夏への伝言｜リアクション

夏への伝言

　貰ったお菓子でズボンのポケットがぱんぱんになって、父母の仲の話を四回ほど聞いた頃、スマホが着信を知らせて鳴った。
　初代ニャンダムのOPに、望月はおばあちゃんに断りを入れて電話に出る。
「おーう、どーしたいーな」
　電話口の向こう、いいながまくしたてる言葉にひとつひとつ頷いて応じて、
「オーケーいーな」
　望月は八重歯を剥くようにニカリと笑った。
「肉屋の二代目と花屋の三代目と、」
　いいなの言葉を指折り数えて復唱していた声がほんの少し詰まる。
「模型で喰ってるタバコ屋のキンゾーさん」
　師匠と崇めるキンゾーの名前が出てきたことにちょっと動揺しつつ、それでも努めて平然とした声でいいなの話をまとめる。
「……が太一にーちゃんのツルんでた仲間だったんだな。全員ハナさん所に呼べそうか？」
　おばあちゃんが言うには、『やきとり　ハナ』は今日は露天営業をしているらしい。つまりはひとを集めるに最適の場。
　いいなの傍に泉先生が居ることも聞き、望月は笑みを深くする。
「……こりゃ面白い真相究明の会になりそうだ！」
　となれば、と望月は画策する。自分やいいなが呼び出したところで姉は梃子でも動かぬだろうが、泉先生の声かけであればきっと大人しくハナに来てくれるだろう。
「じゃ、泉のおっちゃんにはねーちゃん呼び出してもらうよう交渉してくれ」
『うむ、泉殿は儂から交渉する！』
「俺様は松崎花屋とキンゾーさん所行ってくる！」
　電話口のいいなの決意を固めた声を聞きながら望月は立ち上がる。行くのかい、と手を振る食堂のおばあちゃんにまた来るからなと快活に笑う。
『儂が蒔いた種かも知れぬが』
　ここ最近少し思い詰めた風だったいいなの声が弾んでいる。
『こうでもないと叔母上に縁は来んからの！』