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路地にころんだ、雨水なめた
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【燃え尽きる】
寡黙な男だ。彼の低く割れた声を聞いた者がこの場にどれだけあるか。打ち打たれる格闘の只中にあってもうめき一つ漏らすことはない。格闘家くずれか、軍隊格闘術のような技巧の片鱗を見せることはあったが、その正体はようとして知れなかった。
アダム・スメルディン
は語らない。過去も己も無く、ただひたすらに目の前の闘争へ没頭する。世界にはそれのみが存在するかのように。
城山 水樹
。新参者。実力者。狂気の体現者。かかる異名は数あれど、彼女の過去もまた知る者はない。かつてはあれほどに世を騒がせたというのに。
失くした称賛にも栄光にももはや水樹は何ら価値を見い出さない。それらは礎でしかなく、今この瞬間の愉悦を引き立てる、ちょっとしたスパイスにならなるかもしれない。その程度にはのめり込んでいるし、彼女もまた格闘場の常連と認識されつつあった。
「……アダムだ」
「スメルディンが来てる」
「あっちは、城山だ……」
「やるのか? 今夜?」
衆愚のささやきなど耳には入らない。彼らは既に互いを認識していた。近頃ファイトクラブを騒がせ、ことに話題に上る二人。激突は必至であろうと、期待と畏怖をもって語られてきた二人が今夜、顔を合わせた。炎が灯るように、二人の瞳は揺らめいた。
水樹がモデルとしてブランドファッションを纏い、きらびやかな舞台へ立つ姿を覚えている者が、もはやあるだろうか。格闘に興じる恐ろしい形相や振るう拳の鋭さから、誰もが両者を結び付けなかったのかもしれない。
ファッション誌の専属モデルに端を発し、コスメブランドのイメージモデルとして抜擢され、やがてはファッションショーのランウェイも風を切って歩くに至った。モデル業は自己顕示欲の強かった水樹の性に合ったし、美貌もそれを維持するための努力も人並み外れていた。頂点に立つべくして立ったと言っていい。
あくまで表向きは、だが。
結局のところ芸能界の一角で何らかの地位を極めるなら、他者との繋がりなくして成し得ない。業界内には公然とまかりとおり、表舞台には決して知らされない通例というものがある。アイドルも女優もモデルも彼ら彼女ら自身に価値はなく、業界を動かす大物のみが価値を決定する。食い物にされる必定の仕組みに当人たちが気づくのは意気揚々、希望に胸膨らませて飛び込み、後戻りも敵わぬほどずぶずぶに浸かり切った後のこと。プロデューサーや評論家といった類は、巧みなのだ。
水樹もそうだった。
「あの、本当に……その人と、その……すれば……」
「ああもちろん、そうだとも。君ならトップモデルの地位は固いさ」
無論それが正しい道だと信じるほど水樹も初心ではなかったし、逆に利用してやろうとさえ思っていた。時おり、では正しい道とは何かと自問したこともあったが、すぐに疑問は多忙に紛れていった。
のし上がるためには何でもやった。ライバルを蹴落とし、何人もの大物たちと枕をともにし、やがて手にした。一流モデルの地位、水樹がプライドを投げ打ってでも欲した栄誉。そそがれる羨望のまなざし。金。男。全て。
しかし夢幻のようなもの。例えるなら泡沫、ぷくりぷくりと膨らむが、弾ける時は一瞬だ。下劣な記事をモットーとする週刊誌の蛇のような目に食い付かれ、何もかも白日の下へさらされ、失った。全て。
それがつまりは、
「私の人生。ってわけ」
アダムは品定めをする。物言わぬ男は選り好みをせず何人の挑戦も受け入れ、ただ一つの例外もなく下してきたが、内心には満たされぬ渇望があった。
相手をするのはガキばかり。単純な年齢の話ではなく、言わば魂の練度とでも呼ぶべきものさしが、アダムの中に確固として存在する。裏格闘場でありながら、そこに集まる格闘者はいずれもアダムから見れば浅く、稚拙な技巧しか持たない、まさしく子どものような者ばかりだったのだ。
そんな者らにも容赦せず、児戯に等しい技の数々を叩き伏せながら、あるいは息が詰まるほどに叩きのめされながら、アダムは待った。己を満たすほどの技巧者。魂の練達者を。
