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明日(あした)はきっと風の中
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しずかに深く吸いこんで、肺にためてから細く長く吐く。紙巻きよりずっと難しいが、こつさえつかめばずっと楽しい。
これが煙管(きせる)の味わいかただ。吐いた煙は空に溶け、大きな白い雲と一体になる。
さて今日は何をしようか――。
朽ちた廃寺の敷地内、古びたお堂の入り口に腰かけたまま、
三毛谷 道哉
はまた一条の白い煙を、たなびく雲の材料に供していた。
蝉の声がきこえる。古木のあいだをこだましている。
どうしたものかとまた考えてみる。ところが考えがまとまらない。
まあ、無理にまとめる必要もない。
それなら風に聞いてみよう。煙管を消して道哉は立ち上がった。歩きながら考えるのもいいだろう。そぞろ歩いているうちに妙案も浮かぶかもしれない。浮かばなければそれもまた一興というものだ。風の吹くまま気のままに。
急ぐことなどないのだから。人間たちとはちがって。
墨染めの和服に木綿の羽織、これが道哉の夏の装いだ。頭には山高帽、腰には扇子、足袋に草履で音もなく歩む。
いま道哉が歩いているのは、人間が暮らす寝子島だろうか。
それとももうひとつの『寝子島』、すなわち霊界だろうか。
とくに道哉は意識していない。
霊界と人間界との境界はきわめて曖昧だ。とりわけ寝子島においては。
現世の人間が、入ろうとして霊界に入ることはむずかしい。意図して境界――世界線を越えようとしても、その世界線のほうが姿を見せようとしない。近づく人間をこばむし、存在しないふりをする。
ところが意図のない、それどころか霊界の存在すら知らないような人間が、ふとしたきっかけで世界線を越えて霊界に入りこんでしまうことはままある。いつもの通学路、ぼんやりと下校していてふと、見知らぬ場所に立っている自分に気がつく。あるいは見慣れた建物に、見知らぬ扉を見つけてしまう。これが異世界だと気がつく者はまだ幸いだ。急いで来た道を戻ったり、扉を無視してやりすごせば、いつのまにか元通りになっている。しかしときとして人は気づくこともないまま、霊界で一昼夜を過ごしたりもする。まるで夢のような時間をすごして、目が覚めてみると寝子島の、反対側の端にいたりするのだ。仰天して体験を語ろうとも、現代なら健忘症を心配され、昔なら狸に化かされたと笑われるのがおちだろう。
もちろん以上は人間についての話だ。道哉のようなあやかしにとって、ふたつの世界を行き来することはたやすい。ぼんやり歩いているといつの間にか人間界にいるし、あくびをして周囲を見わたせば霊界だったりする。とうぜん霊界のほうが居心地がいいが、この頃は人間界もいやではなくなってきた。
人通りが多い。人間ばかりだ。
それでようやく、道哉は人間界にいることを認識した。街の中心部あたりだろう。
それにしても人間というのは、とため息をついた。
競歩選手みたいにせかせか歩く会社員風の男性がいる。何を急いでいるのか光線のような速度で、大きな自動二輪車(乗り手は若い女性のようだ)が駆け抜けていった。
忙しそうにしているものだ。誰も彼も。
その象徴が、彼らがいつもいじっている小さな機械だと道哉は思う。
彼らがやたらとかまぼこ板のようなものを手にするようになったのは、せいぜいここ二、三十年くらいのことだろうか。携帯電話というのだそうだ。からくりはわからないが道哉にもなじみのある電信機の、もっとずっと小型でつかいやすいものらしい。携帯電話は板状の姿から二つ折りの手鏡みたいなものに姿を変え、最近では『すまほ』とかいう印籠みたいな形状にかわった。
この印籠を人間は見ている。年中見ている。
霊界線ではないほうの電車、『ねこでん』に乗るとその傾向は顕著だ。せっかく窓の外には美しい光景がひろがっているというのに、彼らは窓の外を無視して、あちらでもこちらでもすまほを見ている。暇さえあればこちょこちょと操作してもいる。ひどいときなど横一列七人がけの座席の、自分以外全員がすまほを見たり操作したりしていた。
楽しいから見ているようには、道哉には思えなかった。みんな暗い表情をしているから。むしろ彼らはすまほに命令され、見ることを強いられているのかもしれない。
米や小麦という植物は生命力が弱く、人間の世話がないとたちまち枯れてしまう。だから彼らは生存戦略として、人間に自分たちの世話を強いているのだ――そんな説を聞いたことがある。だとすればすまほというのも、人間を使って生き延びようとしているのだろうか。
けれど道哉の想像は、ここでぷつりと途切れることになった。
花緑青駅。
