九夜山の麓、猫又川の河口(マップではG-6)には一本の寝子杉の大木が立っている。寝子温泉の樹齢四千年の寝子杉には敵わないけど、もう千年も立ち続けているらしいという言い伝え。
その辺りは鬱蒼とした森のなかで人家もなくて、今では誰も近づかなくなった場所だ。大木の背後には古い洞穴があって、いつからあるのかわからない木の柵で封じられている。なんでもその辺りには昔小さな小さな集落があったが、洞穴で何かの事件があって以来、入り口の前に木を植えて、柵で封をしたのだそうだ。そして集落の人たちは洞穴を恐れるように次第に村を離れていき、今ではかつてそこに村があったことは、地域の歴史を記した古文書に微かに残るのみになった。また郷土史の研究者によると、かの集落が打ち捨てられた理由は、何かの悪疫が流行したためとも言うが、よくわかっていない。
ところでここのところの梅雨天気、夕立の度に鳴り響く雷鳴がつい先日、周囲で一番高い木だったその大木に一撃を食らわせた。杉はぽっきり二つに折れてしまった。
それからである。この大木の周辺でおかしなことが起こり始めたのは。
いわく、道端にとっても大きな鱗が落ちていた。夜に何か大きなものが這いずる音が聞こえた。黒くてながーい影を見た……などなど。要するにどうやら今まで見たことのない大蛇がいるようなのだ。
折れた大木の様子を見に行った人によると、洞穴の柵も壊されていたようだった。
どうやら大蛇はかつて言い伝えられていた大木と洞穴にまつわる伝説に関係があるようなのだが、それはすでに忘れ去られている……。
しかし、伝承は断片的には残っていた。なんでも、もしも大蛇が現れたら女は白い服を身につけてはいけないとか……。けれど、それが何故なのかは誰も知らない。ただ、迷信深い老人たちは自分自身や娘や孫に決して白い服を着てはいけないと触れ回っているようだった。
そしてもう一つ。あの大木は名を化粧杉(けわいすぎ)と言って、洞穴は乞龍洞(こいりゅうどう)と言ったようだ。
そうしてついに、大蛇は人里へ現れる。はじめに姿を見せたのは、白昼の小学校。校庭で体育の授業を受けていた小学生たちは、そう、みんな白い体側服を身につけていた。
大蛇の長さはおよそ十メートル、太さは一抱えほど。巨体が黒くうねる姿を目にした子供たちは叫びながら散り散りに逃げ出す。それに驚いたか、大蛇はそのまま猫又川の方へ逃げていった。そして、騒ぎに驚いて出てきた住人たちの目の前で、蛇は折からの雨で増水した川へ飛び込み姿を消した。この小学校までもああして川を泳いでやってきたのかも知れない。ほっと胸をなでおろし、子供たちは異口同音にこう言った。あの蛇は、誰かを探しているようだった、と。
幸いこの時にけが人はなかったが、このままあの大蛇を放っておくわけにはいかない。万一不幸な犠牲者でも出たら大変だ。
そして君たちは、この事件を解決するために立ち上がるのだ。
はじめまして。豪遊亭平朝ともうします。
今回のお話は大木と洞穴に隠された秘密について。大蛇の正体と目的は? 一体大木と洞穴にどんな伝説があったのか? そして自分たちの力で大蛇をどうにかできるか? そのあたりがシナリオの要点です。
大木と洞穴の伝説についてはいくらかガイドにヒントを散らしておきました。伝説の正体について推理を巡らしてみるのも良いでしょう。もちろん、リアクションにて最終的に全ての秘密は開示されますが、真相に迫ったキャラにはいいことがある……かもしれません。
気合入れて頑張りますので、気合の入ったアクションお待ちしております!