忘れられた大木の大蛇伝説！｜リアクション

忘れられた大木の大蛇伝説！

　情景は、洞窟の中。暗闇に女が一人。真っ暗のはずの洞窟内は、不思議な光でほの明るく照らされている。
　刀は女の顔を目にして、呟く。
「疫病――」
　その言葉通り、女の顔貌は疫病のもたらした疱瘡で醜くなっている。
　女は何事か呟き、立ち上がる。振り向く。
　そこには水の流れ出す穴がある。
「っ――！」
　一同が驚く間もなく、女はそこから身を投げた。それで夢は終わる。
　白い煙は晴れ、再び現在の寝子山に戻ってくる。一同はそれぞれ、今見た光景について考える。
「男の言葉と、女の様子から考えるに、あの女は疫病にかかってしまった。それで住んでいた村から隔離されて、洞窟へ入れられた。でも、あの男は、おそらくこっそりと夜中のうちに、女に会いに来た。出てくるまで待ち続ける、なんて考えていたのかもしれない」
　修の推測に、刻人は頷く。
「おそらく、そうでしょう」
　記士郎がぽつりと呟く。
「どうして、彼女は身を投げたのでしょうか？」
「これは推測だが――」
　と飛鳥は前置きをする。
「あの男は白粉を持ってきていただろう。きっと、彼女は自分の醜くなった顔を愛する男に見せたくなかったのさ。だから白粉を持ってきてもらった。だけど、その間に彼女はやはりダメだと考えて身を投げた――乙女の直感だけど、外れてはいないと思うよ」
「となると、村が消えたのは」
　直行が言う。それを受けて、鋭二が、
「疫病のせいだろう。疫病にかかった女が身投げをした穴は猫又川に通じていた。下流にあった村は、その水を飲んで――」
　修が後を受ける。
「はじめは女だけを洞窟に封印しようとした。けれど、それに失敗したことに気づいた人たちが、村ごと封印することにした……のか」
「しかし、乞龍洞という名だけは、まだ少し解せんでござるな」
　零が呟く。
「なんだか、救いのない話だね……」
　羽衣は肩を落とす。
　その時、雷鳴が鳴った。
　一同は空を見上げる。
　再び、骨から白い煙が立ち上る。驚く一同の前で、煙は形をとり、龍の形になる。すると、黒い煙が一筋、降りてくる。
　二組の煙は、龍の形で絡まり合い、天に上っていく。
「乞龍洞、もしかしたら、本当の名前は恋龍洞……？」
　月の呟きに、羽衣は嬉しそうに頷く。
「もしかしたら」
『うれしそう』
　海はスケッチブックにそう書いた。
　二つの煙の龍は互いに絡み合い、そして天へ立ち上っていく。
　千年の時を超えて、二人の男女が出会うことができた。恋は成就した。そのことをみんな理解した。
　彼らはそれぞれ、思い思いの方法でこの一組の恋人をを供養するだろう。しかし今は、みんな同じ空を見上げている。
　やがて煙は消えていく。雨が降りそうだった。

このページにイラストを設定する

あとがき

担当マスター：豪遊亭平朝
ファンレターはマスターページから！

こうして、みなさんの頑張りによって千年の眠りから醒めた大蛇は想いを遂げて天に帰って行きました。

というわけで、はじめまして、豪遊亭平朝マスターです。落語家みたいな大げさな名前ですね。どうぞ覚えてやって下さい。
今回のシナリオに参加頂いたプレイヤーの皆様方、本当にありがとうございました。
僕が想定した結末を、皆様ほとんど完璧に推理してくださって、アクションを受け取った時は嬉しくなりました。
寝子島にはこれ以外にも隠された伝承や伝説がきっと残っていると思います。
なにしろ、とても不思議な島ですから。
また別の伝承が明らかになる時、その時僕がまた皆様の案内人となれることを願っています。
それでは、またお会いしましょう。

↑ページトップに戻る