ハッピーバースデー！　７月☆｜リアクション

ハッピーバースデー！　７月☆

●Jul.8　霊界での誕生日祝い

　三条神無は母と商店街で美味しいご飯を食べ、ささやかなプレゼントをもらい誕生日を祝ってもらった。
　楽しかった1日を振り返りながら寝ようと思ったが、誕生日も、終わってしまえば普通の日常と変わらないと思うと全てが虚しく思えてしまう。
　眠気はあるのだが、気分が重くなり眠れそうもない。
「そうだ、ちょっと眠いけどお散歩してみようかしら。少しは気持ちが晴れるかもしれないわ」

　着替えてから、シーサイドタウン近くを散歩することに。
　気分転換になるかもしれないと辺りを見渡すと、何やら様子がおかしい。
「……あれ？　シーサイドタウンの学校付近ってこんなに栄えていたかしら？」
　見覚えがない風景、建物に少し困惑気味。
「もしかして、どこかで道を間違えてしまったの？」
　迷ってしまったのなら、通りがかりの誰かにここがどこか聞こうと思ったが、人通りは思ったより少ない。

　少し困っていた時、ある人を見かけた。
　丁度いいから道順を聞いておこうと思ったが、半透明なのが気になった。
　幽霊かもと思いつつ、その人に声をかける。
　半透明な人は、ここが(霊界の花緑青駅あたりだと教えてくれた。
「……霊界？　不思議なこともあるものね」
　気晴らしの散歩で霊界に迷い込んだことは、不思議な体験といえる。
　教えてくれたあやかしにお礼を言った神無は、迷い込んでしまったものは仕方がないと寝子島に帰れるまで霊界でゆっくりすることに。
　どこでゆっくり過ごそうかと考えていると、1軒のカフェの前に。
「……ここで、ゆったりとした時間を過ごそうかしら」
　私が入ってもいいのかしらと少し躊躇ったが、他にあてがないので入った。

　カフェは古びた外観だったが、中はモダンな雰囲気漂う店内だった。
　店内には様々なあやかし達が集い、様々な話をしている。
　入口付近であやかし達の様子を見たり、話を聞いているうちに結構な時間が経っていた。
　お客さん、入らないんですか？　と幽霊のウェイトレスに声をかけられたので「せ、席に案内してくれるかしら？」と少し慌てた様子でそう答えた。
　席に案内されると、集っていたあやかしが神無の元へ。
　ようこそ、と拍手したり、一緒に飲んで、食べたりしようと気さくに話しかけたり。
「……私、今日が誕生日なの。だから、お祝いしてもらっているようで嬉しいわ」
　迎え入れてくれたあやかし達に、嬉しくなって神無はそう言った。
　そうなの？　と言った顔をしたあやかし達は、何かお祝いしないと……とざわつきだした。

　少ししてから、とあるあやかしがカフェの紙ナプキンで作った花をプレゼントしてくれた。
「……私に？　ありがとう」
　これどうぞ、とお菓子を差し出したり、一緒に踊りませんか？　とエスコートするあやかしも。
　あやかし達と美味しいコーヒーを飲んでお菓子を食べたり、お話したり、踊ったりと楽しい時間を過ごしているうちに眠くなってきた。
（少し眠いから、どこか寝れる場所を……）
　視線で休憩できそうな場所はないかと探しているうちに、神無の視界は徐々に暗くなってきた。

　気が付いた時は、家のベッドにいた。
「……ここは？　うち？　おかしいわね、さっきの所は、現実のように鮮明だったのに」
　たしかに記憶は残っている。
　あやかし達と話す姿も、美味しかったコーヒーの味も。
「……もしかして、これも運命の悪戯なのかしら？」
　そんなことを考えていると、手に何かが当たった。それは、紙ナプキンで作られた花だった。
「……夢じゃなかったのね」

　花を手にし、少し不思議な誕生日のお祝いを神無は思い出すのだった。