なじみのある駅にたどり着いていたのだ。人間界のつるりとした駅舎ではない。古くて、暗くて、おどろおどろしくて、だからこそ好きにならずにいられない駅、寝子島電鉄・霊界線、その心臓部たる駅だ。
霊界に戻ってきたようだね。
花緑青駅といえば――。
今日するべきことが見つかった。
いたずら心が鎌首をもたげ、道哉はひとり、くすっと笑う。
花緑青駅はいつも薄暗い。煉瓦道は湿って冷たく、どこからか断続的に雫(しずく)のしたたる音も聞こえる。焦げのような、カビのような匂いにまじり、鐵(てつ)をこすったような匂いもする。人工的に明るいよりも、このほうが旅の発着所にふわさしかろう。その旅が、来し方も行く末もわからぬ、霧のなかを往くようなものならばなおさらに。
いささか大ぶりの駅員帽子、赤と黄色のラインが中央に走るクラシックなデザインだがエンブレムはしゃれこうべだ。これを浅くかぶって今日も
餅々 きなこ
は、駅員の仕事に精を出す。服も駅員のそれだった。ちゃんとワイシャツも着て、真っ赤なスカーフを胸元に巻いている。けれども腰から下の実在がいささか心もとなく、存在するのかしないのかはっきりしない。絵の具を塗り忘れたみたいに消失しているのだ。もちろん地に足をつけて立つわけではなく、風船みたいに浮いていた。
「はい、きっぷだしてね。はいどうぞ」
霊界線に自動改札なんてない。ずっとかわらず人力の改札鋏(かいさつばさみ)だ。きなこは乗客の切符にしるしをいれた。煉瓦造りの広い構内に、入鋏(にゅうきょう)の音がこだました。本日の改札鋏の切り口は、右側がやや深いM字型だ。
「きょうもごりよう、ありがとう。じかんどおりにしゅっぱつするよ」
といっても人間界の路線とちがい、霊界線の利用客はまばらだ。何枚か入鋏するとたちまち手持ち無沙汰になって、きなこは鋏を閉じてひらいてしている。
「きゃ!?」
そんな状態だったから本当に驚いた。
きなこの目の前に猫が一匹、ぽとりと落ちてきたのである。どこからきたのか白黒茶色の三毛猫、空中で身を反転させ、したっと音もなく改札に乗った。にゃあと鳴く。顔だちからしてオスだ。オスの三毛猫とはめずらしい。きなこは気がついた。オスの三毛猫というだけでも特別なのに、なんとこの子は尾が二本生えているではないか。
「私だ」
猫又は笑った。いや、もう猫ではなく、道哉の姿になって改札に肘をのせている。
「ああ、みちちかくん」
「たまにはあやかしらしく驚かしてみたくてね」
「びっくりしたよ」
「それは嬉しい」
あやかしにとっては最高のほめ言葉だ。
ところで、と道哉は目を細めた。
「今日はきなこを誘いに来たんだ」
「どこへ?」
「きなこもち食べにいくぞ。あのとき、約束したろう?」
あやかしの世界に過労死はない。皆勤賞もないし賞与査定だってない。仕事はやりたいからやっているのであって、やりたくなければやめていい。途中で飽きるのだって、普通だ。
だからきなこは改札から出て、
「いこういこう」
と道哉にしたがった。駅長の責任がどうこうという野暮は人間界の話だ。改札仕事は誰か気が向いた人がひきつぐだろう。そうして、
「きなこもち」
唄うように言うのである。
「きなこもち」
もう一度、今度は音程をかえて。
「今日はきなこの気が済むまで付きあってあげるよ」
「ほんとう?」
「ああ、最近いろいろあったからね。骨休みしようじゃないか」
いろいろ、の主たるものは幽霊マンション『Y』にまつわる怪事件となろうか。夜刀神との遭遇とその結末は、道哉の心に冷ややかな爪跡を残した。きっとそれは、きなこにとっても同じだろう。いや、もっと深いかもしれない。
「個人的にも心機一転……りふれっしゅというものがしたくてね」
人を襲う鎌鼬(かまいたち)と対決した。ふらちな鏡の妖怪とも。狐と狸の化かし合いに客として参加するなど、楽しい記憶ももちろんあった。これまでにくらべると、なんともにぎやかな昨今ではあった。
「だからのびのびとしたいことをしよう。どこに行きたい? 霊界遊園地か? 寝子島を散歩か? 記念写真を撮ってもいいね。なんでもいいんだよ」
「うーんとね……」
だったら、と元気にきなこは言ったのである。片手をあげて一言、
「ぜんぶ!」
と。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
日常
オールジャンル
定員
5人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2022年03月21日
参加申し込みの期限
2022年03月28日 11時00分
アクション投稿の期限
2022年03月28日 11時00分
参加キャラクター一覧
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