忘れられた大木の大蛇伝説！｜リアクション

忘れられた大木の大蛇伝説！

　大蛇の牙が真央に襲いかかる。
「まずい――！？」
　飛鳥が叫ぶ。
　その時、真央の背後から茶色く濁った液体が入ったビニール袋が投げつけられる。投げたのは、草司。
　中身は、真央が吸い殻から抽出したニコチン入りの水。毒であるが、このサイズの大蛇に対して決定打というほどではない。
　しかし、目潰しにはなったようだった。瞬時、大蛇の動きが鈍る。
「今なのだ――！」
　真央は鉈を手に。
「――！」
　零も槍から小刀へ握り替え、再度の攻体勢に入っていた。
　蛇の首に同時に二つの刃が届く。刃は鱗を超え肉を断ち、蛇の頭が落ちる。あっけなく。あまりに簡単に。
　倒れこむ蛇の巨体。瞬間、静寂があたりを支配する。
「あっけないね」
　飛鳥が言う。
「本当です」
　刻人が同意する。
「これで、良かったのか……？」
『かわいそうかも』
　刀と海は困惑している。
「やっちまったな、もう後戻りはできない」
　鋭二がつぶやいた。
「こ、これでよかったのだ……！」
　真央は肩で息をしている。
「これは食べるのかねぃ？」
　瓢が言う。
「どうかな、ちょっと食べたくない感じ」
　草司は頭を振る。
　零は沈黙を保つ。天野もまた蛇の亡骸を見つめている。
　修は背負ったまま連れてきていた月の身体が意識を取り戻すのを感じた。
　細雪はいつの間にか地面に倒れこんでいた。ろっこんの効果が終わり、本体の月のところへ意識が戻っていったのだった。
　再びの沈黙、それを破るように、
「一体何の騒ぎだ？」
　直行が姿を現す。後に続いて、記士郎と羽衣。
「大蛇が――」
　羽衣は言葉を失う。
　その時、蛇の切断面から真っ黒な煙が立ち上る。煙があたりを包んでいく。
「――！？」
　全員が煙に包まれ、そして視界は真っ黒に霞んでいく。