暗夜雨道　～寝子島辻斬り物語～｜リアクション

暗夜雨道　～寝子島辻斬り物語～

・旧市街、ある二人組

「最近辻斬がでるらしいわ」
「そう、その辻斬りだな」
「……」
「……」
　橘千歳は、御剣刀が二体の影を斬り捨てるのを見たあと、言い直した。
「江戸時代じゃあるまいし、今時、辻斬りってどういうことなのかしら？　やっぱり、誰かのろっこんの影響？」
「原因は断定できないが、フツウを脅かす以上放置しておけないな」
　そう言いつつ、持っていた木刀を軽く持ち直した。
「そういうわけで……」
　どこか安全なところにと口を開きかけたが、その言葉は遮られた。
「刀君も……ぜったい無茶するでしょ？　これは私がしっかり見てないと……だから私も一緒にいくわ」
　有無を言わせぬ意思の強い言葉に、思わず刀は頷いてしまった。
「……いや、はい、一緒にいきます、よろしく」
　思わず敬語になってしまった刀を見つつ、千歳は内心でほっとするのであった。
（刀君と一緒にいるための方便かもしれないけど、この事件だって放って置けないわ）
　そんな内心の葛藤が、犯人へ向けて走りつつも、結局もやもやと続く千歳であった。

・そのほかの始まり

「やれやれ、調達に時間がかかったか？」
　そう言いつつ、持っていた釣竿を下げて歩いているのは八神修である。
　釣竿は収納されており、影が彼を襲撃するということはない。
　自転車を取り出して、いざ、星ヶ丘マリーナへと向かった。

　それとは別に、星ヶ丘マリーナへと向かう人影があった。
「やれやれ……またこの手の現象か、あ～めんどくせぇ」
　本田宗次は雨にぬれながら、鉄パイプを引っさげて、歩く。
　偶然にも彼に襲いかかった影はしっかりと『斬られて』消滅していた。
「ここから近いのは星ヶ丘マリーナか……酔っ払いの相手ならなれてるけど、相手が影なんてのははじめてだよ」
　そんな事をぼやきつつ。

　一方、旧市街の寝子島神社からは、ロードコースを伝って、後木真央が走っていた。
「ねこったーもメールも通じないのだ……みんな大丈夫なのだ？」
　そう言いつつも、修の元へと走る。
　武器は、たまたま調達した折れた一メートルほどの物干し竿だったのだが、真央は気づいてない。
　武器を持って走るということは、どこであろうと影の襲撃を受けることに。
　結果、散発的な影の奇襲に悩まされることになる。

・ある二人組

「おい、無事か」
「体力不足がひでぇ、肺がいてぇ、駆けつけるのが遅いだろ」
　シーサイドタウンにて、神無月文貴が鳳翔皐月を助けに入ったのは良かったが、返ってきたのは半ば罵倒のような言葉であった。
　なお、文貴はろっこんで標識を引っこ抜いて武器にしている。
「だが、礼は言っておく」
「そうかい」
　そんな皐月の言葉に、文貴はにやりと笑いつつ言う。
「手に捕まれ皐月。なんならおんぶしてやろうか？　犯人は落神神社にいるらしいからな、倒しに行くぜ」
「手に捕まれ？　なんならおんぶしてやろうかだと？」
　何言ってやがるんだという顔をする皐月だが、やや迷った上に言葉を返す。
「んじゃあんたが私の手を掴んでくれ。ぶっちゃけ長期戦は苦手なんだわ」
「決まりだな」
　そう言って、文貴は皐月の手を握って、落神神社へと向かうのであった。

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