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路地にころんだ、雨水なめた
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【月の綺麗な夜だから】
「いいすか。姉さんがた」
ファイトクラブにも主催者がいる。金の使い道に困った権力者の道楽だとか、革命家の見込みある闘士を見つけ出すための密やかなテストだとかさまざまに噂はあったが、どれも真実味には欠けた。それでいて主催者は確かに存在し、時に
吉住 志桜里
と
卵城 秘月
へこうして、若い者を通してその意向を伝えてくる。
「せっかくの腕っぷしが、始末屋ばかりというのも興ざめだ。今夜はエキシビジョンも予定されちゃいますがね」
若い男、といっても二人にしてみればずいぶんと年上だ。聞くところによれば本土のいわゆる暴力団組織で、若頭だか舎弟頭だかそれなりの地位にあったものが下手をうち、仲間内に始末されようとしていたところを主催者が拾い上げたらしい。
そんな男が二人の前では腰を低くし、へり下ってびくつきながら頼み込む様は、いささか異様に見えた。
「くれぐれも、本気じゃやらんで下さいよ? アンタらが適当にじゃれ合ってりゃ、客は盛り上がるんだ。なにも必死こいてヤリ合う必要は……」
「だーって、ねえ? 秘ぃ?」
「そうだねえ、志桜里君」
どちらもこれで平時は学生をやっているというのだから恐れ入る。ヤクザくずれの男を、それなりに度胸の据わった裏社会に属する人間を、二人の少女は笑みだけで怯ませる。
「血を見て昂ったら、そりゃあ自分でも止められないもの」
「同じく。ま、そちらの意向はできるだけ尊重するけどね。前向きに善処するよ」
「当てにはなんねえなあ。やれやれ……」
男にはきっと分からないだろう。当人たちにとっても、互いの関係性にはっきりと名付けることはできないのかもしれない。
確かなのは互いがかけがえない存在で、誰よりも壊したい相手であるということだ。
「それじゃ、行こうか志桜里君」
「ええ、楽しみましょ」
まるで洒脱なカフェで紅茶にケーキなど嗜むかのように気安く、今夜の戦いへ赴く。あるいはもう少し大衆的なケーキバイキングのほうがお好みかもしれない。
二人が闇から姿を現すと、喧噪は怒号めいた爆音へと変わった。
志桜里の好みは、折り畳み。できるだけコンパクトに収めるのがいい。
「ハッハァ!」
掲げた拳に握り込まれたそれを表現する言葉はない。もはや原型をとどめてはいないからだ。そこから滴る血をひと舐めしてみせれば、昂揚とともに観衆も沸きに沸いた。
「あーあ、もう折るところなくなっちゃった。あとは潰して畳んで捨てるだけ……結局また、残飯処理になっちゃったね、秘ぃ?」
一人の悲鳴はもうずいぶん前から途絶えている。もう一人を傷める手を止めて、秘月は肩をすくめた。彼女は無造作に折るより、関節の一つ一つを丁寧に壊してくのを好んだ。その過程で触れる肉体とそこに宿る精神の合一と剥離を愛でた。
「私はこういうのも、嫌いじゃないかな。志桜里君の張りつめた肌や筋肉も、こうして酷使されて終わりゆく肉体も、等しく美しいよ」
「ふぅん、マニアックな秘ぃらしいわね」
「君には言われたくないなあ」
「あはは!」
フライドチキンの骨かのようにあっさりと折り曲げ、志桜里は笑う。
二人は始末屋の異名を持ち、概ねそのような役割を主催者より預けられている。どんなに屈強で華のあるファイターも、のめり込むうち身体は壊れ、動きは精彩を欠いてゆく。避けられない必然、誰しも行き着く終着点。客を盛り上げることもかなわない、言わば賞味期限切れとなった彼らに最後の役目を与えるのが、志桜里と秘月。二人を観客らは慈悲の女神と呼んだ。
「よいしょ、っと。さ、お仕事終わり! こっからはお楽しみよね?」
コンクリートへ放り投げた男らはぴくりとも動かず、主催者の指示だろう、音もなく誰かに引きずられていった。その後どうなるのかは二人も、客たちも知る者はない。あえて探る者もなかった。誰も、彼らの末路に興味があるわけではないのだ。
「さ! ヤろっか、秘ぃ♪」
「ああ……そうだね。せいぜい客を盛り上げないと」
無邪気に笑む志桜里へ、秘月はどこか困ったようなはにかみを、相棒へ返した。
それからいくばくか後の夜。コンクリートと人垣のリング。見慣れた戦場、仕事場の真ん中に秘月は立っている。
「……で、今回は、どういう趣向かな」
正面に志桜里。もう待ちきれないとばかり、実に嬉しそうに口元をねじ上げる。
始末するのも、互いに殴り合うのも、共に血を流したのは数知れない。もはや相棒といっていい。しかし今夜のエキシビジョンは、何かが違っていた。
志桜里は歌うように言う。
「だってさあ。最近秘ぃったら始末のお仕事も、私とのエキシビジョンも、何だかぼんやりしてるじゃない? だからエライ人が私に、ね。言ったわけ」
「今日はどうぞ、本気でやってくださいよ。そうすりゃ客も盛り上がらあ」
連絡役のあの男も顔を見せて、言った。
なるほど。秘月は得心してうなずく。
自覚はあった。秘月の中には迷いがあり、確かにそれが動きや思考を鈍らせていたのだろう。
「近頃何事にも精彩を欠く私を、君が始末すると。そういうことだね」
「そういうこと♪」
自覚はあったのだ。他ならぬ、志桜里のことだ。
二人は学生で同級生でもある。相棒のような存在。親友といっていいだろう。あるいはそれ以上なのかもしれない。
であれば二人がこうしてファイトクラブで対峙し壊し合うことに、秘月はどのような意味を見い出せば良いのだろう? もちろんそれが嫌なわけではないし、気が引けることもない。殴り、蹴倒され、折り折られるのは端的に言って、楽しかった。だからこそ……秘月の胸中で確かな存在を主張するこの感情へ、なんと名をつければ良いのだろうか?
