忘れられた大木の大蛇伝説！｜リアクション

忘れられた大木の大蛇伝説！

　零、刻人、天野、鋭二、月、飛鳥、刀、海、修の九人は化粧杉と乞龍洞のある山の中腹まで連れ立ってやってきている。
　鋭二が呟く。
「ここまで人の気配はなし、だったが」
「いや、川べりに足あとがいくつか残っていたよ。それに、この辺りにもほら」
　飛鳥が指差すあたりに、足あとが点々と。
「それとさぁ、さっき見つけたんだけど」
　と飛鳥はポケットから純白の鱗を取り出す。
「もしかすると、この辺に大蛇は戻ってきてるかもね」
「なるほど、わかりました！　あとは私にお任せ下さい」
　月が一歩前に歩み出る。折れた杉の前に腰を下ろし、旅行かばんを開く。中から等身大の球体関節人形を取り出す。
「これから私のろっこんでこの人形に憑依します。そして大蛇をおびき出しましょう……ところで、白装束を忘れてしまいました。誰かお持ちでないですか？」
「こんなこともあろうかと」
　と名乗りでたのは修だ。鞄から白いシーツを取り出し、月の人形に被せる。
「ありがとうございます、八神さん。……それでは、済みませんが、私の本体のこと、お願いします」
　彼女は白装束となった人形にキスをする。ろっこんが発動する。
　月が膝から崩れ落ちると同時に、人形が命を得たように立ち上がる。
「常闇……」
　八神が呟く。
「この姿の際は細雪とお呼びください」
　人形が口を開かずに声を出して答える。その声は月のものと同じである。
「わかった。本体は俺が預かろう。細雪の護衛は――」
　修が一同を見回す。
「俺がやりましょう」
　刀が名乗り出る。その背後に、得物の槍を手に、零が立っている。しかし、少し様子がおかしい。
「あー、その、拙者はなぜこんなことに……」
　彼はいつの間にか、白装束を着せられている。それも、純白の花嫁衣装。
「釣りをするならルアーは多い方がいい、だろ？　いやー、しかし美人だね、君！」
　飛鳥が零の背を叩く。
「……その衣装はどこから？」
　修は呆れ顔。
「さあ？」
　刻人は訳知り顔である。
「さて、どこから探していくか……」
　天野がつぶやく。その時、飛鳥が彼の背後を指さす。
「探すまでもないみたいだね――！」
　全員が背後を振り返る。そこには、鎌首をもたげて、白い大蛇。