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「ああ、そうだ」
駅舎を出たところで道哉はぽんと手を打った。
「お出かけならお洒落をしようか?」
「おしゃれ?」
駅員姿の似合うきなこだが、これは仕事着であってよそ行きではないだろう。
「きなこ、櫛をもってるかい? きなこのお母さまの櫛だよ」
「あったとおもう」
ふたりは駅に戻り、駅長室と書かれた木製の扉をひらく。古めかしい部屋だった。クロークは木製だがそれ以外の家具はおおむね鉄製で、机には錆が浮いている。
きなこが机に手をかざすと、ばねじかけみたいに引き出しが出てきた。はたして朱塗りの櫛が収まっている。
借りるよ、と断って道哉は櫛を手にする。つげ材を使った高級品だ。年代ものだが、朱塗りもほとんど剥げていない。かつてなら一財産だったろう。
「これは幽体ではないね。実在する櫛だ」
「うん」
「念じたら幽霊でも実物にふれたり、干渉できるんだろう?」
「できるよ」
だったら、と道哉は言う。
「きなこが実体になりたい、と思えば、一時的でもできるかもしれない。つまりこの櫛を使える、ってことだよ。眠らしておくなんてもったいない」
やってみないか、と道哉は笑みを浮かべた。
「今風に言えば、ちゃれんじすぴりっとだよ」
「できる、かな?」
「全身いきなり実体化はむずかしいかもしれない。だからまず、髪に意識を集中して」
「かみに……?」
「そう、栗色のその髪を、櫛がなでつけていくところを想像して。思い浮かべるんだ、さらさらとした触感を。ときどき櫛の歯が、ひっかかって引っ張られる感じを」
きなこは目を閉じた。無想じゃない。思い出そうとしているのだ。失った記憶のなかの感覚を、ゆっくりと。
道哉は櫛を上下させた。ただ映像の上をなぞっているようだったものが、やがて、かすかながら抵抗を受けた。
「やった!」
「その調子だよ。どんどん集中して。実体がもどったら、私が髪を結ってあげよう。これでも達筆だし花冠も作れるんだ。腕には安心しなさい」
道哉の言葉が実現するまでに、あともう数分の時間を要した。
愛おしさをこめて丁寧にとかしたうえで、仕上げに頭を優しくなでる。
「できあがり。見てご覧」
鏡をさしだす。
人間界の遊園地には、お化け屋敷なる見世物小屋があるそうだ。
古今東西のお化けが出てきて、見物客を怖がらせ楽しませるという。道哉が調べたところによると近年では、そういうものを『あとらくしょん』とか『あみゅーずめんと』とか言ったりするそうだが、要は人の、恐い物見たさを満足させてくれる小空間ということだろう。
ところが霊界遊園地は、いわば敷地内すべてがお化け屋敷だ。怖がらせるしかけには事欠かない。
「あれのりたい!」
きなこが指さす『ろーらーこーすたー』なる乗り物は、激しく高速で上下して乗客の絶叫をしぼりとる趣向だが、霊界遊園地のそれは人間界とは一味ちがう。なにせときどき、本当に車輪が路線から外れてしまうのだ。宙返りの途中で上下逆さで止まったり、なぜか乗客の首がすぽんと抜けたりもすることもあるらしい(あやかしだから平気だが)。すりる満点とはまさにこのことだ。
「どれ、ひとつ怖がらせてもらうとするか」
余裕で乗りこんだ道哉だが、無事乗り物がが停止するまで、ずっと真顔で帽子を押さえていた。
「あれも!」
今度はすりると無縁、回転木馬なる穏当な乗り物だ。
「かわいいものに乗りたいんだな。結構結構」
ところがさっぱり結構ではなく、馬は骸骨だししかも勝手に動くし、出刃包丁を握った裸の大男がうろうろしているしで、道哉は肝を冷やしっぱなしだった。
茶椀みたいな乗り物は超弩級の高速回転をするし、ばんじーじゃんぷなる飛び込み台は紐が切れているし、安全そのものに見えた空飛ぶ絨毯も、乗っている途中で支柱が折れた。
「たのしかったね」
「……そうだな、もやもやした気持ちは吹っ切れたような気もするよ」
休憩を取りふたりは、園内の食事処できなこもちをつついている。
きなこの髪は道哉が束ねた。左右の側頭部に半分ずつまとめて編んでいる。いわゆるシニヨンなのだが道哉は呼び名を知らず、便宜的に『お団子』と呼んでいた。くりっとした顔立ちがひきたつ編みかたで、きなこも大いに気に入った様子だ。
こればかりは怖がらせ要素はなかった。もちはつきたてみたいにやわらかく、黄色いきなこと白い砂糖はたっぷりで甘く、熱いお茶とのとりあわせも見事の一言だ。
きなこは、どんな子に育ったんだろうな。
ふと、道哉は思う。
目の前できなこもちを頬ばる少女は、せいぜい六歳くらいにしか見えない。言動もその年頃相応だ。でも実際、きなこは七百年近く生きている。単純計算でも、道哉の四倍を越える年月をその丸い目で見てきたのだ。
しかしあやかしの身の哀しさ、きなこがこれ以上成長することはない。時計は止まったままだ。彼女に『この先』は永遠に訪れないのである。
そのままのきなこも可愛らしいが……育ってほしかったな。
背はどれくらい伸びただろう。それほど長身になる想像はむずかしかったが、案外しゅっと伸び、道哉と肩をならべるほどになったかもしれない。
どんな形でも生きて、生きがいを見つけてほしかった。
誰かと結ばれ子をなしただろうか。孫に囲まれる余生を送っただろうか。
土にまみれ額に汗して働いただろうか。学問に道を見出し書に囲まれただろうか。
わからない。ぜんぶ可能性にすぎない。
でも始まったばかりの人生が、枯れ枝みたいにぽきりと折られなければ、きなこにはあらゆる道がありえた。未来がひらかれていたのだ。