些細な疑問が思考を鈍らせ、肉体を鈍らせた。そこに宿る美しさこそが秘月の求めるものだというのに。
「さ、秘ぃ。お客サマもお待ちかねだよ」
「ああ……そうだね。やろうか、志桜里君」
「ええ、派手に愛し合いましょう!」
ことり、と瞬間、秘月の胸の奥に音が鳴った。何かがぴたりとはまるような、心地の良い音だった。
「……愛?」
直後に志桜里の拳が頬骨にめり込む。吹き飛び転げた秘月へ間髪入れず飛びかかり、膝を落とす。
息が詰まる。しかし爽快だった。目の前全てが晴れ渡り、クリアとなった。
ファイトクラブがもたらす痛苦や熱に見い出す価値は十人十色。二人にとっては、
「愛。そうか、愛か。志桜里君」
「そうよ秘ぃ、床を汚す有象無象の血も汗も跡形なく踏み消して、私たちの殴り愛で塗り替えるの!」
ああ、愛。愛! 何と明確にして心弾む答えだろう。高速の突きを秘月は受け止め、志桜里の肘を真逆に畳む。完全に折る直前に側頭部へ志桜里の蹴りがヒットし手を離すが、この脳が揺れる感覚が愛おしい。突撃をかわしざまに志桜里の小指を取って容易く折り曲げ、お返しとばかり志桜里が秘月の足先を踏み砕く。この痛みにも今や名前がある、それが秘月をいつになく昂らせた。思えばそう、志桜里の表現はいつだってあけすけだったはずだ。秘月が腕を捕らえ肩を外せばそれにも退かず、むしろ踏み込み頭突きをぶちかます。時に噛みつきさえする。一切の躊躇なき暴力、それこそが秘月への信頼にして求愛なのだ。
「ああ。愛か。そうか」
「そうよ、秘ぃ。これが愛、これが私たちの……!」
志桜里もまた、この時を待ち望んでいたのだろう。客の盛り上がりやら主催者の意向やら、そんなものは建前だ。何はばかることなく、秘月と愛を確かめ合う。それだけが望み。それだけが至高の悦楽なのだから。
殴り、殴られ構わず取った腕をへし折り、それでも鋭い突きと蹴りで肋骨と脛を砕かれ、志桜里の手刀が片目へ吸い込まれる瞬間に反撃、手首を潰し膝をあらぬほうへ曲げて壊す。
そうして二人、愛し愛され、愛し合う。
今夜も煌々と月は灯る。
後ろ頭に感じる心地よい柔らかさに、吹き抜けてゆく風の冷たさに、廃倉庫の屋上から見上げる月の明るさに、志桜里は頬を緩める。
「はーァ。気持ちいいねえ、秘ぃ」
「うん、とても。ああほら、夜景だってこんなに綺麗だ」
「おー。ほんとだねえ……」
どこを砕いてどこを折られたか、志桜里にももう分からない。ただ全身がいい具合に弛緩して力が入らないことが、かえって渾身の壊し合いの余韻に浸らせてくれた。
秘月の膝に頭を預けたまま、ほう、と息をつく。
ファイトクラブは最高だ。あらためて思う。愛する者と深く、心から、真の絆を育むことのできる場所。迷いもなく、加減もなく、不敵に獰猛に、野生赴くままに貪り合った。闘いこそが愛、全ては愛に帰結するのだ。他の誰が何と言おうと、少なくとも志桜里はそう信じて疑わない。
その証に、見上げれば秘月の傷ついて穏やかな微笑みがあった。
「ふわあ。何だか眠いわ。私、少し眠るわね……秘ぃ……」
「うん……」
身体中から力が抜けてゆく。まるで魂までも流れゆくかのよう。けれど無理もない、あれほどに愛し合ったのだから。
「おやすみ、志桜里君。ゆっくりと休むといい」
秘月の腕に抱かれながら、とぷり、沈んでゆく。どこまでも。どこまでも。
「……ゆっくり……と……」
二人で深く、沈んでゆく。
どこまでも。どこまでも。
ファイトクラブは知られる限り、およそ8年に渡り、毎夜欠くことなく開催された。
主催者の逮捕により廃倉庫と周辺一帯が閉鎖されるまで、いったい幾人がコンクリートへと沈み帰らぬ人となったか、警察の捜査にも関わらず、未だ全容は掴めていないという。
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あとがき
担当マスター:
墨谷幽
ファンレターはマスターページから!
墨谷幽です。
お待たせしました。『路地にころんだ…』のリアクションをお届けいたします。
今回は、登場する皆さんが揃って破滅に向かってずんずんと突き進む、その過程を描くというお話でして。
ホラーなシナリオで不幸な顛末を描くことはあれど、こういった題材でこういった結末を書くことはあまりないので、ちょっぴり苦労しながらも新鮮でした。
ハードめなバトル描写や、重たい空気感、じんわりとにじみ出るような暗い熱量といった表現をがんばってみましたけれど、いかがでしたでしょうか。
少しでもなにか、感じるところがありましたら、私も嬉しく思います。
それでは、今回もご参加いただきましてありがとうございました。
また次の機会にお目にかかれますことを、心より楽しみにお待ちしております。
お疲れさまでした~!
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担当ゲームマスター
墨谷幽
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シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
バトル
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2022年01月21日
参加申し込みの期限
2022年01月28日 11時00分
アクション投稿の期限
2022年01月28日 11時00分
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