ハッピーバースデー！　７月☆｜リアクション

ハッピーバースデー！　７月☆

●Jul.13　思いを込めて

　小山内海と橘千歳が家に来るので、御剣刀はろっこん『加速』を使い、ものすごく急いで部屋の掃除をしている。
　汚いのは当然ダメだが、それ以上に気を遣うのは思春期真っ盛りの男子特有のアレを隠すことだ。
　今から真剣に隠しても間に合わないので、きっと察してくれる！　はずと急いでベッドの下に隠す。
「これで大丈夫……なはず」
　
　食材を持って刀の家に行く前。
　海は『行く前に今から行くよって連絡入れておいた方がいいかな？』とスケッチブックに書いた文章を千歳に見せた。
「来ることは前もって言ってあるから、連絡しなくてもいいんじゃない？」
　今頃、必死で掃除しているだろうから邪魔しては悪い、というのもある。
「早く行って、料理を作りましょう」
　コクンと頷き、海は美味しい料理作ろうと張り切って歩き出した。

　部屋が綺麗になったか最終チェックをしていると、食材を持ち込んだ海と千歳が到着した。
「いらっしゃい。さ、上がって」
「お邪魔します。刀君、キッチン借りるわね」
　運ぶの手伝うよ、と、刀は2人が持っている食材をキッチンへ。
　海と千歳が料理を作っている様子を見ていたいが、恋人達が自分のテリトリーにいるのは落ち着かない。
（恥ずかしくて、照れくさくて……好きにしたいって欲望に駆られる……）
　いや、浮かれてるだろう俺！　と頭を振り、そういった考えを捨てる。
「俺、あっちの部屋で料理が出来上がるのを待ってるよ」
　海はスケッチブックを取り出すと、ペンを手にして『楽しみにしてて』と書いた。

　さて、それじゃ作りますか、と海は唐揚げやチーズインハンバーグ、お味噌汁といったメイン料理の食材を取り出す。
　海がディナーを作る間、千歳は食後に出すチョコレートケーキとデザートプレートを用意する。
　事前に調べたレシピの通りに、千歳と一緒にディナーを作っていく。
　一緒に料理をしていると、千歳の手際の良さがよくわかる。
（やっぱり千歳、凄いなぁ）
　スポンジケーキを焼いたり、チョコレートクリームを作ったり、ケーキとプレートに盛り付けるフルーツを切る動作に無駄がない。
「どうしたの？」
　ケーキ作りをじっと見ている海を不思議に思い、千歳は手を止めて話しかける。
　な、何でもない！　といったジェスチャーをして、海は唐揚げ作りを再開した。　

　唐揚げとチーズインハンバーグが完成したので、次はチョコレートケーキとデザートプレートの仕上げを。
　出来上がったチョコレートケーキを用意してきた大きめのプレートに乗せ、いちご、マンゴー、ブドウを盛り付ける。
　白いプレートに、チョコペンで『HAPPY BIRTHDAY！』と『お誕生日おめでとう　刀君』を書けば、千歳の作業は完了。
　これで完成と思ったが、日付を入れ忘れたのでチョコペンで急いで書き足す。

『刀、こういうの好きだもんね。デザートプレートのチョコプレートの絵は、私が描くね』
　プレートに添えるチョコプレートに、海はデフォルメした3人の姿を丁寧に、楽しそうに描く。
「可愛いわね。刀君、喜んでくれるかしら？」
　デザインはお任せしていたので、千歳は今日、初めて海の絵を見た。
　料理の味見をしたら、いい感じに出来上がっていたので海は満足気だ。
『美味しいって思ってくれるかな？　刀』
「頑張って作ったんだから、美味しいって言ってくれるわよ」
　海の頑張りは千歳が一番よく知っている。料理を見れば、刀も頑張り具合をわかってくれるはずだ。