レディ・ロゼッタの運命考察｜リアクション

レディ・ロゼッタの運命考察

　八神修の下から放たれた情報は、メールに乗って島野夏帆やジニー・劉に届く。さてそのジニーは、見事拉致から逃れたという但野の居場所を突き止めていた。面会謝絶であったのは、錯乱・譫妄状態がひどかったためであり、身体的に問題のなかった但野は翌日には帰宅していたのである。玄関先ではジニーと男の押し問答が続いていた。
「も、もう帰ってくれ。俺は何も知らない。あんた警察でも何でもないだろ！」
「あぁん？　ちょっと聞きてぇことがあるだけだよ」
「し、知らない！　知らない！　この件については俺は被害者だぞ!?　あいつが、あいつがそうだあいつがあいつが」
『あいつ』と言葉にした直後、但野の体はがたがたと震えだす。壊れたプレイヤーのように同じ言葉を繰り返し、冷や汗を流し始めた。ジニーは小さく舌打ちする。
「ったく。壊れた電化製品かよ……。なら、こうすれば直るはずだ、……な！」
言うや右ストレートが男の頬に食い込んだ。どうと音を立てて肥満の中年男は廊下を滑っていく。
「ちょっと！　やりすぎじゃないの？　傷害よ、傷害」
軒先に隠れた夏帆がジニーをどやしつける。ジニーは「しょうがねぇな」と一人ごちると、倒れたままの但野を抱え起こした。
「おいおい、しっかりしろおっさん」
「ああ……うぅ、お、思い、出した……」
「マジかよ!?」
殴ったジニーの方が驚く。但野は頬を真っ赤に腫らしながらも、「おかげで目が覚めた」と自発的にジニーに情報を提供し始めた。但野は「逆立ちしている間だけ目立たなくなる」という能力を悪用した窃盗犯だった。養護施設の金庫を狙ったところで転んで姿がばれて逃走し、警察に御用になる前にセブンに拉致されたのだという。
「なんだかやたら小柄な小僧だったが、確かにセブンと名乗ってた。灯油かぶってんじゃねぇかってぐらい臭くって……。秘密裏にもれいびを全員、この世から消し去ることが目的だとか言ってたな。俺たちはその礎になるんだって言われて、ナイフが光って、それで……」
「もれいびを消すだって……？」