ハッピーバースデー！　７月☆｜リアクション

ハッピーバースデー！　７月☆

●Jul.8　手作りのプレゼントを

　7月7日は七夕ゆかた祭りの日。
　七夜あおいの誕生日でもあるこの日、鴻上彰尋は家族と一緒に寝子温泉で過ごす事が前から決まっている。
　なので、今年のあおいの誕生日当日にプレゼントを渡すのがとても難しい。
　その分、日付が変わった瞬間にお祝いをしたい。お祝いが遅れる分、素敵なプレゼントを用意したい。
　そう思うのには理由があった。
　翌年３月。高校を卒業する時に、彰尋は以前、彼女に告白した返事をもらう事になっている。
　だから、特別な贈り物が出来るのは今回しかないかもしれない。
　そんな想いで、思い出のある猫の目シーグラスでイヤリングを作った。
　水色の箱に、ピンクのリボンでラッピングをして、紙袋で丁寧に包んだプレゼント。
　『memoria』というお店で、じっくり時間をかけ、真心をこめて作った物だ。

　7日の日付が変わる少し前からニャインで会話し、その途中で、電話での会話に切り替えた。
　電話越しとはいえ、あおいと話ができることに少しドキドキしている。
「誕生日おめでとう、あおいさん」
　日付が変わってしまう前にお祝いの言葉を伝えることができた……と一安心。
『ありがとう、彰尋くん』
「贈りたい誕生日のプレゼントだけど、家族の用事でどうしても渡せないから改めて渡したいんだ。急だけど、明日はどう？」
『大丈夫だよ。プレゼント、楽しみにしていい？』
　その一言が、とても嬉しかった。
「もちろんだよ。それじゃ、明日」
　
　電話を切り、この日のために用意したプレゼントの箱を手にする。
　プレゼントは、ネジバネタイプ・サージカルステンレスの金具を使った彰尋お手製の猫の目シーグラスのイヤリング。
　レジンを流し込んだりパーツを組み込んだりといろいろ苦労したが、完成した品を見た途端ホッとした。
　磨きの工程は、あおいが喜ぶ姿を想像しながら丁寧に行った。

　約束の日。待ち合わせたのは寝子高校門前。
　一刻も早くプレゼントを手渡したいと言う思いもあり、彰尋は待ち合わせの時間より早く着いていた。
　水色の箱にピンクのリボンでラッピングをして紙袋に丁寧に包んだプレゼントを、そっと手にして。
「ごめん、待った？」
　時間に遅れちゃった？　と少し心配そうな顔のあおいが駆け寄って来た。
「俺も、少し前にここに着いたばかりだから大丈夫だよ」
　これ……と、あおいにプレゼントを差し出した。
「遅くなったけど、誕生日のプレゼント。昨日も言ったけど改めて。誕生日おめでとう、あおいさん」
　俺が作ったものだよ、と、ぎこちない笑みを浮かべて手渡す。
「ありがとう。彰尋くんが作ったプレゼント、どんなものなのかな」
　今、ここでプレゼントを見るのか。場所を変えて見るのか。
　彰尋はプレゼントを手に喜びあおいを見て、そんなことを思った。
　どうするのだろうかと思ったら、あおいは「学校から帰ったら開けてみるね」と言った。

　あおいは帰宅すると、早速、プレゼントが何かを確認する。
「わあ、可愛い……。月に座っている月猫みたい」
　イヤリングを手にし、細部までじっと見る。
　早速お礼を、とあおいはニャインで猫のスタンプをつけて、以下のメッセージを送信した。

　彰尋くん、可愛いイヤリングありがとう。
　私のために作ってくれてありがとう。お疲れ様。大切にするね。