ハッピーバースデー！　７月☆｜リアクション

ハッピーバースデー！　７月☆

●Jul.7　七夕サプライズ

　7月7日は七夕。寝子島七夕ゆかた祭りの日。
　そして……マリエッタ・ラシュリエの誕生日。
　
　去年の7月7日は、おひとり様で七夕ゆかた祭りを堪能した。
　親子連れや友達仲間、恋人同士で七夕祭りを訪れた人々を見て「羨ましい……」とポツリ。
　アメリカの大学に留学中のAI研究者の恋人と一緒に過ごせたら……と思うと、少し寂しい気持ちになった。
　彼に自分の浴衣姿を見せたいと、スマホで自撮りした写真をメールに添付して送信。

　写真を送信した翌日。彼から誕生日を祝うメールが送信されていた。
　お祝いメッセージだけでなく、マリエッタの浴衣姿の賛辞や向こうでの生活。恋人の今の状況などが事細かに書かれていた。
「マメね」
　そう思いつつ文章を見ていると、メールの結びに「来月、日本に帰る」の一文が。
　事細かな内容より、この一文が何よりも嬉しかった。1日遅れなのは時差の都合上仕方のないことだが。
　その翌月。帰国した恋人と再会した時は、天にも昇る気持ちだった。
　誕生日のお祝いも嬉しかったが、彼と会い、直接話をできたことは、それ以上に嬉しかった。

　あれから1年。
　薄い水色地に朝顔と金魚柄の浴衣を着て、同じ研究室の後輩や先輩といった人々と七夕ゆかた祭りに参加している。
　去年はおひとり様だったが、今年は一緒にいる人がいるので少し気が楽に。
　昨年同様、浴衣姿を自撮りして恋人に送った後、しばらく夜店で遊んだりしてから神社の方へ。
　そこで想いや願い事を短冊に書いて笹に飾るイベントがあったので、短冊に「今年の夏も彼に逢いたい」というようなことを書き笹に結び付ける。
　それから神社の石段を下りて、鳥居のところまで来たら……見覚えのある人影が。

「ナオ？」

　人影は去年8月に帰国し、再会した恋人──ナオこと嶋村直之だった。
「うそ……どうして？」
　思わず駆け寄り、つんのめって倒れかけたところを直之の腕で受け止めてもらった。
　その時、これは夢でも幻でもなく、本物の直之だということを実感した。
「でも、どうして？　まだアメリカにいるはずなのに……」
　寝子島にいることが不思議だった。
　直之にそのことを聞くと、実は半年前からスケジュールを調整してマリエッタの誕生日に帰国できるように手配していたとのこと。
　彼女の所属する研究室の院生にも協力してもらったそうだ。
　今年のマリエッタの誕生日には直接会いたいと、頑張って調整したということも教えてくれた。
「ナオ……ありがとう……」
　余りのことに、マリエッタはポロポロ涙がこぼれるばかりだった。
　泣かないで、と指で涙を拭う直之の手を取り、これは夢でも幻でもなく、本物なんだということを改めて実感する。
　突然のことに驚かされたが、とても嬉しかった。
「短冊に書いた思いと願い、さっそく叶っちゃったわ……」
　それは何？　と直之に聞かれたが「内緒よ」とクスリと笑い誤魔化す。

　26回目の七夕と誕生日は、マリエッタにとって忘れられない日となった。

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