【球技大会】思い出に残る初夏の大会へ｜リアクション

【球技大会】思い出に残る初夏の大会へ

　放課後の会議室に体育委員会の面々が集まった。球技大会について、連日、話し合いが続けられていた。
　新しい委員長として恵御納夏夜が進行を務める。日頃の言葉遣いとは違って丁寧を心掛けた。
「意見は挙手でお願いします」
　早速、男子が手を挙げた。
「意見をどうぞ」
「予算は限られていて潤沢とは言えない状況です。ですが、もう少しスポーツドリンクへ回してはいただけないでしょうか」
「最近の気温の上昇を考えると正当な主張に思えます。皆さんはどうですか」
　冷静に受け止めた夏夜は他の委員に意見を求める。
「程度によりますが、賛成です」
「私も賛成です。足りない分は家から持ってくることを合わせて提案します」
「わかりました。その方向で調整します」
　夏夜は書記が書き終わるのを待った。最後まで見届けると話題を切り替える。
「今年の球技大会はバスケットボールとサッカーに決まりました。全生徒が楽しめるようにルールをしっかり覚えて、普及に努めようと思うのですが、いかがでしょうか」
「いいですね。サッカーはなんとなくわかるのですが、バスケットボールの細かいルールはよくわからないので」
「あ、僕も。バスケはルールが多くて、全部は覚えてないです」
　各委員は口々に訴える。夏夜は、わかりました、と一言で制して立ち上がった。
「妹が図書委員長をしていて、今回の球技大会の競技種目について色々と動いてくれています。今から図書室に移動してルールの把握に努めたいと思います。どうでしょうか」
「いいと思います」
「私も参加するつもりなのでルールは覚えておきたいです」
「俺は普及の為に頑張るよ」
　多くの賛同を得て夏夜は委員を引き連れて図書室に移動した。
　室内は混雑を極める。夏夜は生徒を掻き分けて受付に行くと恵御納夏朝が貸出しカードの対応に追われていた。受付に置かれた本棚は数冊となり、列を作る生徒達の大半がルールに関する本を手にしている。
「今は無理かな」
　夏夜は壁の方にちらりと目をやる。球技のルールが愛らしい猫の絵でわかり易く纏められていた。
　戸惑う体育委員に夏夜は毅然とした態度で言った。
「体育委員の皆はポスターに書かれたルールを書き留めてください。球技大会まで日数があるので出来ることからしていきましょう」
「そうですね」
「委員長のいう通りです」
　各々が持参したメモ帳を取り出し、混み合う中でルールを書き記していく。
「あ、夏夜ちゃん」
　気付いた夏朝が疲れた表情で笑顔を作った。夏夜は手で、いいから、と宥めるように掌を前後に動かす。
「前日に差し入れにいくから」
　早口の小声のあと、夏朝は貸出しの仕事に戻った。
「やることは多いね」
　夏夜はポスターを眺めて控え目な伸びをした。

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