの日に、姉の時間は二十七歳で永遠に時を止めてしまった。
「売り子の浴衣可愛いよね。私たちも浴衣着たらよかったかな」
姉のことを思ううち、知らず表情が硬くなってしまったのかもしれない。顔を覗き込んで軽口をたたき、緊張をほぐそうと微笑みかけてくれる真瞭の存在がありがたかった。
「ありがとう、まーちゃん」
淡く微笑み返してはみるも、どこか硬いままなことも、どこか上の空なことも、付き合いの長い親友にはお見通しであるのかもしれなかった。
「一緒についてくからね」
おどけた仕草で手を繋いでくれる真瞭の手をぎゅっと握り返す。そうしながらも、
(あの噂、本当かな……?)
ぐるぐると考え続けずにはいられない。
きっとひとりであれば、ほおずき市に来ることもせずに思い悩むだけだった。
──じゃあ、一度試してみる?
話のついでにとSNSの噂を口にしたとき、真瞭がさらりと言ってくれなければ。
代休であった己はともかく、真瞭は立て込むスケジュールを調整して時間を捻出してくれた。ふたりで、ほおずき市を訪れるために。噂を確かめるために。
手元の透かしほおずきを見下ろし、並んで歩いていてくれる真瞭を見遣る。ありがとうを繰り返す代わりに、握った手にぎゅっと力を籠めると、真瞭はなんだかくすぐったそうに笑った。
「腹ごしらえしよっか、りさちん。たこ焼きとか食べちゃう?」
ほおずきの屋台をひやかし、風鈴の音に耳を澄ませる。深くなってゆく空の色を見上げながらふたりでかき氷やたこ焼きを分け合い、境内を行き交う人波を眺める。
(りさちん……)
ふたりで夜を待ちながら、真瞭は傍らの理紗子を見つめる。
(りさちんは本当に紗智子さんのことを慕っていたもの)
理紗子の両親は、優秀な長男と長女と理紗子を比較し続けた。外から見ればそれは親として末娘に奮起を促すつもりであったのだろうけれど、理紗子にとってそれは苦痛でしかなった。両親の無遠慮な言葉は理紗子から家での居場所を奪うばかりだった。
傷つき萎縮する理紗子の、家での唯一の味方だったのが紗智子だ。
(私にもよくしてくださった)
いつだって優しく微笑んでくれた。妹に掛けるのと変わらぬ優しい言葉をくれた。
ゆるゆると暮れて行く夏空ばかりを気にする理紗子の視線を追いながら、真瞭は心から願う。
(噂が本当でありますように)
現実にはあり得ない不思議なことであっても、この寝子島であれば、きっと──
夜空と同じ色した水面の真ん中には、ぽつり、白銀の月がひとつ浮かんでいる。
昼間の蝉時雨に代わり、鎮守の森に響くは虫と蛙の声ばかり。
ほおずき市の賑わいは遠く、辺りにふたり以外のひとの気配はない。
「りさちん」
「……うん」
耳福池のほとりに並び立った真瞭に促され、理紗子はセロファン袋の中から透かしほおずきを取り出した。両手にそっと乗せ、夜風に漣を揺らす池の水面を見つめる。
(お姉ちゃん)
祈るように姉を呼んだ途端、ふわり、てのひらの中のほおずきが鮮やかに赤くも柔らかな光を放った。夕の色にも炎の色にも見える光が水に丸く映り込む。
言葉を失い目を瞠るばかりのふたりの前、あかい光の裡にひとの姿が映り込んだ。
「紗智子……おねえちゃん?」
水の中から浮かび上がってくる見覚えのある影に、理紗子は呟く。その名を口にした瞬間、涙が溢れた。
「本当に……」
手を伸ばしても遠い水面に佇む姉には届かない。けれど確かに、そこに立っているのはもう二度と会えないはずのひとの姿。
「本当にお姉ちゃん、なの……?」
微笑む姉の姿を見つめたまま、悲鳴にも似た泣き声が涙に濡れた唇から零れた。それきり、理紗子は言葉を失う。話したいことはたくさんあった、聞きたいこともたくさんあった。それなのに、もう、言葉も出ない。
「りさちん……」
子どものように泣きじゃくってしまいそうな口元を抑え、その場に泣き崩れてしまう理紗子の背を擦りながら、真瞭はもらい泣きに滲む視界を頬を指で拭う。
「紗智子さん」
理紗子と同じひとの姿をその瞳に映し、真瞭は理紗子の姉の名を呼ぶ。
水面にきらきらと揺れるあかい光の中、懐かしいひとはいつかと変わらぬ微笑みを浮かべていた。
(紗智子さんだわ)
もう居ないひとへの想いに胸を締め付けられながらも、真瞭は理紗子の背を支える。
「りさちん、紗智子さんに何か言いたいことある?」
今伝えなければ、この先伝えることは出来ないかもしれない。
励ますように理紗子の肩を叩き、理紗子の顔を上げさせる。
「お姉ちゃん……」
あかい光に泣き濡れた頬を照らし出されるまま、理紗子は亡姉を見つめる。真瞭を見て泣き笑いの顔をする。
「私たち、私たち……」
口元を抑えていた手は、姉ではなく真瞭の手を包んだ。
「本当にダメだよね。せっかく会えたのに泣いちゃうなんて」
一度話し出してしまえば、言葉は止まらなかった。亡姉に対する気持ちも今の自分についても、自分と親友についても、──たくさんたくさん話した、気がする。
てのひらの真ん中に、透かしほおずき。
あかい実を宿したほおずきを見下ろし、光の消えた水面を見遣り、ふたりは顔を見合わせる。大好きなひとと束の間の邂逅を果たして、けれどそのひとはもういない。
白銀の月が映るばかりの水面を眺め、蛙の声が響き渡る池のほとりにふたりは立ち上がる。手を繋いで、幽冥の境から現世への道を辿る。
大好きなひとはもういない。
それでも、あたたかな記憶だけはふたりのうちにしっかりと宿っている。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
5人まで
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
定員
1000人
参加キャラクター数
23人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2022年04月09日
参加申し込みの期限
2022年04月16日 11時00分
アクション投稿の期限
2022年04月16日 11時00分
参加キャラクター一覧
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