水樹という女を始めて目にしたとき、彼女はラウンドガールのような役割を担っていた。主催者に請われて、格闘者としてではなく舞台へと上がった、人生に失墜した女。いかなる要因でか、アダムは知らないし知ろうとも思わない。
しかし、あの瞬間。陰鬱な顔で舞台へ上がった水樹へ、観衆の一人が売女だの、一発やらせろだのと口汚くやじを飛ばした、瞬間だった。見る間に激昂し飛び出した女は、恐ろしく鋭く破壊的な一撃で相手の顔面を文字どおりに粉砕した。
「何て言った? 私を何て言ったんだ、このクズ! 二度とそんな口を利けないようにしてやろうかインポ野郎、死ね!」
その夜のうち、水樹は余興の役割を放棄し格闘者へ転向した。
「へえ……? なるほどね。これが人を殴る感覚ってヤツ。悪くない……」
以来タガが外れ、殴り、殴られのめり込んでゆくのを、アダムは遠巻きに眺めてきた。
別の誰かを完膚なきまで叩きのめしながらに、待った。待ち続けた。今夜この時、彼女が自分と同じところまで堕ちてくるのを。
水樹と真っ向対峙するなり、アダムは引きずり持ち込んだ灯油缶の蓋を親指一つで飛ばし、中身をぶちまけ始めた。後退る観衆を意にも介さず、己と対戦者のみをぐるりと囲うと、躊躇なくそこへ点火した。
廃倉庫に炎の輪が灯り、狂乱は文字どおりの熱と相まって渦を巻く。
「ふうん。面白い趣向ね、お兄さん?」
アダムの行為を黙して眺めていた水樹は目を細め笑みを浮かべ、言下に彼を肯定した。
炎振りまくアダムも、それを良しとした水樹も、傍から見ればとうに壊れている。そんな二人がこれから、さらに互いを壊し合う。観客が盛り上がらないはずもない。
水樹の初撃は大振りも大振り、魅せるための一撃だったがアダムはあえてこれを受ける。渾身、杭打機のごときストレートが彼の奥歯を砕いた。緩慢にさえ見える反撃を水樹もまた避けもせず、腹に拳のめり込む衝撃に膝をつき嘔吐する。全てが炎の向こうに取り巻く有象無象を刺激し、沸かせた。
「ああ……いいわ。いいわよ、最っ高……! さあ、もっと刻んでよ。それ以上に刻み込んであげるから」
挑発的な笑みに、アダムもまた嘲笑めいて口元をねじ上げる。
アダムの拳が水樹の肩口へ触れると同時、発火し弾けた。ろっこんによる見えない炎は攻撃手段のみならず、自身への負担も無視できない。程よく相手も自分も双方を追い込む、この場において言わば舞台装置の一つに過ぎない。
「っ……! 楽しい夜だけど、そろそろ終わりかしら?」
いつの間にか、二人を囲う炎のリングが狭まっているのに水樹は気づく。アダムの演出だろうか、あるいは彼流の自滅の美学だろうか。
どちらでもいい、と水樹は断じた。今は目の前の闘争にしか思考を向けることができない。それ以外のことはどうでもいい。もっと熱を。身を焦がし、燃え尽きるほどに熱く。
数え切れない程の交叉の果てに、最後の拳を叩き込んだのは水樹だった。
「は。はは」
寡黙な男、そんなレッテルに価値などないとばかり、敗北の中にあってアダムは初めて、甲高く声を上げ笑った。
「ははは。ははははは」
それは称賛だった。感謝でもあったかもしれない。寡黙ゆえに伝わりはしなかったのかもしれないが、ともかくアダムという男は炎の中へと倒れ込みながら、最後まで闘争と強敵を賛辞するのを止めなかった。
水樹の終わりもまた近しく訪れたが、彼女はかのアダムのように、そこへ何らかの前向きな意図を含むことは無かった。
いつものように格闘へ身を焦がした夜、炎の中へ黒く消えた男を懐かしく思いながら、傷と極度の疲労に足を引きずり路地を歩むさなか、背中へ刃を突き立てられた。あっけなく意識を手放し、それっきり。
犯人はモデル時代、執拗に水樹を欲しながらかなわなかった三流プロデューサーの一人だったという。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
バトル
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2022年01月21日
参加申し込みの期限
2022年01月28日 11時00分
アクション投稿の期限
2022年01月28日 11時00分
参加キャラクター一覧
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