あの時代に生まれたのが不運だったのか、どうしようもなかったことかもしれないが、きなこの命は散らすものではなかったと私は思う――。
「どうかした、みちちかくん?」
きなこが道哉を見ていた。もちは食べ終えたようだ。
「……いや、なんでもない」
「よかった。きゅうにだまってしまったから」
「ぼんやりしていただけだよ」
行こうか、と道哉は立って手を差しのべた。
「ありがとう」
きなこは手を取る。
閉じられた可能性について、思いをめぐらせても詮無きことだ、と道哉は考える。
それよりも、と言いたい。
きなこには、あやかしの今を満喫してほしいな。
なぜだかきなこの面影に、道哉は自分の、かつての飼い主を重ねていた。
あの子のように、不幸せな目に遭わせたくない。
寝子島の中心街、シーサイドタウンで服を買った。
もちろんきなこの服である。この頃にはきなこも実体化になれて、下半身もちゃんと足を生やしていた。ブラウス、ノースリーブ、数点ためした結果、水色の縦縞が入った白いワンピースに落ち着いた。足元は竹のサンダル、バッグは籐の籠、少々レトロだが趣味にあわせた結果だ。衣装にあわせてリボンも水色に変えた。よく似合った。
「しましまだね」
嬉しげにきなこが言う。
「しましまだね」
懐手して道哉が応じる。ふたりは、ストライプという言葉になじみがない。
そのまま写真館にも行った。実体がない状態なら別だが、現状ならきなこもきちんと写真に姿が残る。
「なんの記念日で?」
写真家が訊いた。そういえば、何も考えていなかったことに道哉は気づいたが、
「たんじょうび!」
いち早くきなこが応えてくれた。
「なるほど、うん、そう、誕生日だよ」
本当はぜんぜんちがうのだが、口実としては穏当なところだろう。ここまでは納得できた道哉だが、写真家のつづく一言には仰天するほかなかった。
「じゃあお父さんもご一緒に写りますか?」
「お父さん!?」
変な声が出てしまった。
まあ、現代の若者らしい服装でないことは自覚していたけれど……そんなに老けて見えるかな。
いささか傷心である。背後に隠していた二本の尾が、ぴんと立ってしまったくらい。
でもきなこはよくできた子なので、ちゃんと口添えしてくれた。
「おとうさんじゃないよ。おにいちゃん、だよ」
「そ、それは失礼しました」
いえいえ、と道哉はほほえんで頭をかいた。
「年の離れた兄なので」
ないすふぉろー、だね。
次は海岸に行ってみることにしよう。
夏の昼間は長くとも、やがて陽が暮れるのは避けられぬところ。
シーサイドタウンに戻ってきたところで、きなこの希望に応じて居酒屋に入った。それも全国チェーン店、全品統一価格という激安焼き鳥屋だ。
「いいのかい? もっと高級店でもよかったんだが」
「いいの。おとなのいざかや、いってみたかったから」
「大人の、ねえ……」
まだ開店早々なので客はまばらだ。大人の、といえば立派かもしれないが、激安店ゆえかアダルトな雰囲気はあまりない。大学生くらいのグループとか、老人会みたいな集団もいたりする。二組ほど家族連れもあったりして驚いた。例によって『すまほ』をずっといじっている者もいたが、これはもう現代人の宿命だと思うことにする。
「それじゃ」
「かんぱーい」
六百九十九歳に未成年という言葉は適用すまいが、見た目が六歳なのでさすがに酒類は頼めず、きなこの分はジュースを小さいグラスについだ。麦酒はお腹がふくれるから、と道哉は冷や酒をあおる。
間もなく炭焼きの焼き鳥が運ばれてきた。ねぎ間、皮、胸肉につくね、レバー、手羽先、砂ずりとさまざまだ。こんがりいい色をしているうえ、空腹を刺激するタレの香りがたまらない。
「いただきまーす」
さっそくひとつを手に取って、串から直接ぐいっとかじり取り、あちあち、ときなこはえびす顔になる。
「おいしい、とってもおいしいよ。おとなのあじだね」
「そうかい? じゃあ私もひとつ」
道哉は豪快な食べ方がうまくできない。箸でいちいち串から外して口に運んだ。なるほど案外いけるものである。焼き具合も最適で肉がやわらかい。鳥の部位によって味や食感がまったく異なるのも新鮮な驚きだった。
「今日はつきあってくれてありがとう」
「わたしこそ、おれいをいいたいよ。みちちかくん、わたしのねがい、ぜんぶかなえてくれたから」
お安いご用さ、と告げて道哉は冷やを口に運んだ。
「私もくつろげたから心配ないよ。こんな日もいいだろう。きなこと過ごす時間を気に入っているんだ」
また行こうな、と道哉は言った。
また行きたい、ときなこもこたえた。
今度足を運ぶなら星幽塔か。
あるいはあの写真館で、今度はきなこの花嫁衣装を撮ってあげたい気持ちもある。
不幸な思い出があるのなら、上書きすればいい。
そうとも、あやかしには、そのための時間はいくらでもあるのだ。
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グループ参加
2人まで
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日常
オールジャンル
定員
5人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2022年03月21日
参加申し込みの期限
2022年03月28日 11時00分
アクション投稿の期限
2022年03月28日 11時00分
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