ハッピーバースデー！　７月☆｜リアクション

ハッピーバースデー！　７月☆

●Jul.7　甘酸っぱい香りの中で

　八神修は、自宅のキッチンで七夜あおいと夏蜜柑のマーマレードを作る準備をしている。
　勉強に料理にと、あおいは何度も修の家に来ているが、ふたりっきりとなると初めてのことを思い出し少し気恥ずかしい。
「どうしたの？　修君」
「夏蜜柑の香りがすごく濃いね。大量だからかな？」
　多めに用意した夏蜜柑の香りが、キッチンに広がっている。
　冬が到来してしまった「蜜柑の里」に夏を戻すという出来事が終わった時、あおいは修にマーマレードジャムの作り方を教えてあげようか？　と言ったことがきっかけで、今日、修の家で作ることとなった。
　お揃いのエプロンをつけてから手を洗い、夏蜜柑の皮を包丁でむいたり切ったり、身を取り出したりとジャム作りの様々な工程を、あおいは丁寧に、わかりやすく教えてくれた。
「手が夏蜜柑色だ」
　ジャム作りの最中、そう言って笑って手を見せる修に、あおいも「私も」と手を見せて笑う。
　切った皮と身、砂糖を鍋に入れて煮詰めている間も夏蜜柑の甘酸っぱい香りが。

　1時間ほど煮詰めるといい具合にできあがったので、あらかじめ煮沸消毒した瓶にジャムを詰めていく。
　瓶詰めのジャムは、あおいが持って帰ったり、友達におすそ分けしたりすることにしている。
「パンと紅茶で美味しく食べよう」
　出来立ては美味しいだろうな、とパンにマーマレードジャムを塗り、修は一口。
「美味しい……砂糖控えめで大正解だね」
「うん、美味しい」
　あおいも美味しそうに食べる。
「紅茶にも合うね、ジャム」
　ティーカップとは別に小さな器に添えられたマーマレードジャムを直接舐めながら、あおいは濃いめの紅茶を飲む。
　ジャム作りのお礼にと、修はロシアンティーの飲み方をあおいに教えたのだった。
　ふたりで協力して作ったジャムは、とても美味しくできていた。
「今度、これでお菓子を作ってみないか？　あおいにジャム作りを教わったから、今度は俺がお菓子作りを教えるよ」
「お菓子作り？　楽しそう！」
　いつ作ろうか、とパンを食べながら相談する。
「あおいは勉強のお供はお茶？　紅茶？」
「うーん……どっちでもいいかな」
　気分転換ができれば、とあおいは付け加える。

　パンと紅茶でジャムを堪能した後は後片付け。協力して行ったので早めに終わった。
「あおい、これ」
　修が手渡したのは、ファンシー柄の包装紙とピンクのリボンでラッピングされたプレゼント。
「あおい、誕生日おめでとう。ジャム作りのお礼を兼ねたプレゼントだよ」
　少し驚いたが、あおいの表情はすぐに喜びに変わった。
「ありがとう！　開けてもいい？」
「ああ、いいよ」
　包装紙を破らないよう、そっと剥がすあおいを見て修は可愛いと思った。
「可愛い」
　プレゼントはペア猫のスマホスタンド。
「場所も取らないし、机に向う時の癒しになるかなって」
「そういうことを考えるのは、修君らしいね。この猫、修君と私みたい」
　陶器製のデフォルメデザインの茶色のハチワレはあおい。薄チャトラは、修の髪を連想している。
　あおいに自分達みたいと言われたので、それに気づいたかな？　と修は思い、照れてしまった。
「確かに」
　飼っている猫達にも応援されているようだったので、少し嬉しい気分になった。
「修君、これ、大切にするね。ありがとう」
　プレゼントを手にして微笑むあおいを見て、喜んでもらえて良かったと安心する修だった。

　猫達が見守るように、離れた場所で様子を見ていた。

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