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枯れ木も花咲く寝子島で
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【名前をよんで】
いつものにゃんこめぐり。猫メモのページが初対面のにゃんこたちで埋まっていく、この充実感。
今日はお花も見事な咲きっぷりだと知ったのは、家を出てからしばしのことでした。いつものことながら、あんまり没頭していたもので。
「珪先生! あそこ、桜がとっても綺麗に見えますよ!」
「カフェのオープンテラスか、いいね。いこうか」
綾辻 綾花
と
早川 珪
は、そんな満開の桜の下でお互いを見つけました。にゃんこの顔を探していたら珪先生の顔が横からスライドしつつフェードインしてきたもので、綾花はなんだか笑ってしまいました。
けれど珪先生はといいますと、綾花を見かけた折、あまり意外そうな表情は浮かべませんでした。なにかと不思議なことが起こる寝子島で、彼がそれらを体験する時には決まって、かたわらに綾花の存在がありましたから……今日もまた、ここで出会う予感があったのかもしれません。意識することなく自然と、綾花の姿を探していたのかもしれません。
そうだったらいいな、と綾花は思います。
「私は、桜のロールケーキと……マカロンにしようかな。珪先生はなににしますか?」
「そうだなあ。うん、チーズケーキと桜ティーにしよう」
桜並木の直下に設けられたテーブルで向かい合い、桜のスイーツをいただきます。
「わあ。可愛くって、すぐに食べられないです……!」
「あはは」
とどいたケーキを写真におさめたりしていると、ゆるい風が吹いて、二人の髪を揺らしました。花たちの香りとともに風に乗り、桜の花びらもふわふわり。綾花の頭へ不時着をきめた一枚を、珪先生はそっとつまんでくれました。
はにかみながら、桜のロールケーキをひと口、ぱくり。
「ん~~~っ。おいしい! クリームの甘さと、桜のかすかな塩気が合いますね」
「ほんのりピンク色のクリームが、見た目にも綺麗だよね。僕の桜チーズケーキもなかなかのお味だよ。ひと口交換しないかい?」
「いいですね!」
あれっ、この流れってもしかして……あ~ん、とかしてくれないかな?
なんてちょっぴり期待していたら、珪先生は器用にケーキをひと口分切り分けてくれました。
「ふふっ。ざんねん……」
「うん? もう少し食べるかい」
「あ、いえいえっ。わあ、チーズケーキも美味しそうです!」
桜が彩る、甘い幸せ。甘いひと時。
その後のしばらくを、綾花はぼんやりと曖昧に記憶しています。楽しくて。心がぽかぽかして。なんだかずうっと、夢見心地だったのです。
「おっと。歩きながら、ずいぶん話し込んでしまったね。星ヶ丘まで来ちゃってたみたいだ」
「キャットロードとはまた違って、咲いてるお花もちょっとゴージャスな感じです」
ステッラ・デッラ・コリーナは蔦に巻かれて花や緑におおわれており、周囲の素敵な庭園ともあいまって、まるで中世のお城のよう。
「ジューンブライドですね! カップルさんで記念撮影、いかがですか?」
「「えっ?」」
否定する間もなく、にっこり笑ったスタッフさんに促されるまま、ぐいぐいぐい。あれよあれよといううちに、ふたりはウェディング記念撮影へ臨むこととなりました。
「きゅ、急にこんな……恥ずかしいです」
「はは、ずいぶん強引だったね。まいったな」
なんて照れ笑いな珪先生。純白のタキシード姿で、いつもは下ろしている前髪も上げて、まるで本物の王子さまみたい。綾花のどきどきは止まらず、頬は熱く紅潮していきます。
どきどきはもちろん、綾花本人の装いによるものでもありました。珪先生が王子さまなら、綾花はまさしくお姫さま。オフホワイトのあたたかみある白が美しい、マーメイドラインのウェディングドレス……はなやかに広がるフレアスカートも、あしらったフリルも、ヴェールも手にしたブーケも、なにもかもが新鮮で、ちょっぴり落ち着きませんけれど、
「うん。すごく似合ってるよ、あやつ……綾花、さん」
「え。あ。ありがとう、ございます……」
せっかくの記念撮影だから。花嫁・花婿衣装に身を包んで、ヘンによそよそしいのも興ざめだし。そんなふうに思ったのか、あるいは別の気持ちの表れだったのか……にわかに名を呼んだ彼の本心へ、綾花の想像はもちろん至りません。
ぴったりと密着した、彼の胸板の意外な厚さも。力強いお姫さまだっこも。カメラのフラッシュの妙な熱さやまぶしさも。
なんだかずうっと、夢見心地で。
「ちょっと照れてしまったけど。楽しかったね、綾辻さん」
「はい、とっても。写真、大切にします。いっしょに花巡りをした思い出も……」
いつもの装いだって、彼はやっぱり素敵です。
すこうしだけ、残念なのは、
(ふふ……『綾辻さん』に戻っちゃいましたね)
それでも心と心、ぐっと近づいたように思えます。
びゅうと強めに吹いた風が、まるでふたりをひやかすように渦を巻いて、桜の花びらをどこかへ運んでいきました。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
恋愛
コメディ
動物・自然
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2021年10月20日
参加申し込みの期限
2021年10月27日 11時00分
アクション投稿の期限
2021年10月27日 11時00分
参加キャラクター一覧
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