レディ・ロゼッタの運命考察｜リアクション

レディ・ロゼッタの運命考察

　灰色の長い髪を持つ少女、エレノア・エインズワースは、昨夜届いた吉祥寺黒子からのメールをさも愉快な読み物でもあるかのように読んでいた。
『菜々緒と俺、あと他の連中で女子会するんだ。楽しみでしょうがねーぜ！　あさって茶屋『紗乃香』に集まるんだ』

エレノアはメールを読み終えるとくすくすと笑う。彼女の手の中にもまた、薄紫色の招待状があった。
「ふふふ。おもしろいことを思いつきました。魔女には魔女をぶつけましょうか？」

　皮肉なる冷笑をたたえた美少女を、黒衣の女占い師は興味深そうに見つめた。
「お話を伺うわ。占いのご希望があるならそれも承るけど」
エレノアはまなざしで、それには及ばないと告げる。人に自分の運命を見せてもらう必要などないのだ。
「私は二人のセブン容疑者を知っています。片方をX、もう片方をN――こちらは白いワンレングスに碧眼の女生徒です――としましょう。Nは他の誰かが連れてくるでしょう」
「N、ね。おそらくその人と私は近いうちに会えるはずよ。合っているわ」
「誰が本物でもよいのですが、知らぬところで犯人当てが終わってしまうのも業腹です」
エレノアは挑むような視線を投げかけた。
「それに、尋問って容疑者を並べて行うものでしょう？」

「お久しぶりですね。今日はおもしろい催し物を案内させていただこうかと思いまして」
「へえ。刺激が欲しかったところなんだけどさ……期待しちゃっていいの？」
エレノアと話すのは、攻撃的なタトゥが体を覆う、奇抜なファッションの女性。以前のセブン事件で知己となった、レディ・ウルフと呼ばれる女性である。一度偽セブンの容疑者となったこともあった。エレノアの用意する容疑者『X』は彼女。相手の表層心理を読み取ることができるろっこん『心象透察（スキャニング）』の持ち主だ。
「"あの日"の録画を見て、セブンに会いたいとおっしゃっていたでしょう？」
「ええ。あんな常識に囚われない、アナーキーでアグレッシブな存在、興味がわかないはずがないでしょ」
「実はこの島に先日から怪しげな占い師がやってきていましてね。彼女はセブンに対面したいと言っているんです。しかも、どうやら本物のセブンが来場する可能性も高い。どうです？　あなたも現場においでになって、セブンと占い師、両方の真意を暴いてしまうというのは」
「いいわねえ！　ゾクゾクするわ」
案の定、レディ･ウルフは乗ってきた。エレノアはひとりほくそ笑む。
「暴いた後は、お好きなように。危ないときは私が守りますから」